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たとえ記憶が消えたって  作者: 彩坂初雪
種を植える作業をしている人
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     ◆



 黒花にだって、自我はあるし、感情もある。

 駿平やルイは勘違いをしているかもしれないが、黒花だって人間なのだ。

 怒ることだって、悲しむことだって、笑うことだってある。ただそれが表面に出にくいというだけで。

 だから、黒花は今――



 すごく、もやもやしていた。



 駿平たちが屋上でなにかしている間、黒花は教務室へ行っていた。忘れていたのだが、転入の手続きでまだ終わっていないことがあったのだ。

 駿平たちになにがあったのかは知らないし、ルイといつの間に知り合ったのかも分からない。

「……」

 空を見上げると、綺麗な星空がそこにあった。

 これほど光輝く星たちはここに来て、初めて見た。

 黒花は、帰宅途中、男子生徒二名に遭遇した。遭遇した、という言い方は少しおかしいかもしれない。彼らに一方的に絡まれたのだ。話を聞くと、どうも駿平たちをよく思っていないようだった。黒花はこれでも駿平やルイを信頼している。駿平に対しては、信頼以上のなにかを感じてすらいる。

 一度は、駿平たちの悪口を言う彼らから逃げようとした。

「頭がおかしくなる……?」

 彼らがしきりに使っていた言葉を思い出す。

 彼らは認知症について、知識を持っているようだった。黒花は駿平にグループホームには行かないと言いつつも、多少は興味を持っていたので彼らの言葉に耳を傾けた。

「頭がおかしくなる……」

 もう一度、呟く。

 彼らの見解は駿平とはまるで違ったように思えた。グループホームの屋上で、駿平には「誰もがなる可能性があって、誰もが関わる可能性がある。なりたくてなった人はいないし、誰も望んでそうなったわけじゃない。だから、変ではない」そう言っていた。

 彼らは「認知症は頭がおかしくなるもので、俺らにはまったく関係ない。駿平みたいな特殊な人間だけが関わっていればいい。お前もあんなやつと一緒にいると変な考え方を押し付けられるぞ」そう言っていた。

 黒花は、駿平を探した。

 駿平の意見を聞きたかった。

 彼らの言っていることは本当なのか、それともやっぱり駿平の言っていることが本当なのか。



 ――なのに、聞けなかった。



 ルイが邪魔をしたとは思わない。

 きっと、ルイだって大切な用事があったのだろう。

 自分ばかりが駿平を取るわけにはいかない。

「頭が、おかしくなる……?」

 もやもやする。

 黒花は、ほうっと冷えてきた手に息を吹きかけて、家へと帰る……


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