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5話

「二人もアニメ好きにしよう」

「え……?」

「ほら、そうすれば解決だし、三人でアニメ談義で盛り上がれるよ」

「……」


 桃はキョトンとした表情をしていた。そりゃ、そうなるよね。でも、ごめん。私には友達をオタクにするしか方法が思いつかなかった。


「そんなこと……」

「できない。どうして?」

「だって……」


 桃はギュッと唇を噛んだ。


「アニメ……嫌いだって、キモいて……」

「そっか……でもね、そうしないと、桃は一生二人と仲直りできないよ」

「……」


 桃は顔を俯かせて、沈黙した。

 厳しく言い過ぎたかな。けど、このままずるずるとギクシャクした関係を続けていれば、間違いなく、友達関係は崩壊する。


「……でも、怖い……」


 桃はまだ子供だ。

 怖いのは当然だった。

 私はギューと桃を抱きしめた。


「大丈夫。失敗しても、その時は私とアニメの話をしましょう」

「……」


 しばらく待っていると、桃が顔を上げた。


「私……頑張ってみる……!」

「頑張って!」

「失敗したら、アニメの話、付き合ってくださいね」

「うん、良いよ」


***


『防災より、警備三島さんへ。三階の広場で音出しながら動画見ている女子高生が居るみたいなので声掛けお願いします』

「了解です」


 防災から無線があり、広場に向かう。


「ふふ」


 動画を見ていたのは、以前ダンスを踊っていた三人組だった。

 どうやら、桃は無事仲直り出来たみたいだ。

 観ているのは今期のアニメかな。

 幸せそうな光景に、そっとこの場を去りたくなったが、仕事である以上、声掛けしないといけない。


「すいません、音を出して動画を見るのはご遠慮ください」

「えー、アニメもダメなんですか?」

「もう、ダンスもダメでアニメもダメってなんなら大丈夫なの?」


 と、ぶつくさ言いながら立ち上がる女子高生達。移動を始めると、桃は振り返り、私に小さく手を振った。私も小さく振り返す。


「良かったね」


 私はそう呟くと、無線で防災センターに連絡するのであった。


***


 さて、桃にアニメ友達が出来たことで私はお役御免かなと思っていたが、そんなことは無かった。


「遅いですよ、夏子さん」

「あー、ごめん。人が多くて迷った」


 土曜日、私達はアニメショップに来ていた。


「友達と来れば良かったのに」

「確かに……二人は友達ですけど……夏子さんとも友達でしょ!」

「そうだね」


 嬉しいことを言ってくれる。


「それに……これから行くところは……二人を連れて行くのにはまだ早いと言いますか……」

「あー……」

「夏子さんは平気ですか?」

「まあ……偏見はないかな」

「十分です」


 たぶん、桃さんが言っているのはBLのことだろう。

 私は桃の後を着いていく。BLコーナーに入り、そしてBLコーナーを抜けた。


「……?」


 首を傾げていると、桃が立ち止まったのは百合コーナーだった。

 なるほど、そっちか。


「その……最近、興味が出て来たと言いますか……」

「うん、私もよく読むよ」

「え? 本当?」

「うん、面白いし」


 女の子同士のイチャイチャ。読んでいるだけで癒される。


「私、読んでみたいのあって……」

「どれ?」

「これです」


 桃から本を受け取る。

 表紙には年上のお姉様が女子高生とキスしているイラストが描かれている。


「……」


 この年上のお姉様だが、私に似ている気がする。

 こう、無気力で少しだらしがないとことか。


「えーと……面白そうだね」

「うん」


 これは私を恋愛対象として見ているという意思表示か? いや、そんなことは。


「夏子さん?」

「あ、いや……何でもない」


 もし、そうなら悪くないかもと思ったのは秘密だ。

 私は桃に勧められた本を買った後、私達はカフェに来ていた。


「おお……」


 パンケーキの専門的。興味はあったがキラキラした女子が多くて、入るのに勇気がいるお店だった。


「本当に良いの?」

「はい、この前のお礼をさせてください」


 桃は私に仲直りのお礼がしたいと、このお店に私を連れて来たのだ。

 けど、頑張って仲直りしたのは桃だ。


「結構高い……」


 パンケーキは普通の物で二千円近く、高い物だと三千円の物もある。

 これを女子高生に奢らせるなんて……大人として、どうなんだ。


「夏子さん、値段のことなら、気にしないでください」

「桃……」

「今月、私が金欠になるだけなんで……」


 せ、世知辛い……!


「よし、こうなったら、私もたくさん食べる……!」


 しゅんとした表情から一点、拳を突き上げる桃。


「せっかくたがら別物の頼んでシェアとかどう?」

「流石夏子さん! 甘味のプロフェッショナル!」

「そうかな……」


 甘味のプロフェッショナル。良い響きだ。

 私は目の前のメニューに目を通す。対面に座る桃も一緒にメニューに目を通していた。

 今日は楽しい一日になりそうだ。

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