04
さっきのちょうちょみたいにじゃなくて、いつもお人形にしてるみたいに、ぎゅーって、ちゅーって。
「くしゅぐったーい」
きゃっきゃっと笑う妹のほっぺたはぷにぷにしてて、ぬくぬくで、それにお日さまの匂いがして、お人形なんかよりも全然かわいくて。
嬉しくて、楽しくて。
なんだか、すっごく胸がわくわくした。
さっきはかわいいお人形が欲しかったな、なんて思ってたけど。
もういらない。お人形なんてひとつもいらない。
だって好きっていってもお人形は好きっていってくれないし。
ぎゅーってしても硬いし。
ちゅーってしても冷たいし。
お人形じゃなくて、妹でよかった。
わがままいうけど、真似ばっかりするけど。
でも、やっぱりかわいいもん。
お人形なんかより、全然かわいいもん。
そんなかわいい妹に、ぷにぷにでぬくぬくの本当に本当にかわいい妹に、ぎゅーってされたりちゅーってされたり、好きっていわれたりするなんて。
ひょっとしたら、お姉ちゃんって得なのかもしれない。
ううん、きっと得なんだと思う。
お姉ちゃんってだけで、すっごく得なんだ。
わたし、お姉ちゃんでよかった。
本当によかった。
ありがとう。大好きだよ。
声に出してそういう代わりに。
そろそろ帰るよって、ママにそういわれるまで。
私は妹をずっとずっとずーっと。
ぎゅーってして。
ちゅーってした。 <了>