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特別な呪い子

 時刻はしんしんと深まり、人の眠りは深まる。


 眠りは深まり、明日には面倒を見ている連中どもが町で活躍するだろう、と見せ物の女性――春が思っていたときであった。



 空の異変に気がついた。赤い空というのには夕日や朝焼け以外には見覚えがあって、がんがんと半鐘が鳴っている。

 夜と赤の混ざる色合いのある方角に大きく驚いて飛び上がり、すぐにも「早く逃げなくては」と慌てた。



善継よしつぐ! 大変、今すぐ起きて!」


 大親友のようなはるは、眠りこけている善継に大声で呼び掛けた。

 善継は、まこと、すやすやと眠っている。

 どうやったらこんな大騒ぎの中ぐっすりと眠れるのか問うてみたいものである。

 閉じた目蓋の下に、まさか「呪いの眼」があるとは思えない程に、つくづくあどけない寝顔を見せていた。



 黒髪は日本人的で、艶やかとは言いづらい傷んだ髪質だが、眼を開ければ、綺麗にちかっと、猫のように光る青色の瞳。


 皆が言う。


 「善継は特別だ」と。



 皆は青い目について口にしてるのではなく、善継の性格や物言い雰囲気に纏めて「特別」だと口にする。


 座長の虎吉とらきちが拾った頃は、善継の青い目を売りにすれば生活は成り立つと思って育ててきた。

 まさか江戸でも名の知れた化け物屋敷を作る職人になろうとは想像してなかっただろう。

 善継は日本名だが、実は阿蘭陀人おらんだじんとの混血児で、旅の一座、見せ物小屋では見せ物とされている。


 中でも特に見せ物とされているのは、「睨めば、次の満月まで命はない、変死の瞳」であった。


 善継に睨まれた者は、今まで八割が変死体となっている。この青年の何処にそんな恐ろしい呪いがあるのか、さっぱり分からない。


 あるとしたら「特別の要素」くらいだ。

 善継の寝顔のあどけなさでは、春は勿体なく思うのだった。



(まぁ、呪いのお陰で、長く生きられてるんだろうけれど――)


 だが、それよりも、大事な問題がある。

 善継は、見せ物であると同時に、化け物屋敷の設計を手がける責任者である。善継が先々月に作った化け物屋敷が火事になって、燃えているのだ。

 善継を叩き起こさねば後で怒られるかもしれないと思うと、春は必死に起こすしかなかった。この青年が怒るところは、怖いのだ。

 化け物屋敷と、皆が芸を見せたり寝泊まりする天幕とは大きく離れている。

 だから、今ここに火がないことが無事である証であり、同時に善継の悲しみの始まりでもある。

 方角は、この様子では子の方角から縦に一列、すっかり燃えたのだろうか。ここから化け物屋敷までは、歩いて百五十歩はする。



「善継、ねぇ、お前、いい加減にしとくれよ!」


 困り果てながらも、春は必死に起こす。


「いったいなんですか、お春。せっかく、座長が裸踊りして大笑いしてる夢を見ていたというのに」



 善継は起きたばかりだからか、口調が弱々しく小さい声だった。

 春は起きたばかりの善継がいつまでも眠気から逃れられないと気づいたら、現場を見せたら早いだろうと、移動を促す。

 善継が起きるなり、お春は機嫌を損ねた。だが今は、それどころではない。

 起きるなり、お春は善継を引っ張って、火事の現場に連れて行く。

 寝ぼけてる善継は天幕から外へ出たことに気づかず、目をこすり、覚醒してないまま、火事現場へ春と向かった。


 徐々に明るさに、おかしいな、と善継は感じたのか、春の手を振り払い、化け物屋敷へと向かい、膝をついていた。

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