気になる情報
黒鳥の話によると、いろははチーム氷牙の解散を宣言したらしい。
詳しい経緯は分からないが、おそらく、瀬名のことが絡んでいるのだろうとなんとなく思った。
不良たちの生きる世界がどういうものなのか、駿平にはよく分からないが、チームからただ抜けるということはなかなか難しいらしい。特に、いろはのようなリーダーとして活動していた者は尚更その傾向が強いという。チーム氷牙には犯罪を犯している者が多数いると聞いた。いろはは警察にそいつらを売るだとか、そんなことはしないだろうけど、それを考えて引き止める者は多くいるだろう。
だからこその、解散宣言だ。
抜けるのではなく解散ならば、綺麗さっぱり、なにも残らず元の生活に戻ることができる。解散という形を取ってしまえば、チームがどうとか、そういう心配事はなくなる。少なくとも、犯罪を犯していない者たちにとっては良策となる。
「解散というのはあまりにも危険すぎる」
だけど、黒鳥はそう言った。
今まで、まがりなりにもリーダーとして君臨していたからこそ危害が加えられることのなかったいろはだが、チーム内ではかなり序列がはっきりしていたらしい。パシリのような人間がヘマをすれば当然のように暴力が振るわれていたとか。
そうなると、リーダーという役職を捨てたいろははどうなるだろうか。そんな腰抜けに用はないとメンバーに暴力を振るわれることも十分あり得る。リーダーが解散宣言をしたところで、他のメンバーたちのまとまりが強ければ、意味などないのだ。
「今、映像を見る限り、メンバーが半分ずつに分かれて対立してるみたいだ」
どこからそんな映像を撮っているのか、いつものように謎だったが、黒鳥は電話越しにはっきりと口にした。
初期からいる、犯罪等には手を出さず、あくまで単なる不良グループとして集まっただけのメンバーと、途中から加わった気性の荒い者たちのグループ。前者が解散を支持するいろは側、もう一方が反対派らしい。
「君はお姉さんを探すことを優先しろ。いろはちゃんの方は私がなんとかする。平和的になるかどうかは分からんが、いろはちゃんが傷つかないことを第一に、どうにかしてみせる」
黒鳥はそれだけ言って電話を切った。
「……」
校外へ出て、瀬名を捜索している間も、気が気ででなかった。
どちらを優先するかと言われれば、やはり瀬名を取る。でも、いろはと黒鳥。家族といっても差し支えない二人が、今まさに暴力を振るわれているかもしれないと思うと、なにもできない自分が情けなかった。
「……ん?」
もやもやした気持ちを抱えながら、三十分ほど辺りを探しているとポケットの携帯から着信を知らせるメロディが響く。
相手は、康弘。
もしやと思って電話に出る。
「もしもし?」
《駿平君か?》
「はい」
《残念ながらまだ瀬名さんを発見できていないが、いくつか気になる情報を得た。君にも伝えておく》
「気になる情報?」
不思議に思って聞くと、
《駿平君の家を中心に、周りの家に聞き込みを行っているんだが、近くで何件か目撃情報が確認されている》
康弘はそう言った。
《ただ、その目撃情報がてんでバラバラな位置から聞かれているんだ。やはり、瀬名さんは家がどこにあるのか分からなくなっているらしい》
「それって、どのくらいの範囲ですか?」
《だいたい、半径四キロから五キロ圏内だ》
広すぎる。一体どこをどう歩き回っているのだろうか。
《それから、お父上の俊也さんだが、こちらへ戻られるそうだ》
心強い援軍だった。
もちろん、俊也が戻る前に見つかればそれが一番良いのだけれど、今、一緒に探してくれている人たちは明日だって普通に仕事があるのだ。捜索が長引けば打ち切らざるを得ない人もいるだろう。
「分かりました。俺はこのまま、心当たりを探せばいいですか?」
《ああ。そうしてくれ。一応、こちらの事務室には駿平君も捜索に加わっていることは話してある。もし休みたくなったら遠慮なく寄っていい。もちろん、大浦家も使ってくれて構わないよ》
「ありがとうございます」
ピっと通話を切る。
「……どこ行ったのかな?」




