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四ノ宮晴樹の異世界漂流記  作者: 四ノ宮晴樹
平凡極まりない少年が異世界に行くそうですよ?
3/5

異世界に拉致られたんだけどどうすればいいのかな

いつものように過ごしていた日常。

平凡極まりないやつこそ主人公になりやすいというが、果たしてどうなのだろうか。

すべてが中の上である俺は、何事にも不自由していなかった。

勉強もそこそこできて、顔もそこそこ。性格もそこそこで。

そんな自分が気に入っていた。

このままおじいちゃんになればいいな。

家に必ず1台はある家庭用ゲーム機を操作しながら、晴樹はそう思った。

だが、

「ん?なんだこれ。」

見かけのないアプリがダウンロードされているのを見て、俺はそこそこの好奇心をもった。

「暇だし、やってみようかな。」

アプリを起動し、ずいぶん昔に慣れた、ゲーム機に精神を預ける感覚が全身を覆う。

ウィンと音を鳴らしアプリを開ける。

『≪No name≫にお越しくださり、ありがとうございます』

ん?ノーネーム?ゲーム名なのかな。

そう納得し、OKボタンを押す。

『では、あなたの体格に沿ったキャラクターを作成します。』

お決まりのローディングマークが目の前に浮かぶ。

数十秒後、ローディングが終わり世界が開かれた。

と同時に、オープニングムービーも流れ出す。

概要は、ある惑星をモンスターを倒しながら開拓するというVRMMOだ。

多数のプレイヤーと共に、もうすぐ開拓率が50%に差し掛かるというところで、いきなり『プレイしてくださってありがとうございます。』

というアナウンスが出て、強制ログアウトしたのだ。

みてみると、体験版だったようだ。

突然の出来事に驚いていたので、体験版と聞いて納得した。

接続を解除し、ゲームをプレイするためのヘルメットをとろうとすると、

メーラーに一件のメールが届いた。

『先ほどのゲームの感想をお書きください。』

僕はいくつかの質問に答え、メーラーを閉じようとしたその時、一つの質問を見落としていることに気が付いた。

『・もし異世界に行けるなら何を持っていきたいですか。(自分が持っていないものでも可)』

僕は少し考えて、

『下着と上着、あればAIが欲しい。』

と、なんとなく答えを書いた。

そして送信元に送り返し、メーラーを閉じた。

ご飯だよーという妹の声にこたえ、僕は自室を後にした。


◇◆◇◆◇


長い長い夢を見ていたような気がする。

いや、まだここも夢の中なのだろう。

晴樹はそう確信した。

なぜなら晴樹が目を覚ました場所はいたって真面目に360度どこからどう見ても完全無欠な、異世界だったのだから。

地には有象無象の生物が蠢き。

空には前代未聞の大きさの鳥が飛び交い。

そこを異世界と称さずに何と称するか。

もう少し夢を続けなければと思い布団に潜り直す晴樹の目に、何かが映る。

「おはようございます、ご主人様(?)」

先ほどまで誰もいなかった部屋に、一人の女の子が立っている。

「うわっっっ!どこから湧いた!?しかも何故疑問系!?」

失礼なことを喚きながら後ずさる。

すると、同じスピードで女の子も移動した。

足を動かさずに。

「あ、失礼しました。私……まあ、無難に依亜、とでも名乗りましょうか。

私は、人工知能です。あなたがAIを望んだためあなたをサポートするためにインストールされました。」

「え、うん?全然全くわからないけど」

「ええ、はい。最初からご説明いたしますと……。」


◇◆◇◆◇


その後30分ほど、依亜というこの説明を受けたところ、分かったのはここが異世界ということ。そこを開拓して欲しいということだった。

「……まるでこの前やったゲームのようだ。と?

その通りです。あのゲームはこの世界をモデルにしたゲームです。

そこで選抜された……1072人が、この世界を舞台にして生活するということです。

初期アプリ『異世界の歩き方』より。

あ、アプリは視界の左上にあるアイコンをタップすると現れますよ。」

なるほどアイコンを開いてみると、様々な電子書籍が入っていた。

「にしても普通はチュートリアル用の合成音声なのに私みたいな美声で説明されるとか晴樹様ラッキーですね〜」

なんか依亜が馴れ馴れしくなっていた。

「さて、チュートリアルも終わりましたし、まだ時間はありますがそろそろ街に行きましょうか」

「街?」

「はい、この家からまあまあ近いですよ。そこで小ギルドの振り分けを確認しましょう。」

よくある異世界ものと違って、親切設計だった。


◇◆◇◆◇


家を出て依亜の声をBGMにしながら10分ほど歩くと、大きな銀行のようなものが見えてきた。

「あれが『政府』です。クエストの受注からデパートの役目まで全てまかなっています。」

「へぇー。あ、あの掲示板みたいなのはなに?」

「あれは小ギルドの割り当てですね〜。どうせ自分の端末に送られてくるんで行かなくていいですよー」

そんな会話をしていると、

「ハル兄っ!?」

聞き慣れた声が聞こえたような気がした。

誰だろうと思って後ろを振り返ると、

「ハル兄ぃぃぃぃ!」

妹がいた。

四ノ宮沙希。16歳。どこかの拳法かなんかをやっている。

「ここどこ?知り合いがいなかったからとても不安だったんだけど……」

「ここ、異世界……らしい……」

「あー……また中二病発病しちゃったのか……。病院、行く?」

「いかねぇから!」

「はいはい。で、この体の中?にある青い線はなんなの?精霊回路?プッ……」

「え?……うわっっ!なんだこれ!」

「今頃気づいたんですか晴樹様。これは皮膚の少し下を通っている、エネルギーのパイプみたいなもんです。力が強くなりますよ。試しに、力強くジャンプして見てください。」

「ああ、わかった。」

そういって強く地面を蹴ると、スー、というわずかな音が聞こえると同時に、晴樹の体は宙を舞っていた。

「おお!スゲー!」

「最初の方に言ったんですけど。」

「あ、そうなの?悪りぃ悪りぃ。」

ストン、と着地し、しばし二人と談笑していた。すると

ピコンっと音が鳴った。

「お、小ギルドわけが決まったようですね。見てみますねー。」

いつの間にかずいぶんちっちゃくなってマウスのような姿の依亜を眼で追って、自分も確認する。

「第二ギルド……?」

「はい、今からそこに向かいましょう!」

「わあ!私も第二ギルド!」

胸の中で妹と一緒になって良かったとおもい、俺らは第二ギルドへと向かった。



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