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引退変身ヒーロー、学校へ行く!  作者: 雑種犬
第25話 高校生でも体育祭が楽しみでいいじゃない?
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25-2

 僕は頭上に手をかざして、それを見ていた。


 宇宙でそうした時に僕の目の前に見えていたのは青い星地球。

 今、僕の目の前に広がっているのは青い空だった。


 体育祭当日。入場行進と開会式が終わり、控え場所であるグラウンドの脇にクラスごとに並べた椅子に戻っていた僕は、自分の競技の時間まで特にやる事もないので空を見ていたのだ。

 今日の空は白い雲が空全体の4割ほど出ていたけど、それでも青い部分は澄んでいてどこまでも続いているような感覚さえ覚えてしまう。


(……でも違うんだよなぁ~……)


 この果てしなく続いていそうな空がせいぜい数十kmしかない事は昨日、見てきたばかりだった。確か高度100kまで上がった時にはすでに上方は真っ暗闇だったっけ。そして、その高度では大地は薄っすらとしか見えずに眼下に青空が広がっているような感じだったのだ。


「……どうしたの? 誠君?」

「マコっちゃん。自分の手なんか眺めてどうしたのよ?」

「昨日の疲れでも出てきたで御座るか?」

「ああ、なんで空は青いのかと思って……」


 真愛さん、天童さん、三浦君が僕の様子を見て声を掛けてきた。3人とも僕の周りの空いている椅子に座って昨日の話をする。皆、折角の体育祭だと言うのに揃って眠たそうな顔をしている。


「皆、昨日はお疲れ様!」

「いや、アタシらは別に何もしてないわけだし……」

「三浦君と草加会長は盛り上がってたけどね……」

「それにしても石動氏や明智氏ほどじゃないで御座る……」

「でも皆、日付が変わるぐらいまで蒼龍館高校にいたんでしょ?」

「うん……」


 なんでも昨日は僕が大気圏降下艇に戻るまで蒼龍館高校に置かれた臨時指揮所で事の次第を見守っていてくれたらしい。そして降下艇が千葉沖に着水すると分かって、降下艇から僕の無事が伝えられるのを聞いてから帰ったそうな。

 そのせいで皆、寝るのが午前2時くらいになってしまったそうな。

 そして月曜からロクに寝てなかったという明智君は今は保健室で寝ている。学校に来るだけ偉いとは思うけど、折角の体育祭なのに勿体無いとも思う。


 その点では僕も家に帰って布団に入ったのは午前4時頃だし、お弁当を作るのに6時半には起きたから2時間ちょいしか寝ていない計算になる。ただ僕は改造人間なのでまったく問題は無い。


 太平洋に降下艇が降りてから自力で飛んで帰らないで、わざわざ船での回収を待っていたのはミナミさんたち飛べない人を残していくのが躊躇われたからで、栗田さんもそれは同様だった。

 もっとも栗田さんとミナミさんたちが降下艇に積んであった宇宙食で酒盛りを始めた時にはとっとと帰れば良かったと思ったけど。

 ミナミさん、ジュンさん、チョーサクさんは様々なバリエーションがあるレトルトパウチの宇宙食を肴に1カップ酒を飲み始めるし、栗田さんは未成年だからお酒は飲まないけど冷凍宇宙食のソース焼きそばを2つも3つも食べた挙句に「麺がモチモチしてていいですね!」なんて言っていた。

 麺がモチモチってそれ、宇宙食じゃなくても普通の冷凍食品でもそうだからね。栗田さんはいつもカップヤキソバばかり食べてるから新鮮な食感なんだろうけどさ。


「えと、皆、ゴメンね! 昨日は僕を待ってたせいで夜更かしさせちゃって……」

「いや、アタシらもなんで蒼龍館高校に降下艇が降りてくるって思ってたんだろってぐらいに後から思えば不思議なんだよな~!」

「そうよね~。宇宙スターションから帰ってくる人たちだって危険が無いように何も無いような海とか砂漠とかに降りてくるのにね~」

「まったくで御座る……」


 マックス君、山本さんは明智君や政府の人たちと一緒に僕たちがH市に戻ってくるのを出迎えてくれていたので真愛さんたちより夜更かししてたハズで、きっと彼らも今日は寝不足だろう。


「それよりさ」

「うん、なあに?」

「昨日の午後の明るい内には敵をやっつけたわけじゃん? それにしては帰るの遅くなかった? どっか寄り道でもしてた?」

「寄り道ってどこに!? そうじゃなくて昨日の夕方ぐらいには降下艇までは戻ってたんだけどさ~」

「そういえば、そういう通信は6時前には来てたわね……」

「ミナミさんが小さくなるのに時間がかかってさ~」

「え? どゆこと?」

「僕の護衛の3人組の警備会社の人にミナミさんっていたでしょ?」

「あ? ああ! あのスズメバチとかクモを自動車くらいに大きくしたような人?」

「そうそう! その人。そのミナミさんが宇宙でロケットから出た後で巨大化したんだけどさ~。降下艇に入れるような大きさまで小さくなる? というより萎むのに時間がかかってさ~!」


 巨大化したミナミさんの宇宙空間での機動性は目を見張るもので、減速できなくなった僕を簡単に回収して、行きの時よりも早く降下艇まで戻ったのだ。

 だが、それからは体中、至る所の甲殻と甲殻の継ぎ目から青白いガスを噴出しながら少しずつ小さくなっていったのだった。不思議なもので分厚い金属の装甲のような甲殻もガスの抜けるのと同時に、まるで伸びたゴムが元に戻るように縮んでいった。そして虹色に輝く2対、4枚の翼は小型化する途中に影も形も無くなってしまった。そういうわけで自動車サイズの時のミナミさんには飛行能力は無いようだ。


 そのゆっくりと時間をかけて少しずつ小さくなるミナミさんにたいしてチョーサクさんがやたら急かすので理由を聞いてみると、TSUDAYAにDVDを返さなければいけないとかいうしょーもない理由だったので、僕と栗田さんが夜間返却ボックスについて教えてあげた。

 だが納得はしてくれたものの、それでもまだ未練たらしいのでどうしたのかとジュンさんに聞いてみたら、チョーサクさん、DVDを返したら次のDVDを借りるのが最近のルーティンワークになっているらしい。


 宇宙人がどんなDVDを見るのやらと思ったら、アメリカの何シーズンも続いてるゾンビ物のドラマがお気に入りらしい。

 そのドラマはチョーサクさんだけでなくミナミさんもジュンさん、それと栗田さんも好きならしく、チョーサクさんが時間的に間に合わないと悟ってからは4人でそのドラマの話で盛り上がっていた。おかげでただ1人そのドラマを見ていない僕は蚊帳の外でメッチャ疎外感を感じてしまった。


「そういえばさ……」

「ん?」

「なんか部活対抗リレーとか明智君が言ってたけど、どうなったの?」


 その話を明智君から聞いたのはドラゴンフライヤーが離陸した後だったので後にしてもらっていたし、帰った後もそんな話をする雰囲気じゃなかったのでまだ詳しい内容を聞いていなかったのだ。


「ええ、ウチの学校って部活の最低人数が6人じゃない? だから部活動対抗リレーも6人での参加なのよ……」

「あ、それじゃヒーロー同好会は全員参加?」

「そういうことになるわね」

「明智君、大丈夫かな?」


 話を聞いてみるに部活動対抗リレーは各クラスにポイントが入らないお遊び企画のようで、人数が揃わなければ顧問の先生が入ってもいいそうだ。けどウチは同好会、顧問とかもいないんだよなぁ。


「どうじゃろね? さすがに午前中、寝てれば大丈夫だとは思うで御座るが……」


 そんなお遊び企画なのでプログラム順は昼休み後の1発目となっている。

 まぁ三浦君の言う事も分かるけど、寝不足で走れというのと同じくらいに寝起きで走れってのはしんどいんじゃないかな?


「ああ! それでさ!」


 思い出したかのような天童さんが大きな声を上げた。


「草加ちゃんから聞いといてくれって言われたんだけどさ! 部活対抗リレーってその部活っぽい物をバトン代わりにするらしいんだ」

「ん? そうだね」


 この学校の部活対抗リレーの事は知らないけど、前に通っていた中学校の運動会の部活対抗リレーもそうだった。

 野球部はバットをバトン代わりにしたりサッカー部はボールをといった具合にだ。中には陸上部のように本物のリレー用のバトンを使ったり、中にはウケ狙いなのか重い茶釜を持って走る茶道部とかもいたっけ。


「でさ、草加ちゃんがマコっちゃんになんか貸してくれないか聞いてみてくれってさ!」

「バトン代わりになるような物を僕に? ヒーロー同好会っぽいのっていうとこういうのとか?」

「うわっ!?」


 いきなり手元に転送したビームマグナムを見た天童さんが驚いて椅子から飛び跳ねる。


「あ、ゴメン、ゴメン! 驚かせちゃったね。でも、これ重いし危ないし、第一、体育祭で鉄砲持ち出すってどうなの?」

「ん~? じゃあマコっちゃん愛用の鎌とかは?」

「余計に危ないよ! まぁ、それもそうだけどちょっと来て……」

「うん?」


 控え場所の後ろの方、誰もいない場所で大鎌を転送して天童さんに渡してみる。もちろん危なくないように僕が左手を添えて倒れたりしないようしながらだ。


「うわぁ……。なんだコレ……? 滅茶苦茶、重たいじゃん……」

「こんなん持って走りたい?」

「無理無理! 走りたいとか走りたくないとかじゃなく無理!」

「だよねぇ……。じゃあさこっちは?」


 大鎌と拳銃を消してから、僕はマントを転送する。これなら羽織って走ることもできると思う。

 バトンっぽくは無いけれど、駅伝のタスキみたいな物だと思えばいいんじゃないかな?


「おお! いいじゃん! これでいいか草加ちゃんに聞いてくるからちょっと貸してね!」


 そう言って天童さんはマントを羽織って2年生のクラスの控え場所まで走っていってしまった。


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