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たとえ記憶が消えたって  作者: 彩坂初雪
黒花攻略作戦!
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やだ

     ◆



 翌日、早速駿平たちは行動を開始する。

 この日を逃すとゴールデンウィークに突入してしまうため、黒花との接触が困難になる。いくらルイの家にいても、まだ知り合って間もない駿平やいろはが外へ連れ出すわけにもいかない。ルイに頼めば家へ行くことくらいはできるだろうが、やはり校内の方が気軽に話しかけられる。

「黒花、今日の放課後、なにか予定あるか?」

 それしか服がないのか、真っ黒のワンピース姿で登校してきた黒花に早速アタックする。

「ない」

 早朝だからか、眼が半分開いてない。

 無表情で棒読みなのは相変わらずだが、いつにもまして無愛想な回答だった。

「そっか。もし良かったら、今日、残ってくれない?」

「やだ」

 単刀直入な返答だった。

 見事に拒絶された。

「ええと? それはどうして?」

「さあ」

「……」

 殴ってやろうかと思ったが、ギリギリで堪える。

「さあって、黒花のことでしょ?」

「駿平の命題ね」

 断じて、駿平の命題ではない。黒花の命題だ。

「強制ではないんだけど、黒花に――」

「残らないわ」

 用件くらい言わせてください。

「ひょっとして、ご機嫌ななめ?」

「そう」

「なんかあった?」

「昨日、ルイにいじめられた」

「なんで?」

「あたしがマンホールに入ったから」

 それは誰だって怒るでしょうよ。

 昨晩、ルイは適当に流していたが、内心驚いていたのだろう。

 帰ってから、黒花に入るなと怒ったに違いない。マンホールの中は非常に危険だ。なんの知識もなく、遊び半分で入って良いものじゃない。

 というか、本当に今更だが、何事もなかったかのように出てきた黒花の身体は一体どういう構造になっているのだろうか。たまにマンホール内で作業をしていた人が亡くなったというニュースが流れるのだが。なんの準備も、なんの装備もしていなかった黒花がよく無事に出てこられたものだ。

「もしかして、黒花って病気になったことがなかったりする?」

「そうね」

「毒キノコとか食べても大丈夫だったり?」

「紫色のキノコを食べて平気だったことならあるわ」

「あと、すごく力持ちだったり?」

「握力は七十キロくらいよ」

「百メートル走は?」

「十一秒」

「水泳とかは?」

「八キロ泳いだことがあるわ」

 驚愕の事実。

 黒花はとんでもない身体的機能を備えた人間だった。

「じゃなくて。話を戻すよ。ちょっと知ってもらいたいことがあるんだけど、今日の放課後、図書室に来れないかな?」

 ようやく、用件を言うことができた。

「来れないわ」

「どうして?」

「さあ」

「……」

 本気で殴ってやろうかと思った。

「そう言わずに、な?」

「駿平」

「なんでしょう?」

「朝から女の子をナンパしないで」

「……」

 荷物だけ自分の席にどさりと下ろすと黒花は教室を出ていってしまう。

「……タイミングが悪かったかな」

 普段の黒花なら、なんでもない顔で「いいわ」と言いそうだったのだけど。

「ま、機会はまだあるさ」

 駿平は席に座りなおして、教科書を開く。

 今日は一限から小テストがある。ちょっとくらいは勉強しておかなければなるまい。

「いろはも、忙しそうだしな」

 なんでも、ゴールデンウィーク前後にはテストがあるらしいのだ。

いろはは「大丈夫だよ」と笑っていたが、こうしてこちらのクラスへ来ないところをみるとそうでもないのだろう。選抜クラスのテストは難易度が滅茶苦茶高いという話を以前聞いたことがある。

「昼休みは会えると良いんだけど……」

 ふうと肺に溜まっていた空気を押し出して、教科書に視線を落とした。


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