第一問:高校生活をはじめなければならない。(1)
桜舞うこの季節。煌びやかな女子が花柄を身にまとい、蝶の様にヒラリと美しく蜂のようにブスッとイケメンを刺そうともがくこの季節。
春です。
私の周りにも舞っておりますよ、夢一杯膨らませて真新しいセーラー服に身を包み朗らかに笑い合う彼女達が。あぁ、美しい美しい。
その中で同じ衣に身を包みながらも影を落とす芋虫は私です。どうもすみません。
芋虫は芋虫らしく踏まれないように生きるべきですね。ということで私こと有明梅はただちに巣に戻り暗く楽しく過ごしていきます。ではみなさんお元気で、さようなら――…
「待てやコラ」
ガシッ。
―あぁ、現実。
「…。お願いだから逃がして……智ちゃん…」
「姉が入学式逃亡、ひいては不登校なんてことになったら俺の体面が傷付く。よって却下だ」
「体面って…」
中学生が言うセリフか。
「親父の頼みとはいえ荷物持ちしてやってるだけありがたいと思え。むしろ敬え。」
智ちゃんが両手に軽々と抱えているのは私のこれからの生活用品。
…確かに私じゃ一歩も動けなかったんだけどね…。
入学式なのに生活用品しょっててるのは自宅から遠い高校ゆえの寮生活の為だ。そして事前準備を現実逃避で避け続け何一つ郵送しなかった結果でもある。
あれ、敬うべきなのかな?
「智様ぁ……帰りたい……胃が痛い…」
「はいはいはいはい」
私の意見など歯牙にもかけず腕を掴まれズルズル引きづられていく。
そうですか、私も荷物に入ってるってわけですか。
うぅううう、入口の門が見えてきた。晴れて高校生活が始まるという記念すべき門に相応しく、レンガ作りで鉄柵がはめ込まれた重厚な風格あるつくりをしている。奥に静かに佇む洋館はこれまた年代物のようで、明治時代の洋館風のデザイン。中学の教科書に載っていた鹿鳴館にちょっと似ている。服装規定が厳しいのが納得だ。この雰囲気にルーズソックスのコギャルが闊歩していたら誰でも髪色もどしスプレーを噴射してルーズソックスをルーズじゃないソックスになるまで引き上げたくなるよ、うん。
普段なら鑑賞に値するところだが、晴れどころか暗雲しか立ちこめていない私の脳内では牢獄の入口にしか見えない。
「…自分で、決めたんだろ?」
ポツリと智ちゃんが呟く。
「…。…うん」
…そう、決めたんだ。
前を向こうって。ちょっとずつでも進んでいこうって。ちゃんと勉強して、…人と、関わって。
怖いけど、イヤだけど。約束したから。
あの子との約束だけは、破りたくないから。
「うん」
キッと前を向いて門に向かって歩き始める。
智ちゃんのフンっと鼻を鳴らす音が背後で聞こえた。
そして、私は駆け出した。
…後ろに。
「やっぱりムリ~~~~!!!」
明日から、明日から頑張るから!!きっと、いや、多分。いつか。
「とっとと行かんかぁ!!!」
尻込みしまくりました私を智ちゃんは思いっきり一本背負で投げ飛ばし、軽々と入り口を(飛び…っていうか飛ばされ)越えることが出来ました。ありがとうございます。
うらぎりものぉぉぉ(最初から味方ではかけらもなかった)!。実家帰ったら覚えてろよ!!シャー芯全部1cm感覚に折ってやるんだからぁぁぁぁあ!!!
初めて投稿です。どきどきです。読んで頂いてありがとうございました!!不定期ですが頑張って更新していきたいと思います。