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たとえ記憶が消えたって  作者: 彩坂初雪
お姉ちゃん、黒鳥
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そういえば、黒鳥さん

 決意を込めて言うと、黒鳥はニヤリと笑う。

「今回の件でわざわざメンバーに会う必要なく、いろはちゃんと話せることが判明したからな。それはいつでもやればいいさ。その後のことは、いろはちゃんの反応を見てからでいいだろう」

 黒鳥のその言葉で、真面目な空気が弛緩する。

 黒鳥はよっとイスから立ち上がると一言。

「じゃ、脱ぐか」

「脱がせねえよ!?」

 油断も隙もあったもんじゃない。

「それは冗談だとして」

「冗談でもやめてください」

 駿平が呆れていると、黒鳥がポツリ。

「さっきから、何故にですます調?」

「……」

「今の脱がせねえよ以外、ずっと敬語だったよね? 別に構わないけれど、どうした?」

 気付かれていたか。

 今までも、敬語を使ってなかったわけではないが、ここまで一貫して敬語だと違和感があるか。

「ん?」

 黒鳥が不思議そうに顔を近づけてくるが、

「……」

 沈黙を守る。

 『さっきの、抱きしめてもらった件のせいで、黒鳥を意識してしまい、なんとなく敬語になってるんです』とは言えなかった。

 なので、

「そういえば、黒鳥さん」

「なんだ?」



「さっき抱きしめてもらった時に思ったんですが、黒鳥さんて、すっごく良い匂いするんですね!」



 反撃に出てみた。

 普段から脱ぐだの全裸になるだの言ってる人間には効果が薄いかもしれないが。



「うぇ?」



 ん?



「いいいいや! そんなことはっ! ないと思うぞ?」



 予想の斜め上をいく反応キタコレ。

 顔を真っ赤にしてあわわと取り乱している。

「黒鳥さん?」

「ななななんだ?」

 必死に取り繕おうとしているのだけれど、それが上手くいっていないという感じだろうか。とにかく、すごいレア映像を見ている気がする。

 ということで、



「なんというか、黒鳥さんも、やはり女の子ですよね! 甘くて良い香りがしましたよ。あ、そういえばこの部屋に入った時、良い匂いがするなと思ったんですが、あれって――」



「それ以上言うなああああああああぁーーーーーーーーーーーー!」

 ちょっと苛めてみました。

「うぅ……。そんなことはない。私から良い匂いがするなどと……うぅ」

 しまいにはベッドに頭から突っ込み、毛布を被ってしまう。

 いつもの黒鳥と違いすぎるが、これはこれで……。

「黒鳥さん」

「話しかけるな!」

「いや、あの、でも、一つだけいいですか?」

「……」



「こういう黒鳥さんって、可愛いですねっ!」



「……はぅ」

 はぅとか言ったよ。

 あの黒鳥が、はぅとか言ったよ。

 大人みたいな言動で振る舞い、凛とした姿が印象に残っているけど、やはり黒鳥もまだ女の子。冗談……ではないけれど、こういうことに対する耐性はついていないのだろう。

 もだえる黒鳥をじっくり鑑賞していると、毛布の中からもごもごとした声が聞こえる。

「駿平君」

「なんですか?」

「これ以上は、勘弁してくれ。恥ずかしくて死んでしまう……」

 そんな声で言われたら男としてはもっといじりたくなるけど、さすがにやめておこう。

 黒鳥のことだ。下手するとこの後お返しになにかあるかもしれない。

「分かりました。では、そうやって恥ずかしがってる黒鳥さんを眺めることでやめにします」

「……死にたい」

「あれ?」

 そんなつもりはなかったけれど、追い討ちをかけたか。



 この後、黒鳥が復活するまで三十分ほどかかった。

 それから、言うまでもなく、お返しにと知られていないはずの、過去のはずかしエピソードを暴露されまくった。


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