幹部会と行こう
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娘がナイフで刺されたということで一度は抜けた康弘だったが、どうやら母親の方が付きっ切りで黒鳥についているらしく、すぐに戻ってきた。
康弘は当初、いろはを含め、チーム氷牙を嫌な目つきで見ていたが、駿平の説得と、メンバーの全力で捜索に当たっている姿勢から許してくれていた。
「八時、か」
ところが、どれだけ探し回っても、瀬名の姿は発見できなかった。
チーム氷牙の増援を加えると総勢五十人近い人数が出ているはずなのに、どうしても見つからないのだ。
「駿平、瀬名の行きそうなところは他にないのか?」
「行きそうなところは全部もう回ってるよ」
つい先ほど、俊也も合流し、駿平と車で捜索に当たっていた。
康弘に言われた約束の時間が近付いている。そろそろ、集合の連絡が届くだろう。
「ん?」
と、思ったまさにそのタイミングで康弘から連絡が入る。
互いに連絡を取り合い、グループホームへ一旦集合するように、という指示だった。
「戻るぞ」
「うん」
いろはにグループホームへ集まるようメールを出して、二人は道を引き返す。
「目撃情報が途絶えてきてるな」
「だね。どこ行ったんだろ」
施設までの三十分間、車内で俊也と作戦会議。
六時前後まではバラバラな位置とはいえ、いろいろなところで目撃情報があった。康弘からの定期連絡で情報がきていた。しかし、それを過ぎてから、ぱったりとなくなったのだ。
「……よし、着いたぞ」
施設に到着し、事務室へと向かう。
「ああ、来られましたね」
「遅くなってしまいましたか?」
「いえいえ。大丈夫ですよ」
二人が到着すると、捜索に参加していた人間全員が集結していた。
集まってみると、五十人以上は確実にいた。中には警察の方や、仕事を中断して捜していたと思われる八百屋のおっちゃん。それに、商店街で出会ったケーキ屋のお姉さんもいた。
それから、十数分、情報の確認作業が行われた。
地図に目撃情報があった場所が書き込まれるが、やはりてんでバラバラ。統一性などなにもない。
「あれ? 康弘さん、その印はなんですか?」
駿平も最初に足を運んだ、瀬名がよく通っていたスーパーに二重丸の印があった。そこだけやけに強調されている。
「ああ、これは大したことじゃないよ。目撃情報と特に変わりはない。ただ、スーパーのレジ打ちをしていた方が瀬名さんによく似た人を見たと言っていてね。なにを買ったのかまでは分からないのだけど、とにかくここでなにかを買っているらしいんだ」
「なにかを、ってなんですか?」
「それは分からないよ。なにしろ何十、何百と相手にしている方々だからね。覚えてもらっていただけでも良しとしないと」
それはそうだ。
なにを買ったのかは気になるが、そこまで覚えていろというのは無茶だろう。
「他に、なにか情報をお持ちの方はいらっしゃいますか?」
それから、康弘を中心に、互いの情報が交換される。
人数が少なくなるということで、駿平も瀬名がよく訪れていた場所等の情報を提供し、できるだけ効率よく探せるように配慮した。
「では、残られる方は引き続きよろしくお願いします。帰られる方は、こんな遅くまで本当にありがとうございました。見つかり次第、なんらかの方法で連絡させていただきます」
康弘のその言葉で解散となり、学校の教師や、グループホームの職員さん、それに商店街の皆さんは帰っていく。
「いろはたちはいいのか?」
チーム氷牙の面々に聞くと、
「まあ、あたしたちは不良やってますんで。今更帰りが遅いとかで親になにか言われたりしないよ。今日を過ぎたらそれはやめようと思うけどね」
と、笑顔で返してくれる。
黒鳥がいない穴はこうして、いろはたちが参加してくれていることで十分に埋められている。頼もしい限りだ。
「駿平君」
呼ばれて振り向くと、康弘がこっちへ来いと事務所の奥の方へ手招きしている。
「ああ、それから、そこの……いろはさん、だったかな? 一緒に来てくれ」
いろはと顔を見合わせ、なんだろうと思いつつ奥の方へ。
奥には康弘と俊也がいた。
「グループホームの職員代表と、瀬名さんを知っているご家族の方、そして現在一番多くのメンバーを抱えているいろはさんで幹部会と行こう。もう暗くなっているし、ここからは闇雲に探したところでとても見つかるものじゃない」
康弘はそう言って、つい先ほど広げられていた地図を机の上に置く。




