そういうことだ☆
「どういうことですか?」
その態度が勘に触ったのか、いろははより一層キツく問いただす。
そんないろはに少しばつの悪そうな表情をして、ルイは「君たち二人には申し訳ないんだが」と切り出す。
「私は生徒会長云々の前に自分が気に入った人間しか手助けしないことにしているんだよ。生徒会長として、というのは使い勝手が良いからよく口に出してるが、あんなもの口実に過ぎない」
いまいち、要領を得ない説明だった。
どういうことだろうか。
「私の功績がいろいろなところで評価されているようだが、生徒会役員からは結構嫌われていてな。一応、会長の私の指示には従ってくれているものの、心の中ではうざったく思ってるだろうな」
「はっきり言って下さい。どういうことですか?」
いろはの追求に、ルイは少し考える素振りを見せ、そして言った。
「助ける前に、相手のことを試している、と言えば分かるか?」
「は?」
「え?」
駿平といろはは二人揃って呆けた声を出す。
「さっきも話したように、私は自分の気に入った人間しか助けないんだよ。だから、それぞれの問題にあった質問や演技で相手を試しているってわけだよ。そうすることで相手のことを理解する」
言い訳するみたいに、ルイはぺらぺらと喋り続ける。
駿平といろははポカンとしたまま硬直。
「その後、自分の気に入る相手かどうかを判断して、実際に助けるかどうかを決めてると。そういうわけだ。つまり、端的に言うと、君たちは私に気に入られてるわけだ」
最後に「やったね」と他人事みたいに付け足す。
駿平といろはは二人でこめかみを押さえ、
「要約すると」
「つまり」
「「生徒会室のあれは演技だったと?」」
一字一句同じ問いを発していた。
「そういうことだ☆」
似合いもしないのにウインクまでしてくる。
ルイはルイなりに申し訳ないと感じているのだろう。若干キャラが崩れている。
「ただ、駿平君やいろはさんが思っている通り、私は制度や法律に関することを多く知っているだけで実際に高齢者と関わったことはほとんどない。父が県議会議員をしている関係でそういう分野の知識があるだけでな。だから、正直なところあそこまで反発されるとは思ってなかった。駿平君たちがあれ以上なにも言わずに出て行ってくれて、内心ではほっとしていたしな」
なるほど。
だとすると、駿平が感じたことはそのまま当たっていたようだ。ルイは高齢者の方々とあまり関わったことがないからこそ、こんなに偉そうに、ずけずけとモノを言えるのだ。それが悪いわけではないし、むしろ生徒会長として皆の前に立たなければならない以上、こういう喋り方のほうが様になるだろう。
「いろいろ、誤解があったようで、申し訳なかったです」
いろはは呆れ半分という様子で謝罪する。
しかし、すぐに眼光鋭くしてさらなる質問をくりだす。
「ですが、もう一つの方の質問にも答えてください。生徒会室で言っていた目的というのは本当にそのまま受け取って良いのですか?」
それに対しては、即答だった。
「ああ。あれは本当だよ。君たちの問題をどうにかしたいと思っているのは事実だ。駿平君の言うように、福祉の問題っていうのは、どこかで誰かが正していかないといけないからな。父もよく愚痴を言ってるが、公的な機関だけでなく市民の方も動いていかないと直せないと思っている。私はその一人になりたい。だから、是非とも君たちの問題を解決させたいと思うんだよ」
もう見慣れてきたが、ルイはまたニヤリと笑う。
わだかまりが消えてしまえば、その笑みは心強いものだった。
「分かりました。いろいろ、疑ってしまってすみませんでした」
「いやいや、こっちも勉強させてもらったよ。いろはさんのようにちゃんと意見してくれる人が周りには少なくてね。私の方こそちょっと強引だったよ。申し訳ない」
意外と言えば意外なことに、ルイは頭を下げた。
いろはは恐縮してしまって「やめてください」と慌てて止めているが、駿平はそれでようやく納得できた。
ルイがまがりなりにも生徒会長を務められているのは、大切な部分で身の程をわきまえているからだろう。先ほど、生徒会役員に嫌われているとルイは発言していたが、案外そうではないのかもしれない。それは表面上で、裏では「また始まったよ」くらいの軽い気持ちで受け止めている可能性もある。そうでなければ、協力などしないだろう。
「さて、随分遠回りをしたが、黒花攻略作戦の詳しい内容を説明しよう」
「はい」
「お願いします」
黒花攻略作戦という名前についてはもう置いておこう。今は、内容の方が気にかかる。
ルイが本気であることは理解できた。それなら、妙な作戦ではないはずだ。きっと、駿平たちの問題をどうにかできる秘策であるに違いない。
「いいか、まず最初にだな――」
こうして、ルイが指揮する黒花攻略作戦が始動した。




