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女神である私の職業は、死んだ者達を様々な分野の異世界へ導く仕事です。  作者: 推尊 奉琉


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1話「三度目の死を迎えたヒョロガリ剣士を送ります」

「ガチャ。ギィィィ」


目の前にある青色の大きな扉が開いた。

扉が開くのが、女神という職業の業務開始の合図である。

現在時刻は約九時である。ここから一時間三十分ごとに扉が開いて死人が訪れる。

今回、朝一で訪れる最初の死者だ。


「あ!扉が開いたわ!今日も仕事が始まるって事ね。気合いを入れないと!!」


今まで、机に肩肘をつきながら、ダルそうにペンを回していた女神メリアは、羽織っていた赤と黒色の装飾で彩られた羽衣の衿を正し、気合いを入れ直す。

今日も今日とて、死した者達がこの天界を訪れるのだ。

扉が開くと、死した者が千鳥足でこちらに歩み寄ってくる。


「え!?あ…あなた、また死んだの!?」


女神メリアはまさかの事に驚き、机を叩いて身を乗り出す。

それもそのはず、朝一でこの天界に訪れたのは、今回で三度目の死を迎えた上に、異世界に転移してから四日ほどしか立たないのに死した、どこか抜けた所しかない見慣れたひょろひょろな男剣士・ライだったのだから。


「はははっ!!また死んじゃいました!!あれ~なんでかな~?参っちゃうなぁ~?」


頭に手を当てながらとぼけたアホ面でそう言ってくる。

内心は今すぐにでも殴ってやりたい。

だが、職業柄。そんな事をしてしまったクビになりかねないので気持ちグッと抑え込み、握っていた拳を緩めて作り笑いをしながら優しく微笑む。


「あははっ!!そうなんですね~!大丈夫でしたか?大変だったでしょうに!!」


私が投げ掛けられる精一杯の言葉だった。

手元の資料に目を通すと、死因はゴブリンに殴り殺されたという感じだった。

ゴブリンといえば、私が送った異世界では、難易度が2である事もあり、弱い部類に称されるモンスターである。

なのに、この殺され方は。と呆れる。


「今度は、ゴブリンで死亡ですか。一体どんな感じだったんですか?」


こいつの死に方には、一ミリも興味はないが、業務上、今後に活かすためにも質問する。


「え~?状況ですか?すみません!覚えてないっす!あはははは」


見た目どおりの反応だった。

やっぱりこいつに聞くのは、間違いだったと後悔する。

一回目は、難易度三の異世界を。二回目は難易度四の異世界を選んだのに死んでしまうので。次こそはと思い、難易度二の世界に転生させた。

ある程度その人に合った難易度の異世界を選んだつもりなのだが、こいつは三度目の死を迎え、それに相変わらず何も変わっていなかった。


「次はどこの分野の異世界に転生したいとかありますか?」


今すぐにでもこいつを切り捨ててやりたいところだが、仕事であるため気持ちを切り替えて、次は相手の希望を聞くことにした。

そんな私の仕事は、死した者達を前世の行いや本人の想いや願いを元にラブコメやギャグ、バトル等々の様々なジャンルの異世界に導き、それに加えて時には配役の決定やスキルの付与などをして、導いた者達を管理する。いわゆる、天国と地獄行きなのかを決める閻魔の異世界番的な役割である。


「あはは~!!次の異世界?全然考えてなかったな~?どこがいいかな~?あはは!まぁどこでもいいっか。あははは」


怒りを必死に抑えて優しく微笑む私とは違い、相変わらずヘラヘラと笑いながら答える剣士。


そんな勇者の姿を見て、こいつは絶対、ぜ~ったいに今度の今度こそは辛い異世界に転生してやろうと心に誓った。

前回と前々回までは、可哀想だし、辛かろうかと思い難易度二であるやさしめの異世界に飛ばしたのだ。

だが、何度死んでも懲りないこの剣士の姿に、ついに私の我慢は限界を迎えた。


「あはは、あ~!どこでもいいんですね!分かりました~!」


愛想笑いをし、手元にある資料を見ながらどんなジャンルの異世界に飛ばそうかと考える。


ほんと…次はどこにしてやろうかしら。やっぱりこいつを飛ばすなら異世界よね。このままヘラヘラした根性を叩きなおさないといけないわ。それなら、この時を止めれる魔王が居るところとか、最初から魔物が百体くらいが一気に襲ってくる異世界とかもいいかもしれないわね。

あ!!いいのがあるじゃない!!ここだ!!ここにしよう…。役職は~。まぁ剣士でいいっか。


「ふへへへへ。ごほんっ!!失礼。貴方の今度転移する異世界が決まりました。貴方が今から行っていただく異世界は、死んでも二度と転生出来なくなる上に、魔王城の近くという難易度MAXが十のうちの難易度九の高難易度のものです!役職は剣士で!」


気持ち悪く笑う顔を整えて、平然とした感じで言い渡す。

今から送られる異世界の辛さによってこいつのヘラヘラした顔が引き締まる様が見れる事やもう二度と会わないでいいと思うと思わず笑みが溢れてしまった。

難易度をMAXにしなかったのは私なりの少しの慈悲である。


「女神様~!何を笑ってるんですか?あははは!!面白い顔~。また異世界か~!!頑張るか~!!まぁ無理かもだけど!!あははは!あ~あラブコメの世界とか行ってみたいな~!!」


ヘラヘラした表情と相変わらず努力をしないであろうこの感じが憎たらしい。

心底イライラさせるやつだ。

ほんとは、このまま異世界に飛ばしてやりたい所だが、女神の仕事のマニュアル的に異世界に飛ばす者には、その難易度に合ったスキルを授けなければならないという規定があるため、次は授けるスキルを選んでいく。

次はスキルか~。どうしようかしら。

この能力だったら、この異世界でも通用するんじゃないかしら!!よし、決定~!!


「あなたのスキルが決定しました!!あなたのスキルは魔法&物理無効化です」


スキル:魔法&物理無効化とは、文字の通り、どんな魔法や物理も無効化出来るという能力である。だが、このスキルには魔法や物理を受ける度に寿命が縮まるという欠点がある。それに加えて、送る世界の魔物はスライムでさえLv.50、魔王はLv.999という特性もあるため。さて、どう乗り越えるかなと心の中で思っていた。


ようやく異世界とスキルが決定し、この2度目死んだこいつを転移する準備が出来たのだ。


「それでは、次はちょ~っと厳しめの異世界に飛ばさせて頂きますね!!頑張ってください!!それでは行ってらっしゃい。」


絶対にもう二度と合うことはないであろうこいつに最後の言葉を告げる。


そう言って、男剣士ライの足元に魔方陣を出現させた。


「次の異世界は、どんな感じかな~?楽しみだな~!あはははは!!頑張ろうっと!女神様またね~!」


魔方陣が浮かび上がる最中もこちらに笑みを浮かべながら軽い感じで手を振ってくる


最後の最後まで私は、当然。愛想笑いだ。

ライは、またね。と言っていたが、もう会うことはないだろう。と思いながら手を振る。


「ふぅ~~!!疲れた~!ほんと!あいつは、一体何だったのかしら。あ~イライラした!!朝一から大変だわ。ほんと、先が思いやられる」


そう言うと、長いため息をついて、机に寝そべる。

この疲れは、ようやく異世界に送り込んだ事への達成感か、それともイライラした想いを抑えた事への反動か。

朝一というのに、この疲労感か。

今日も今日とて先が思いやられる。


そうこうしていると再び扉が開き、また新たな死者がこちらに来る。


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