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聖剣?(2)

寮は二つの建物を繋げたような造りになっていた。

食堂や居室がある生活区画と、倉庫や資料室、訓練場が集められた別棟。

外から見たとき、寮の横に白い立方体の建物が併設されているのが気になっていたが、どうやらあれが後者らしい。

機密を含む設備や物資はすべてそこにまとめられている、と説明された。


温かみのある木造の廊下、その端に無骨な扉があった。

厚い金属でできていて大きな魔法陣が刻まれている、転移門と同じで許可証がないと使えない。

「これがフランちゃんの許可証、一番低い等級だけど資料室以外なら自由に出入りできるよ」

セナはカードを渡すと私にそれを使うように促した、ガレウスが持っていたものとは少し違ったが鉄扉は問題なく開いた。


コンクリートのような材質の真っ白な廊下、寮との温度差から生じた風がスカートをわずかに揺らし、むき出しの足を冷たい空気が通り過ぎる。

大きな建物ではあったが、部屋は先に挙げられた3つしかなかった。

セナは保管庫と書かれた手前の部屋に入るよう指示した。

部屋にはいると薬品の匂いが鼻を突いた。

大きなガラスケースが10個余裕をもって並べられている。その内の4つが使用されていて剣が飾られていたが、どれも個性的な造形をしていて一括りには語るのがはばかられるほどだった。

壁に掛けられた棚にはメンテナンス用の革や砥石、油などが置いてあり、刺激臭の元はそこからのようである。


「ここは保管庫、私たちの武器とメンテナンスに必要なものが置いてあるよ」


セナはガラスケースの一つを開けるとそこから剣を取り出した。

並べられたものの中で一番大きい、彼女の背丈と同じくらいはある。


「これは聖剣っていうんだよ。勇者になると一人一つ作ってもらえるの」

一人に一つ。

なら、剣の数がそのまま勇者の人数ということになる。

使われているケースは4つ、ずいぶん少ない。

「大仰な名前ですね、でも神聖な雰囲気は全く感じませんよ」

無骨な鉄板と大差がないそれは、どちらかというと神聖の対極にあるように思えた。

「これを見ても言えるかな?」

柄を握ったセナは自慢げに胸を張ると、「解放」と呟いた。


――音もなく、それは現れた。

半透明の黒い触手。

柄から生まれ、生まれたそばからセナの腕に沈んでいく。

しばらくそれは続き、やがて剣と腕が触手で繋がれた状態で固定された。


開いた口が閉まらない。

これが聖剣?

どう考えても魔剣だ。


「何度見ても魔剣にしか見えないな」

ガレウスも同じ感想を抱いているらしく渋い顔で言った。

セナは私たちの反応に少し眉をひそめたが、


「まぁ、これが聖剣なのは事実なので…」

と言って、剣をケースに収めた。


「勇者がレベル0じゃないといけない理由ってのは、これですか?」

セナは確か一番知りたいことを教えると言っていた。

「そう、この剣は瘴気を持っていない人しか使えないの」

「詳しい仕組みについては聞かないでね、私も知らないから」


あんな不気味なものを中身も知らずによく使えますね。

失礼な言葉を寸前で飲み込み、代わりに当た障りのない質問をした。

「触手が体に刺さっていたように見えましたが痛くないんですか?」

「全然痛くないから安心して。瘴気が密集して見えるようになってるだけで実体は無いの」

頭の中で推測をする。

恐らくあの剣は内部で瘴気を生むか貯めている。それを体に送ることで使用者の能力を大きく上げているのだ。強化の度合いは分からないが魔王にも対抗できる可能性はある。

「…仕組みがわからないのは引っかかりますけど、納得はしました」


「じゃあ次は一緒に運動しようか」

「運動?」


困惑する私を置いてセナは入ってきた扉とは別の扉を開けた。

扉の向こうには広い空間が広がっていた。

石張りの床に高い天井、声が少し遅れて返ってくる。

「ここは訓練場、いつでも使えるけど夜中は使わないでね。結構音が響くから」

掛けられていた木刀を一本手渡される。

セナはさっきの聖剣によく似たものを選び取った。

「実はフランちゃんの実力を試さないといけなくてね」

本物でないとはいえ、大きな木の塊だ。

それを軽々と回しながら、セナは私の対角に陣取った。

「場合によっては2,3年は候補生だ。頑張れ」

壁にもたれたガレウスがにやにやしながらヤジを飛ばす。


思えばレオンとの決闘以外で本気を出していなかった。

あれは非公式な決闘だ。

勇者候補として扱われる以上、改めて実力を確認されるのは当然だろう。


「魔術は使用禁止、私に勝てたら何でも一つ質問に答えるよ」


少しだけ間を置いてから、セナは笑った。


「でも負けたら私のことをセナ姉ってよんでね」


「え!?」

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