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タンポポ少女と季節風

作者: 風功玲

 えー……なんと言いますか。始めに断っておきますが、俺は純粋に人助けをしたつもりだったんです。決して犯罪者になろうとか監禁してやるぜへへへなんて微塵も思っちゃいない。両親に誓って言おう。

 ただ何というかその-、少々手違いがあったようで。


「ねーごはんまだ-?」


 俺の部屋で寝そべりながらテレビを観ている少女と俺には、唯道端で出逢ったっていうことくらいしか接点がなくて、つまり何が言いたいかというと、


「あの……頼むから出て行ってください」


 今俺はまさに現在進行形で困っているところです。



   ◇ ◇ ◇



 それは今日の夕方辺りだったか。俺は隣町の友人の家に遊びに行き、その帰りに普段あまり行くことのないスーパーに立ち寄った。交通手段は自転車である。なかなか安い食材が置いてあり、気分のよい帰り道であった。


 あまり行き慣れない道ではあったが、過ごしやすい季候と以前よりも日が長くなっていたこともあり、周囲の探索と洒落込もうなどと画策した。そしていつの間にやら背の高いマンションの並んだ住宅街へ迷い込んでいた。


「うーむ、どうやらこちら側ではなさそうだな」


 町と町の境辺りをうろついていたと思っていたが、こちら側には道が繋がっていそうにはなかった。


 さて、これからどうするか……。

 辺りを見渡すと、少し離れたところに公園が見えた。この区域に住む者たちへの配慮なのだろう、周辺に緑もちらほら見える。なかなか環境はいいらしい。


 どうせなら進んだ方がいいだろう。そう判断した俺はまっすぐ公園を突っ切って進むことにした。そろそろ帰りたくなってきていたからだ。この頃のご多分に漏れず、子供はおろか犬猫一匹居ない。危険だからと遊具の取り外されたまっさらな公園には、ベンチと白い布の固まりしかなかった。


 寂れてるなあ、と月並みなことを思いつつ、そこだけ違和感を醸し出す白い布に気を取られ、気がつけば直ぐ傍まで近寄っていた。

 近づいてみるとずいぶん大きな布だった。こんもりと盛り上がっているところから、中に何か入ってるのかもしれない。水を吸ったらしき布は端が土で汚れていた。

 好奇心から右手で布の端っこを掴み、持ち上げてみると――――そこには俯せになった人がいた。


「……えっ、え? いや、ちょっとこれっ、て」


 硬直することたっぷり五秒間。え? なにこれ。率直にそう思った。

 人? 人っぽい何か? マネキン? なによこれ?

 頭には一斉に疑問符が沸き上がっていたが、再び布を持ち上げる勇気は直ぐには出なかった。

 三歩下がって深呼吸。五回ほど深々すると、少しばかり気分が落ち着きを取り戻した。

 頭で考えても混乱するだけなので、とにかく声に出して情報を整理してみた。


「布の中に人のようなモノがあった。これが人でないなら俺はこのまま帰る。人だったら警察に届ける。OK?」


 とにもかくにも確認しないことには始まらない。仮に死体だとしても、届け出るのが正しい選択だろう。

 再び布に手を掛けようとしたそのとき、もそりと布が動いた。俺は摺り足で二歩下がった。我ながらすごい反射神経だと思った。


 動きはさほど時を経ずして収まった。とりあえずこれは生きていると判断していい……んだよな。こわごわと布の塊ににじり寄りながら、何かあったときのために奥の方を掴んで、一気に引き上げた。

 布に染みた水気が飛び、まとわりついた土が跳ね、白い布が視界を一瞬遮った後――


「――――ねえ、起こして」


 次に視界に移ったのは、腕をだらんと気怠そうに伸ばす、大きな黒目の少女だった。



   ◇ ◇ ◇



「よし、判った。夕飯は食べていっていいからそしたら出て行ってもらえる?」

「じゃいらない」


 裾がぶかぶかの足をぷらぷらさせながら、彼女はテーブルの上にあったじゃがりこをポリポリと咀嚼していた。

 あのとき彼女――川獺しいるは俺に向かって腕を伸ばし、起こせと言った。俺は狐に摘まれたような気になり、ほとんど無意識にしいるを引き起こしていた。


「ありがと」


 その一言を残して彼女は宙をふわふわと漂い、やがてマンションの陰へと行ってしまい、居たのかどうかすら判らなくなった。

 唯、足下にはくたびれた布がくしゃりと丸まっているだけだった。


 そして帰宅後、今に至る。

 彼女は勝手に人の家へと上がり込み、勝手に風呂を沸かし入り、勝手に人の服を着て、勝手に居間でテレビを観ていたという。ちなみに今は勝手に洗濯機で自分の服を洗っている。うぃんうぃんと洗面所から洗濯機を回す音が聞こえていた。


 好き放題やった後、今度は食事を求めていた。


「色々好き勝手やったことはひとまず置いといてだ。そもそもどうやって家に来たんだ?」

「おーなーかーすーいーたー」

「だから……」


 じーっとこちらを無言で見つめるしいる。


「……食べたらちゃんと話すんだぞ」


 片手を挙げてひらひらと気怠げに振る。本当に体力がないのか唯物ぐさなだけなのか。この場合は後者な気がする。

 まあ、とりあえず時間も時間なので俺自身腹も減っている。一人分増えたところで手間は大して変わらないだろう。

 そんなわけで手早く、今日買ってきた豚肉と野菜を味噌で炒め、豆腐とわかめの味噌汁に白米、白菜の漬け物をテーブルに並べて今日の晩飯の完成。

 料理のにおいに釣られたのか、しいるはむくりと姿勢を起こし、ぼうっと食卓を眺めていた。


「はい、割り箸。簡単だけど腹は膨れるだろ」


 のろのろとした動作で箸を割ると、先ずは味噌汁を啜る。心なしか目が見開かれた気がした。味噌の香りは目が覚めるからな。

 続いて味噌炒めに手が伸びる。もしゃりと口に運ぶと、がっとご飯茶碗を掴み、大きく口を開けて食べる。食べる食べる。白菜の漬け物をしゃくしゃくと嚙みしめ、再び味噌汁。そのループを繰り返し、あまつさえおかわりなどと言ってきた。まあ、二人分ということでたくさん炊いていたのだが。


「……ぐぅ」


 ぴたりと動きを止めると、まるで電池が切れたかのようにぱったり倒れ込んでしまった。すーすーと寝息まで聞こえてくる始末。

 おいおい。なんなんだ一体こいつは。寝顔をよく見れば、意外と整った顔立ちだ。大きな黒目がちな目に、白くきめ細やかな肌。年齢にしてみたら十五、六くらいではなかろうか。勝手に着ている俺の服は彼女には少々大きかったらしく、服の隙間からその中身がちらりと――


「って何考えてんだ俺」


 この年で犯罪者か。末恐ろしい。

 一度そういう視線で見てしまうとなかなか困るものがあったので、とりあえずタオルケットを彼女に掛けてあげた。人心地つくと、この状況をどうしたものかと考え込んでしまう。


「ま、明日は日曜だし」


 とりあえず寝よう。



 暖かいものに包まれているような感触。

 寝ぼけた頭でも何となく理解はしているつもりだ。これはつまり、定番のアレだな。

 上にのしかかっているであろう少女を押しのけて、俺は半身を起こした。その際柔らかいものに触れたのは役得と思おう。なかなかのボリュームだった。


 さてどうやって叩きだそうと考えつつ、俺は朝食を用意する。朝はパン派だ。適当にスクランブルエッグと既製品のコンソメスープを作って、しいるが起きるまでもなくさっさと食べた。

 匂いにつられたのだろうか、半ばまで食事が終わったところで彼女が起床する。はよーと寝ぼけ眼で言ってきたので、こちらもおはようと返す。挨拶は大事だからな。

 ささっと食べ終えると、彼女の分を手早く準備する。と言ってもパンをトースターで焼いて粉末にお湯を注いだだけなのだが。


「いたらきます」


 未だ寝ぼけてるのか、ろれつが回っていない。もそもそと食べ始める彼女を横目に、俺は洗濯を始めた。

 パンパンと服を伸ばしながら、生乾きだったしいるの服も天日干しにしていく。もちろん下着類は除く。というか今は履いているのだろうか。気になったが、頭から追い出しておく。朝から何を考えているのか。

 彼女が食べ終えるのを見て、俺は話を向けた。


「しいる、お前これからどうするんだ。そろそろ帰って欲しいんだが」


 家出少女と言われても困る。頼むからただの行き倒れだと言ってくれ。いや、それも困るのだけれど。

 んー、と悩んでいるような呆けているような覇気のない表情を浮かべて、しいるは言った。


「風がね、まだ吹かないから。だからそれまではここにいたいな」


 電波か。厄介なものを拾った物だ。


「風って何だ。渡り鳥かよ」


 正確には季節風だったか。


「そう、私は渡り人間。世界を旅する鳥人間なのだ」

「なんつーかキャラが定まっていないよなお前」


 本格的にアレだわこいつ。

 生暖かい視線を送っていると、彼女はむっとしたように頬を膨らませた。


「何さその視線は。昨日も見たはずだぜ、華麗に宙を舞う美少女、川獺しいるの雄々しい姿を!」


 だからぶれてる。美少女で雄々しいって。

 警察に届け出た方がいい気がしてきた。


「もしもし、警察ですか。行き倒れの人を見かけたのでそちらで保護を――」

「ちぇすとー!」

「へぶぁ!?」


 携帯ごと取り落とす盛大な一撃。と言うか携帯が割れた。どうしてくれるんだこら。

 まあ、だいたい分かってた。こう言うのは回避出来ないフラグという事を。

 とはいえこのまま家に泊まらせるわけにはいかない。一人暮らしとはいえ、男女であるし、何より1Kは狭い。



   ◇ ◇ ◇



 ぴんぽーん。


「ちわーす。先輩いますかー?」

「帰れ」


 俺は中学時代の頃からの先輩、新名聖にいなひじり先輩の元へとやってきた。剣道部の先輩で、何かと面倒見のいい人だ。彼女なら助けになるだろうと訪ねたのだ。


「お前からはろくでもない予感がぷんぷんする。茶くらいは出してやるから何も言わずに帰れ」


 そして勘の鋭い御仁である。人の良い性格だが割を食わない理由である。事前に厄介事ははねのけてしまうのだ。

 とりあえず文句を言われる前に、部屋の中に入る。しいるもあとからするりと滑り込むように入った。驚いた様子の先輩を横目にリビングまで直行する。


「そんな事言わずに聞いて下さいよ。かなり困ってるんです。昨日から行き倒れを拾ったんですけど、あ、こいつ川獺しいるって言うんですけど、なんか電波発してて会話にならないんです」


 そんな困ったそぶりをする俺に、先輩ははあ? と呆れた表情を浮かべながら、口を開く。


「警察に電話しろよ。あたしは保護者じゃねぇぞ」

「そうしようとしたんですけど、携帯壊されちゃって。先輩から掛けて貰えませんか。こいつ抑えておくんで」

「そのつもりなら家に置いておけよな……。まあいいや、分かった。電話はお前が出ろよ」


 代わりに抑えてやるから、と聖先輩はしいるを羽交い締めにした。ばたばたともがいているようだが外すのは至難の業だろう。通称聖固めと呼ばれるそれは、副部長の腹パン制裁のために鍛えられているからだ。自分で言ってて意味が分からないけれど、実際そうなのだから仕方ない。

 一一〇。とぅるるるると二回なると、無事警察に掛かった。


「もしもし、警察ですか。昨日行き倒れの人を見つけたんですけど、そちらで保護をお願いします」

「行き倒れですか。貴方の名前を教えて下さい」

実谷宗吾さねやそうごです」

「拾った方の名前は分かりますか」

「川獺しいると名乗っています」

「他には何か」

「何か電波なこと言ってるんですよ。渡り人間だとか」

「渡り人間……? 少々お待ち下さい」


 保留音が聞こえてから五分。もがいていたしいるだったがその間に抵抗するのを止めたようだった。先輩はまだか? と急かしてくる。そんなこと言われても。

 やがて受話器を取る音がして繋がった。


「あーもしもし。実谷さんでしたっけ。保護した人は川獺しいる、彼女は渡り人間と名乗った。間違いないですね」

「はい」

「本人は何と言っていますか」


 言っていいのか分からないが、正直に答えることにする。


「風が吹くまで、家に居させて欲しいと」

「間違いないですね」


 ええ、何でこんなに食い下がってくるの。言いしれぬ不安を抱きつつ、俺は偽りなく知らせる。


「はい」

「なら、貴方の家で保護をお願いします。これは世界条約に則るものです」

「……はい?」

「対象には衣食住を保護者の可能な限り保証すること。無論傷害は認められません。季節風の時期まで保護をお願いします」

「ちょ、ちょっと待って下さい! なんですかそれ。初耳ですよ。渡り人間って実在するんですか」

「何を言っているんです? 当たり前でしょう。季節風に乗って世界を渡る渡り人間。彼らは貴重な特別天然記念動物ですよ。人権もありますからある意味世界でもっとも重要な保護対象です」


 人権があるのに動物扱いなのか。何か齟齬を感じる。


「渡り人間については納得は出来ませんが理解しました。ですが今住んでいる場所では二人も住めませんよ。生活費も足りませんし」


 それが問題である。話が大きくなって収まりがつかない予感がしていたので、これで矛先を変えられないかと乏しい頭を何とか捻った。

 警察は普段イメージする荒っぽさとは無縁の丁寧な口調で回答する。


「それでしたら、政府から最適な住み処を一時的に付与します。生活費も、最低限のものは提供することになるでしょう。いわゆるホスト役という事ですね。詳しくは外務省に問い合わせて下さい。あるいは役場の窓口でも今の時期は厳しいかも知れませんが対応してくれるはずです」

「はあ」


 最早何を言う気力も起こらなかった。正直頭が着いていけない。なんだ渡り人間って。外務省って。しかも役場の窓口でも出来るのかよ。そりゃそっちに行くわ。

 警官はこれでもう話す事は無いとばかりに息をつき、


「それでは、この辺でよろしいでしょうか。これから大変でしょうが頑張って下さい」


 それはどこか実感の伴った言葉だった。もしかして彼もまた鳥人間に棲み着かれたのだろうか。だとしたら気苦労が絶えなかったのだろう。暗澹たる気持ちになりながら、彼に礼を言ってから電話を切る。


「どうだって?」


 聖先輩が訊ねてくる。俺はありのままを話した。


「俄には信じがたいな。本当に渡り人間なんていたのか」

「あのーそろそろ離して貰えませんか」

「おっと。悪かったな」


 先輩はバツの悪い顔でしいるを離した。しいるは腕を回しながら満足げな表情である。

 それにしてもこれからどうすれば良いのか。悩む俺に対し、先輩はあっけらかんと言った。


「まあ、役得とでも思えばいいじゃないか。可愛い女の子と一緒に住めるんだ。そう考えれば悪い話でもないんじゃないか」


 人、それを生殺しという。こんな訳の分からないことになって嬉しいはずもない。

 とりあえず役場に行かなくてはならないだろう。貴重な日曜日が想定外につぶれてしまった。


「んじゃまあとりあえず役場に行きますよ」

「ああ、ちょっと待て。その前に確かめたいことがあるんだ。川獺だっけか。空飛べるんだろ。見せてくれよ」


 しいるは面倒くさそうに渋い顔をした。


「えー、だるいからやだ」


 ソファにぐてーっとだらしなくもたれかかる様は何か腹立つ。先輩も同感だったらしい。いらいらした表情でしいるを睨むと、


「ならケーキやるからやれよ。茶も入れ直してやるから」


 こう見えて意外と甘党の聖先輩から譲歩の提案が出た。よくよく見ると、どこか怒りの中にもわくわくしたものが見え隠れしているのが伺えた。案外この状況を楽しんでいるのかも知れない。まあ、そりゃそうか。所詮人ごとだしな。

 対するしいるはと言うと、ケーキの単語が出た辺りからぴくりと反応していた。現金な奴だな。


「し、仕方ないなー。そんなに言うんだったら、やってあげないこともないよ?」


 恩着せがましい奴だ。やっぱり腹立つ。

 そのまま俺たちは外に出ると、しいるは得意げな表情をして、ようく見てなよーと言ってから宙に浮かんだ。あれはやはり俺の見間違いではなかったらしい。タンポポの綿毛のように、体重がないかのように、風に揺られながらゆっくりと上昇していくしいる。何かの特撮かと思ったが、あいにくスタントマンの付けるような透明なロープもないし、何かのイリュージョンというわけでもないようだ。


 世の中には不思議が溢れているものである。この調子だとUMAも実在しているのかも知れない。

 俺は心の中で、渡り人間をタンポポ人間と呼ぶことにした。



   ◇ ◇ ◇



 役場に事情を話すと、数日後にいくつかの物件を不動産屋に紹介して貰った。どれも今住んでいる場所よりはましとはいえ、それなりに古い物件だった。世の中そんなに甘くないらしい。その代わりと言っては何だが、広さや部屋の数は満足行くものがあった。どこも防音処理はそれなりとのこと。


 ちなみに審査はざるだった。担当の人が来て、しいるといくつか会話をした後にすぐ認定を貰ったからだ。おい、タンポポ人間ってのはみんなこんな奴らなのか。スギ花粉みたいな奴らだな、と未だ見ぬ同胞に同情した。

 引っ越し業者を雇うのは結構な痛手なので、友人の兄に頼んでトラックを動かして貰った。元から対してものは持っていなかったので――それ以前に置き場所がなかったため――移送はすぐに終わった。なかなか日当たりの良い物件だ。学校からは遠くなってしまったが、近くにバス停があるのでそれほど困ると言うこともない。まあ、これからも自転車で通う予定なのだが。


 場所は何の因果かしいるを拾った隣町、しかもその住宅街にほど近い場所だったのもあって、何か因縁めいたものを感じる。

 荷運びが済み、一段落したしいるはフローリングの上でひなたぼっこをしていた。なんとも幸せな表情である。太陽光に透けて髪の色が秋の稲穂の様な美しさに輝く。見れば見るほど残念美人だ。

 部屋割りを早々に決めた。その結果、西が俺、東がしいるとなった。どうでもいいや。

 それぞれの部屋に荷物を運ぶとして、そもそもしいるの道具が何もないことに気付いた。衣類は聖先輩のお下がりを借りている状態である。下着類は流石に別途購入したのではあるが。


 買い物に出ようと思った。

 しいるだけに任せたら確実に大変なことになりそうなので、終末に聖先輩を誘った。ああ? と恫喝気味に唸られたが、そこは一緒に先輩の服も一着購入すると言うことで話がついた。お願いだから高いのはよして下さいというと、お前にたかるほど落ちてねぇよとかえって心配された。何とも言えない心持ちである。


 で、当日。

 余り洒落っ気を出したところで財布がピンチだろうという先輩の鶴の一声で、俺たちは巨大ショッピングモールへとやってきた。ゾンビでも出てきそうな何でも屋スタイルである。ここなら程よい価格だろう。本当に助かった。

 アイスクリームを食べつつしいるの服をいくつか見繕う。外着と部屋着の二種類だ。過ごしやすい季節なので、コート類は買わずにすみそうだ。

 先輩の服はその中でも一番高かった。自重するって言ったのに……。


 結構な出費が出たところで、先輩は映画を見ようと提案した。ハードなアクションものである。いかにも先輩らしいチョイスだと思いながら、恋愛映画のポスターを眺めていたのを忘れない。そう言うのは好きな人と見るものだよね。

 映画はそこそこ面白かった。とにかくど迫力で、戦闘シーンに金かけてるなーとかちょっとずれたことを考えていた。先輩やしいるは、うおおー、だとかそこだっ、とかはしゃいでた。周りの人すみません。

 おやつの時間が過ぎたところで、余ったポップコーンを女子二人でポリポリ食べながら、先輩は笑顔で話す。


「結構面白かったじゃねぇか。特に悪役の吹っ飛ぶところとかさ、ありゃすげぇ演技だな」

「映画ってすごいね! どかーん、ぐわーんって大迫力だった!」


 どこか子供っぽい仕草で、しいるは身振りを交えながら感想を物語る。こんなに喜んでくれたのならチケットを買った甲斐があったというものだ。ちなみに先輩は自分で買った。そこまで世話を掛けたくないらしい。


「たまにはいいですね」

「うん、やっぱりアクションものが一番だよな」


 そうは言うが、チケット購入で少し迷ってたよな。助け船を出してやろうか。


「そう言えば聖先輩。今やってる恋愛もの、あれ結構評判良いらしいですよ」


 なっ、と驚愕の相貌を浮かべる先輩。その頬はほんの少しばかり朱い。


「あ、あたしがそんなの見るわけねぇだろうが! 頭湧いてるのか宗吾!」

「あれ、聖ちゃんあのポスター見てたよね」

「あ、あれはだな……ええい、あたしをからかって面白いのかよ!」


 正直面白い。でもそんな事言ったら腹パンの刑は免れないだろうので口は噤んでおく。

 代わりにこう言うことにした。


「今度見に行きませんか。一人では恥ずかしいので」

「そ、そうか? お前も男のくせに変わってんな。ま、暇な時なら付き合ってやるよ」


 片手で小さくガッツポーズするのは見ないであげる優しさ。そんなに楽しみだったのだろうか。意外と乙女な人だな。


「何か食べたい」


 少し不満げな表情で袖を引っ張るしいる。

 お前は何か食べてばっかだな。太るぞ、タンポポ少女。浮けなくなってしまえ。



   ◇ ◇ ◇



 それからは特に何事もなく日々は過ぎていった。そして四月の終わり頃。

 一陣の、風が吹いた。

 ピンクのベッドから起きたしいるは、宗吾の部屋へと入っていった。もちろん鍵など付いているはずもない。静かに寝息を立てる彼にしいるは近づくと、そっと頬を撫でた。愛おしげに彼を眺めた後彼女は、


「そろそろ行かなきゃ。じゃあね、宗吾」


 そう言って部屋を出ようとする。

 そこへ男の声が引き留めた。


「おう、挨拶くらいちゃんとしろや」


 びくっと彼女はおびえたように身を竦ませた。


「お、起きてたんだ」

「当たり前だ。気配で分かる」


 それは普通ではないんじゃないかとしいるは思う。宗吾はそんな彼女を気にすることなく、身体を起こしてカーテンを開けた。


「良い天気だな。絶好の渡り日和だ」

「風が吹いたの。今日中に出ないと」

「事前に分からなかったのかよ」

「うん」


 しいるは申し訳なさそうに俯く。


「ごめんね」

「いや、別に良いんだけど。先輩に挨拶くらいしておけよ」


 その言葉を聞くな否や、しいるは顔を曇らせた。


「そうだね。ちゃんと挨拶しないと」

「? 先輩と仲悪かったっけ」

「ううん、そう言う訳じゃないんだ。ちょっと、ね」


 きっと彼は気付かないのだろう。この胸に秘めた淡い思いと、じりじりと身を焦がすような嫉妬の炎を。


「変な奴だな。とりあえず飯食うか」


 うん、としいるは答える。彼の作る食事は、適当で、おおざっぱで、少し暖かい。

 いつも通り食パンと、ちょっと贅沢をしたのか、サラダ、ウィンナー、目玉焼き、コーンスープと贅沢な食卓だった。スープはいつも通り粉末だったけれど。

 しゃくしゃくとレタスを噛みしめながら、今日はどうするのか話す。このまま二人で喋っていても全然構わないのだけれど、それは勿体ないと彼は言う。別に、いいんだけどな。


「とりあえず、世話になった人に挨拶だ。聖先輩に、役所に、不動産屋に、あ、あとできればあの警官も。まだ時間はあるんだろ」

「うん。今日中であれば大丈夫だから」


 それから彼らは一軒一軒話して廻った。不動産屋には今月いっぱいで引き払うと告げる。聖ちゃんは午後から空くそうなので、それ以外を午前中で済ませた。

 聖ちゃんは話を聞くと、


「そうか。寂しくなるが達者でな」


 と本当に寂しそうに言ってくれた。


「何か思い出が欲しいな。何か無いか」

「だったらこの間言ってた映画とかどうです? ほら、恋愛ものの」

「お前、最後の最後にそれかよ」


 聖ちゃんは呆れた口調で宗吾を見た。でも、うん、これは良いかもしれない。


「私、それで良いですよ」

「あ? そうか。じゃあ、それでいっか」


 楽しそうに聖ちゃんは笑う。雑みのない、快活な笑顔だ。宗吾も嬉しそうに笑っている。ああ、こちらに向けてきた。眩しい。眩しすぎるであります。

 チケットを先に買って、待ち時間の間ウィンドウショッピングを楽しんだ。なんだかんだ言って、休みの日は付き合ってくれた。その思い出が走馬燈のように脳裏によぎる。あれ、おかしいな。今まで生きてきた思い出よりも、ここ数週間の方が濃いなんて。

 不思議な心持ちだった。


 映画館に入った後はポップコーンを買った。Lサイズで、キャラメルの掛かった甘い甘いポップコーン。メロンソーダとホットドッグも付けて貰った。えへへ、悪いですなあ。

 予告編のショートムービーを見た後、本編が始まった。時代は戦時中で、下士官が侵略国の女性と恋に落ちる物語だ。戦地を転々とする下士官と、憎悪と愛に揺れる女性。何だか他人事ではないみたいで、物語に没頭した。ポップコーンを掴む手はいつの間にか止まっていた。

 密かに密会する二人の仲を裂くように、地元の人たちは女性を責め立てた。やがて物資を横流ししていた下士官も、上官に見つかって彼の目の前で女性を陵辱された。

 痛かった。どうしてこんなひどいことをするのか分からなかった。女性は死んでしまうのではないかと思った。


 そこからの展開は怒濤だった。やがてゲリラが彼らを強襲した。上官は死に、下士官は兵を率いて戦った。そして祖国の敗北が知らされる。彼はすぐに戦闘を停止した。なおも攻撃を続けるゲリラだったが、彼は説得し、侵略国の復興に誰よりも早く取りかかった。飢えた人々には食料を与え、仮設のテントを建てた。国の人たちの怒りは収まらなかったが、彼は甘んじて受け入れた。

 女性は恐怖を抱えつつも、彼に寄り添うことを誓う。身を粉にした献身は、やがて人々に受け入れられていく。


 そして終局。彼は祖国に戻ることとなる。それは物資の横流しと、上官の罪を下士官が背負う形となっていたのだった。このまま戻れば死にに行くようなものだ。女性は彼を止めた。下士官は言う。それではいけないと。罪は償わなくてはと。

 多くの人に見守られながら、彼は祖国へと帰っていく。女性に、必ず戻ると伝えながら。

 残った彼女は彼を待ちながら、人々を助けていった。見返りを求めることなく。

 その後誰とも結婚することもなく、彼女はやがて国の母と呼ばれるようになったとモノローグが語られた。

 どこか切なく、優しげなBGMとともにエンドロールが流れる。胸が苦しくなった。何故だろう。そうだ、私の状況と、どことなく似ているからかも知れない。

 もう会えないと知りながら、二人は離れていく。それはとても辛くて、悲しい。

 しいるは思わず宗吾の方を見やった。どこか放心しているように、スクリーンを見つめている。聖ちゃんは静かに、さめざめと泣いていた。

 そして監督の名前が出て、暗転。

 これで映画が終わった。


 そう思った。


 だが次の瞬間、スクリーンに大都市が、三十年後と書かれている映像が映し出される。

 年老いた男が船から降りると、彼はそのまま歩いていく。

 場面が変わり、どこかの農村らしき土地が映し出される。ここは、そう、あの特徴的な風景は、下士官と女性が別れた場所だ。

 そこに若さを喪った女性が一人、穏やかに佇んでいる。彼は彼女の名を呼んだ。まさしく女性の名前を。

 驚き、逡巡し、女性は答える。そう、下士官の名だ。

 二人は互いに歩み寄り、万感の思いを込めて抱きしめ合う。

 最後に、これは史実を元にした物語です、と。そう締めくくられて映画は終わりを告げた。



   ◇ ◇ ◇



 どうすべきかは、もう知っている。後はそれを実行に移すだけで良い。


 三人は映画館を出ると、無言のまま外まで歩いた。宗吾の手には食べかけのポップコーンが携えてある。以前とは違って、二人とも食べる気はないようだ。

 沈黙は当然のように三人の上にのしかかっている。最初に口を開いたのは宗吾だった。


「ごめん」


 彼は一言謝った。言いたいことは何となく判るとしいるは思う。


「あんな内容だとは思わなかったんだ。最後の最後ごめん」

「そんな事無かったよ。ちょっと重かったけれど」

「ああ、それに最後はハッピーエンドだっただろ」


 彼はそうじゃない、という表情をする。それに聖は気付いたようで、


「もしかして濡れ場のことを言ってんのか。確かにちょっと過激だったな」

「あ、あれは、うん、凄かった」


 きっと顔が朱くなっているんだろうとしいるは熱を持った頬を抑えた。


「ま、細かいことは気にすんな。あたしは良かったぜ。少なくとも金払っただけの価値があった」


 それは私もそう思う。何とも言えないけれど、胸が締め付けられるようだった。


「そうか。ならよかった」


 やがて彼も安心したように笑った。そう、これも大切な思い出なのだ。大切な人との恋愛映画は、やっぱりひと味も二味も違う。

 空を見上げれば、まっさらな青が橙色に染まりつつあった。

 別れの時は近い。

 何か言うべき事は無いのだろうか。

 しいる達はだらだらと喋りながら、噴水のある広場までやってきていた。


「あ、たこ焼き」


 宗吾はしいるの方を振り返った。


「食うか?」


 そんなに食い気が張っているように見えるだろうか。だとしたら少し恥ずかしい。けれど、買ってくれるというのならば。


「食べる」

「みんなで分けようぜ」


 それは賛成だった。八個入りだったので一人だけ二個になってしまうのだけれど、問答無用というか聖ちゃんがさっさと食べてしまいつられて私も――というように結果的に宗吾が二個になってしまったのだった。


「悪いな宗吾」

「ごちそうさま」

「ああ、気にすんないつもの事だ」


 やっぱり悪かっただろうか。最後の思い出がたこ焼き食べられなかったとか悲しすぎる。とは言っても本当に気にした様子もなかったのでそう言うものだと割り切っているのかも知らない。

 ごめんなさい、美味しかったです。

 それから聖と別れた後、ベンチに座ってぼーっとした。やるべきことはもうさほど残っていなかったし、今からどこかへ行くにしても時間が無い。夕日が沈むまでがタイムリミットだと、しいるは本能的に理解していた。

 伝えるなら、今しかないのだ。

 しいるは息を吸って、手に力を込めた。一人力強く頷くと、もう大丈夫だという気がした。


「宗吾」


 しいるは彼の方へと向き直る。


「なんだ」

「聞いて欲しいことがあるの。渡り人間のことで」


 宗吾はそれで真剣な表情となった。しいるはその顔を凛々しいと思う。私の話を真剣に聞いてくれる。十歳になって渡り人間になってから、これほど真剣に相手をして貰った事はなかった。渡り人間は一般的に未練を残さないというのだけれど、どうも今回ばかりはそうも行かないらしい。

 一呼吸。そして口を開く。


「渡り人間はね、世話をしてくれた人間に対してお礼をするの。それは受けた恩の量だけ変化する。私は宗吾にたくさん迷惑掛けたから、大体のことは叶えられるよ。何かお願いごとってあるかな」


 しいるは彼の瞳を覗き込んだ。黒く澄んだ目。安心できる目だ。


「いや、そんな急に言われてもな。これと言って思いつかないんだが」

「なんでもいいよ。あ、死者を生き返らせるとか世界征服とかは無理だけど」

「それ今時子供でも考えないだろ……。そうだな、じゃあ金くれ」

「即物過ぎだよ。でも残念、それは無理かな。現物なら可能なんだけど」

「そうか。んじゃ特にないな。また来たときにでもってのは駄目なのか」

「うーん。多分持ち越しって言うのは無理かな。そ、それより。また会ってくれるの?」

「ああ。問題ないぞ?」


 なんてことないように彼は言う。それがどれだけ難しいか、分かって言っているんだろうか。世界各地に渡るべき相手は、本人の了承なしに数多居る。彼の元へ辿り着けるのは、同じ日本であっても難しい。

 気付いていないのだろう。多分。話していないのだから当然とも言えるのだけれど。


「ねえ、宗吾。私、貴方の元へまた来られるか分からない。もしかしたら永遠に会えないかも知れない」


 そこで彼も気付いたようだった。


「来られないって……自分の意思じゃ出来ないのか」

「うん。前に宗吾が言ったとおり、渡り人間はタンポポの綿毛みたいなものだから。でも、確立を上げることは出来る」

「それは?」


 どうしよう。言うべきか、言わざるべきか。ここでごまかせば傷付くこともない。穏便に、思い出として残しておける。

 でも、気がついたら言葉が勝手に口から飛び出していた。


「タンポポの綿毛は、根付いたところで花を咲かせる。だから、私達もそう。番を見つけたら、そこで旅は終わるの。私は……私は宗吾が好き。本当は、もう離れたくない。でも、それは重いから。私はタンポポの綿毛のような軽い存在でいようと思う。でも、もし叶うなら。私は宗吾と一緒に生きていたい」


 沈黙だった。彼は衝撃を受け、深い思索に潜り込むように顔を伏せ、考え込んだ。

 突然の告白。さぞ驚いただろう。渡り人間の本質、どう捉えたのだろうか。

 しいるは彼を見つめながら、じっと待った。きっと日が沈むまで、あるいは星空が空を満たすまで待ったのかも知れない。

 だが、永遠にも思える、僅かな沈黙の後、彼は言った。


「俺は……まだ、決められない」


 しいるの泣きそうな顔で、しかしそれを堪えた。言葉にはまだ続きがあったからだ。


「今の俺では、返事は出来ない。付き合うとかならともかく、それ以上踏み込んだ話となると、気持ちだけじゃどうにもならないこともある。俺はまだ学生だ。子供なんだ。だから、安易に答えは出せない」

「……そっか」


 しいるは悲しみを押し込むように微笑んだ。


「宗吾は、ちゃんと考えてくれたんだよね。私のことが嫌いだからとかじゃ、ないんだよね?」

「ああ。嫌いなもんか。出逢いはかなりアレだったが……会えて良かった」

「そっか。そっかそっか。ふふふ、宗吾がデレた。良いもの見られたなー」

「あのなあ。……まあ、返事は保留って事でいいか?」

「うん。じゃあ次来るときまでってことで。これは絶対戻って来ないとね」

「ああ。ちゃんと戻って来いよ」

「ふふ、独占欲? 愛されちゃってるなあ私!」

「調子乗るなっての」

「えへへ」


 この時二人は本当に楽しそうに笑っていたんだと思う。それは決して別れの湿っぽさなんかじゃなくて。

 どこか暖かい、血の通った幸せの風だったんだと思う。


「宗吾」

「なんだ」

「ん」


 しいるはそっと目を閉じ口を突き出した。宗吾は頭を掻きながら、周囲を軽く見渡し人が居ないのを確認してから、優しく唇を重ねた。


「ん、んふふふ! これで宗吾に唾付けちゃったから! 他の人に目移りしないでね」

「はいはい……そっちもな」


 くすり、とどちらともなく漏らし、それから二人で合唱するように大きな声で笑い合った。

 夕日が沈んでいく。二人の顔を、照れと恥ずかしさを隠すように朱く染め上げていく。

 やがて、しいるは言った。


「じゃあ、私行くね。なるべく早く来られるようにするから」

「おう。俺もちゃんと迎えられるように準備しておくから」


 一陣の風が吹いた。春の暖気を纏った、気持ちの良い季節風。

 川獺しいるの身体が風に乗ってふわりと浮かんだ。

 綿毛のようにゆらゆらと、けれどそれよりも緩やかな速度でしいるは浮かび上がっていく。

 彼女は宗吾の背丈を追い越したくらいで、叫んだ。


「そうだ! 宗吾にあげるプレゼント。私と結婚する権利をあげるから! クーリングオフ禁止だからね-!」

「ありがたく貰い受けるよ! またな、しいる!」

「うん! またね、宗吾!」


 そしてしいるは徐々に上昇するスピードを増して行き、沈み行く夕日に溶けるように見えなくなった。


「またね、か」


 宗吾は空をもう一度見上げてから、彼女の無事を祈って、しっかりとした足取りで振り返ることなく帰路を歩んでいく。

 また再開する日を楽しみに待ちながら。

 川獺しいる(かわうそ しいる)……渡り人間

 しいる――Sealアザラシだったり。どっちにしろ水生生物。


 渡り人間

 天然記念物の川獺とか朱鷺とか。オオサンショウウオとか。

 普段はちゃらんぽらんだが本命の相手に出逢うとその性格は変質するという。

 渡り飛んで現地で良い種を見つけたらそこで益体もない言い方をすれば受精する。そしてその土地で育て十の齢に飛ぶ。

 一度子を産むと飛べなくなる。

 何故渡るのか……優れた相手に引き寄せられるためと言われている。

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