失業者と梅干しおにぎり
エピソード.3 失業者と梅干しおにぎり
「58番でお待ちの方。」
「はい。」
私は、今日!失業者から脱出すべく、職安に来ている。
「米村さん。今日は就職相談と言うことですが
…どんなお仕事を希望ですか?」
眼鏡を掛け多少、白髪混じりの50代くらいの職員が私の就職相談を受ける相手だ。愛想の欠片もない人だ。
「出来れば、事務職が希望です。」
「はあ。事務職ね……最近!男性で事務職探してもね。なかなか見つからないよ。正社員希望ですか?」
「はい。正社員希望です。」
「正社員希望ですか。最近はね…非正規雇用ばかりでね。なかなか正社員になるのは大変だよ。」
なんだこのジジイ。だったら初めから聞くなよ。
「ところで米村さんは、運転免許の他に何か資格はありますか?」
「いいえ。資格は無いです。」
「米村さんね。今の時代、資格も無くて、正社員は厳しいよ。まずは資格取得をお薦めしますよ。」
「………。」
クソ!これじゃあ、相談じゃなく馬鹿にされているだけじゃないか!
就職相談を終えた私は、バスに乗り家に向かった。私の席の隣には、スーツを着た恐らくサラリーマンであろう人が、スマホでニュース記事を見ながらゴモゴモ独り言を言っている。
「33歳。無職の男、逮捕って!なんか、無職の奴らばっかり犯罪犯してるな!」
その独り言を聞いて、私は、腹が立った。こっちだって、好きで失業者やってる訳じゃないんだぞ。クジだぞ!クジでリストラされたんだぞ。お前にこの辛さがわかるか。クソ!
「チッ!」
私は、つい舌打ちをしてしまった!隣の席に座っていたサラリーマンであろう人は次のバス停でバスを降りた。空白になった私の隣の席。なんだかサッパリした。再びバスが走り出す。しばらくすると!「数量限定!10年物の梅干し使用、梅おにぎり発売中が」という旗が!
「おっ!降りなければ!」
私は、次のバス停で降り。凄い勢いで、梅干しおにぎりを買いに向かった。
「すみません。おにぎり3つください。」
「はいよ。」
店のおじさんからおにぎりを手渡された私は、代金を素早く払い。そこで、おにぎりを口にした。
「うっ!酸っぱい!」
私が、酸っぱい顔をしたのを見て、店のおじさんが私に言った。
「若造!酸っぱいか?ハッハッ、梅干しおにぎりは人生と同じだ。人生は、酸っぱい。顔をしかめたくなることばかりある。でもよ……その酸っぱさがあるから。初めて、甘いと言う喜びを感じるのさ。」
「はあ。そうなんですか!」
「梅干しが酸っぱいからこそ!米の甘味が生きる。人生も同じよ。」
何を言っているのかは、なんとなくしかわからないけど。なんとなく、勇気が湧いてきた。
酸っぱさを知って!本当の甘さに気付く!
まあ、人生良いことばかりじゃないか!逆に悪いことばかりてもないか!
なんとなく、人生の酸っぱさを教えてくれた梅干しおにぎりだった。
気軽にコメントください(*^^*)