独立、というより
金づちで頭を叩かれたような気がした。
こう、ズガンと一発良い感じの打撃をもらった。
「私を誰だと思ってる? まさかなんの調べもなく、君たちに接触したと思ってはいないだろうな? 生徒会室で君たち二人が関わっていると思われる生徒間抗争の数を挙げたが、調べたことはそれだけではない。私を中心に、ほんの三日間くらいだが君たちを監視させてもらっていた」
「それ、犯罪じゃないですか?」
「まあ、そう言うな。人を助けるためだ」
「人を助けるためという理由があってもそれは完全にプライバシーの侵害です」
「なら、訴訟でもなんでもすればいい。とにかく話を聞け」
滅茶苦茶だった。
「で、だ。その三日間の間にも君たちは何度かからかわれていた。しかし、そこで私は不思議に思うことがあったんだ」
「それはなんですか?」
「君たちは、いざとなれば相手を追い返す力もあるし、会話を聞いている限り、確固たる意志もある。なのに、どうしてか相手を説得しようとせず、ただ追い返すだけに留めていたんだ」
「……」
「いや、正確に言うと説得しようとはしてるんだな。脅迫まがいのことをする前は言葉でどうにかしようとしている。でも、それで終わってるんだ。無理だと思えばすぐに諦めるし、怒りが頂点まで達するとそれをそのまま相手にぶつけている。否定する気はないけれど、違和感を感じざるを得なかったな」
そう。その通りだ。
駿平もいろはも、理解して欲しいだけで、理解しろとは言わないし、思ってもいない。相手に理解する気がないと分かった時点、もしくは自分たちの我慢が限界を超えたときはそんな気持ちは無視している。
「だから、私はどう動くべきか迷ったんだ。駿平君の方にも多少問題があったようだが、入学して数週間で一年生の全クラスに行き渡るほどの悪い噂、陰口、面と向かって放たれる暴言。これらをどう払拭すればいいのか、私も分からなくてな」
「……そこへ来たのが黒花だった、ということですね」
「うむ。以前より頭の回転が速くなったようでなによりだ。前島少年」
それは言わなくていい台詞だ。
「駿平君といろはさんは二人で独立していた。……否、独立、というより完結だな。なにをするにしても二人なら大丈夫とお互いが思っているような雰囲気があった。私や、他の役員が監視をしていた中で駿平君やいろはさんが他のクラスメイトと喋っている姿というのはほとんどなかったからな」
「……」
「私はその完結の仕方は見事だと思ったし、それ故に手出しできないと感じた。二人で完結してしまっている駿平君たちは、その間に誰かが入っても無理だと思えばすぐ諦めてしまうからだ」
そんなつもりは毛ほどもなかった。誰かが友達になりたいと申し出てくれれば、喜んで仲間になっただろうし、近付いてくる者がいれば拒むつもりはない。
それでも、
「そんな風に見られてたんですか?」
「うん。君たちの団結力はモノが違う。例えば、昨日の男子生徒を追い払ったあの連携。示し合わせていたのかなんなのかは知らないけど、言葉を交わさず、相手の挙動だけで互いの動きを確認するなど普通は不可能だ。それから、昨日、黒花が現れた時、手を繋いでいたね? あれも、その一例に挙げられないか? 実は君たちがグループホームを出た辺りからずっと見ていたのだが――」
尾行してたんですか。
「――君たちは躊躇することなく、自然に手を繋いでたよね? 例えば、黒花が登場した際に弾みで抱きついてしまったとか、そういうことならあっても良い。だけど、二人の場合は違う。そうだろう?」
「いや、でもあれはいろはがすごく恐がってたからじゃ?」
「そうかな? あの、男子生徒を追い払うだけの力と、おそらく高いプライドがあるいろはさんが恐いという理由だけであんな簡単に男子の手を握るか?」
「……」
言葉に詰まる。
言われてみれば、そうかもしれない。
「そんなわけで、私は君たちの問題に気付きながらもずっと動けなかったんだ」
助けようとしてくれる人でさえ、躊躇してしまうような強固な関係。それが、駿平といろはの間にはあったとルイは言う。




