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チーム氷牙

「……」

 その背中を見送って、思う。

 さっきは変わってないと感じたけれど、変わったところは多くある。髪の色や外見といった装飾品はどうでもいい。そんなところが変わったっていろははいろは、そう割り切ることができる。

 でも、瀬名の話をしても意にも介さずそのまま去ってしまうところや冗談でも万引きするとか言うところは変わったと思う。いつもニコニコしていて、誰に対しても優しく、明るかったいろははもういない。

「どうにか、してやりたいんだがな……」

 会う度にそう思う。

 けれど、そう簡単なことじゃないのも分かっている。

 いろはがグレた理由は父親の死だ。家族の死という問題は、不用意に立ち入って良いものではない。それがいくら家族ぐるみで付き合いのあった幼馴染であっても、だ。どうして父親の死がグレたことに繋がったのか、その辺りが少しでも分かれば違うのかもしれないけれどそこは分からない。一度、いろはの家を訪ねて母親に事情を訊いてみたのだけど現在、まるでコミュニケーションを取っていないそうだ。

「ふむ。では、私は帰らせてもらうぞ?」

「どうわ!」

 不意に背後から声をかけられて飛び上がる。

「黒鳥さん? さっき連れて行かれたはずじゃ……?」

「うん? 見てたのか? まあ、まだ中学生だしな。今後二度としません、すみませんでしたと謝れば案外どうにかなるものだよ」

 世間一般から見たら面倒くさいことこの上ないだろうな。この女子中学生。

「で、いろはちゃんとの会合は済んだのだろう?」

「ああ、それは終わりましたけど」

「では、さらばだっ!」

「待てい」

 しゅたっと手を挙げてダッシュで去ろうとする黒鳥の襟をがっしり掴む。

「ぐふぉ! 健全極まりない女子中学生の襟を引っ張るとはなんたる所業! ボタンが外れてブラが見えたらどうするつもりだっ!」

「その台詞を口にしてる時点で健全じゃねえよ」

 ばっさりと切り捨ててから、引き止めた理由を言う。

「さっきいろはが言ってたんだが、チーム氷牙って、結構ヤバイ系の人とかもいるのか?」

 質問すると、ふざけた調子を消して、黒鳥は答える。

 目を泳がせて、できれば言いたくないということを表現している。

「ああ、そういうことか。……そうだな、結構どころか相当ヤバイやつらがいるぞ。私じゃないが、女子中学生だっていうのに身体で金銭のやりとりをしてるようなヤツとかも仲間にいるらしい。万引きの常習犯だっているし、怪しい薬に手を出してるような人間もいると聞いたな」

「……」

 絶句。

 結構ヤバイどころじゃない。いろはみたいな、ちょっと反抗期に入ってるだけのような人間がそんな中の中心にいて大丈夫なのだろうか。

「うん、君も今思っただろうが、はっきり言っていろはちゃんなんかにリーダーが務まるような集団じゃなくなってる。最初はそうでもなかったんだがな。ちょっと髪を染めて、適当に夜遊びをしてるような人を集めてグループ作ってただけらしい。だけど、もともとここらにはそういうグループみたいのがなかったからか、どんどんそういうヤバイやつが集まり始めた。昨日も言ったけど、いろはちゃんがリーダーだと知った時は本当に驚いたよ」

「……」

 舐めていた。

 いろはは昔からぶっとんだことを言っていても根っこの部分では善悪の区別はしっかりつけてるやつだった。だから、いろはが起こしたチームだと聞いて、必要以上の警戒心は持っていなかった。

 でも、今の話を聞く限り、いろはの言う通りだ。


『あたしと関わってるといつか、絶対痛い目みるぜ?』


 友達に会うような感覚でいろはに接触していたら、本当にいつか、痛い目をみるかもしれない。


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