おにぎり エピソード1&エピソード2
日本の主食である米。これを手軽においしく食べる方法は「おにぎり」であると思う。
「おにぎり」には1つ1つに握り込まれた素敵なストーリーがある。
エピソード1.おばあさんの「塩おにぎり」
私は、おにぎりをこよなく愛する男。米村 大地、33歳独身。いつか究極のおにぎりに出会いたいと思っている。
「究極のおにぎり」とは、何か?どんな具が一番なのか?のりは巻いた方がいいのか?「おにぎり」の事を考えていれば、時間がいくらあっても足りない。
「おい。米村!」
はっ!いかん。また仕事中に「おにぎり」の事を考えていた。
「はい。なんでしょうか?志村部長」
「米村。ちょっとこい。」
そう言って、手招きしている。私は立ち上がり部長のもとへ向かった。
「突然だが、米村。お前、クビだ!」
「はい。クビですね。わかりました。」
うん?クビ……!
「えっ!!クビですか?なんで、突然?」
「最近、我が社の経営は円安の影響を受けて非常に厳しい状況にある。そこで、人件費削減の為に数人の社員をリストラすることにした。」
「なんで、私なのですか?」
「くじ引きだ!私を恨むなよ。自分の運の無さを恨んでくれ。」
部長は、そう言うと私の片を軽くポンと叩いた。
「くじ引きってなんですか?」
「誰をリストラするか?と社長に聞かれた私は、考えるのが面倒だったので、社員の名前を書いた紙を箱に入れ。リストラの人数分、引いた。そしたら見事に君の名前が引き当てられた訳だよ。運も実力のうち!これまで、世話になったな。ハッハッハッ。因みに今月末でクビだからな。あと10日でクビだ」
翌日!
「あっ!もしもし。米村ですけど……今日からリストラの日まで、休みます。離職書とかは郵送してください。」
これからどうしようか?気晴らしにドライブにでも出掛けよう。
ブーン!ブーン!私は行くあてもなく。ただ車を走らせていた。ブーンブーン!3時間程、本能のおもむくまま車を走らせていた。気がつけば、今まで来たこともない山道を走っていた。
「ハッ!ここはどこだ。」
マズイ!これは知らないうちに迷った……まさか、道にもこれからの人生にも迷ったか!
「腹減ったなあ!おにぎり食べたいなあ!」
そう思いながら5分程、車を走らせていたら。小さな集落に到着した。田んぼの中に家がポツポツと建っている。とてものどかな光景だ!
「なんか……心が癒されるな。」
私は無意識に車の窓を開け、外の空気を吸っていた。
「凄く酸素が濃いな。あっ!人だ。どこかに店がないか聞いてみよう。」
私は田んぼの中にいる人にどこかに店やがないか、聞いてみることにした。車を脇に寄せ、車から降り。田んぼの中にいる人の所へ向かった。
「こんにちは。」
私が挨拶をすると。田んぼの中にいる人は顔を上げてた。お互いの顔を見つめ合う。相手は、70歳くらいのおばあさんだ。
「あんた、誰だ?」
「私は……」
私は簡単に自己紹介し、気が付けばここに辿り着き。とてもお腹が減っていて、おにぎりが食べたいから。どこか店の場所を教えて貰いたくて、声を掛けたということをおばあさんに伝えた。
「ハハハ。あんた、腹減ってるのか。でも残念だけど…ここに店はないよ。」
「そうなんですか。」
「なんだい。あんた、そんなに腹減ってるのか?」
「はい。とても!」
おばあさんは、少し考え込んでから言った。
「私が作った。おにぎりでもいいか?ほれ、あそこに見えるのが私の家だ。ついてこい。おにぎり握ってやるから。」
「本当にいいんですか?助かります。嬉しいです。」
「いいよ。」
私は本当に嬉しかった!こんな時代に見ず知らずの人にわざわざ、「おにぎり」を握ってくれる心優しい人がいるなんて。
私は、おばあさんと一緒におばあさんの家に移動した。
私は、おばあさんの家の玄関の前で「おにぎり」ができるのを待つ。いったい、どんなにおにぎりが出てくるのだろうか?楽しみで仕方がない。
待つこと約10分。
「ほれ。出来たよ。」
そう言いながらおばあさんが玄関を開けた。私の目線は、おにぎりに向かう。大皿に10個くらいのおにぎりが乗っている。海苔は巻かさっていない。
「さあ、食べなさい。今、味噌汁も持ってきてあげるからね。ここに座って先に食べてなさい。今、私もくるから。」
「ありがとうございます。おばあさんが来るまで待ってますよ。」
「そうかい。今、急いで味噌汁を持ってくるからね。」
味噌汁が準備できると二人で玄関の前に座り。おにぎりを食べることにした。
「いただきます。」
「どうぞ。召し上がれ。」
私はおにぎりを1つ手に取り口に運んだ。一口で具に届くように半分くらいの所まで口にした。
「うん!」
半分になったおにぎりに目を向ける。何も具が入っていない。ただ軽く塩がふってあるだけだ。しかし………旨い。
「旨い。」
「旨いか。良かった良かった。私も誰かとご飯を食べるのは久しぶりだから。何時もより美味しいわ。やっぱり、食事は誰かとする方が美味しいわ。私には、息子が二人いるんだけど……どっちも顔を見せにすら帰ってこなくてね。じい様も2年前に天国に行ってしまって……。」
おばあさんの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「おっと、ごめんよ。つまらない話を聞かせてしまったね。」
「いいえ。大丈夫ですよ。」
「あんたは、なんでこんな所まで来たんだい?」
「それは……。」
私は、おばあさんに会社をリストラされる事や気晴らしに出て迷ってここに辿り着いた事を伝えた。
「そうかい。あんたも苦労してるんだね。」
「俺、真面目に働いてたんですよ。クジですよ……クジなんかで決められたんですよ。笑えますよね。」
久しぶりに涙が流れた!
「あんたは、まだ若いよ。頑張りなさい。とは言わない。でも……自分の可能性を信じなさい。」
「ありがとうございます。」
「今日はあんたと一緒に食事出来て、幸せだったわ。」
おばあさんは、余ったおにぎりを1つ1つラップにくるんで持たせてくれた。
帰り道!おばあさんの塩おにぎりを一口、口にした瞬間に涙がこぼれた。
「旨い。旨いよ……おばあさん。本当にありがとう。久しぶりに人の優しさに触れた。」
具も何も入っていない。塩をふってあるだけのおにぎり。でも…そのおにぎりは、私の心を癒してくれた。
エピソード2.OLの「ツナマヨネーズおにぎり」
会社をリストラになった私には、時間が沢山ある。今日は、何をしようか?とりあえず、今日もおにぎりを片手にワイドショーでも観るとする。
「皆さん、おはようございます。今日は、OLに今、大人気だと言うツナマヨネーズおにぎりを特集で取り上げたいと思います。」
うん!「ツナマヨネーズおにぎり」の特集か!DVDに録画せねば。
「私もツナマヨおにぎり!よく食べますよ。」
女性コメンテーターがにこやかにコメントしている。
ワイドショーが終わると私は無性にツナマヨネーズおにぎりが食べたくなった。しかし……ツナ缶がない!私は、近くのコンビニにツナ缶を買いに行くことにした。
コンビニに到着し、店内へ。私は、コンビニに入るといつもの習慣でおにぎり売場へ向かった。ツナマヨおにぎりが、ほとんど売り切れている。
「あっ!1つだけ、ツナマヨおにぎり発見。」
私は、おにぎり売場に残されていた。最後の1つに手を伸ばした。その時!
「あっ!」
という女性の声がした。声のした方を見ると、20代前半くらいの制服をきた女性が立っていた。するとその女性が私に話し掛けてきた。
「そのツナマヨおにぎり!買うところですよね?」
「はい。そうですけど……」
私がそう答えると女性は、少し残念そうな顔になった。
「もしかして、これ食べたかったですか?」
と私が女性に訊ねると。
「はい。私、まだツナマヨネーズおにぎり食べたことがなくて!今日、初めて食べてみようかと……」
「そうなんですか!わかりました。これ、譲ります。」
私は、おにぎりを女性に譲った。
「いいんですか。ありがとうございます。」
その後!私は、ツナ缶を買ってツナマヨネーズおにぎりを作って食べた。
数日後…今日はふりかけおにぎりを作ろうとコンビニに買い物に来ていると。
「すいません。」
と声を掛けられた。振り向くとこの前、ツナマヨネーズおにぎりを譲ってあげた女性がいた。
「この前は、ツナマヨネーズおにぎり!ありがとうございました。私、あれからツナマヨネーズおにぎりに凄くはまりました。良かったらこれどうぞ。」
と言うと女性は、カバンからおにぎりを取り出して、私にくれた。
「最近は、自分でツナマヨネーズおにぎり作るのにはまってるんですよ。それ、私の手作りです。」
「ありがとうございます。いただきます。」
私は、何とも言えない幸せな気持ちになった。また、一人おにぎり好きが増えた。
私は、家に帰ると貰ったツナマヨネーズおにぎりを食べて見た。
「旨い。」
女性からおにぎりを貰うなんて……幸せだ。
早く、次の仕事探して、美味しいおにぎりを握ってくれるお嫁さんも探すぞ。
たった1つのツナマヨネーズおにぎりは、私を元気にしてくれた。
皆さま。次回作も愛読宜しくお願いいたします。