表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/18

第5話

「新たな王太子……それは我が兄マグーマ・ティレックス伯爵がなればいいんだ!」


「はぁっ!?」


「「「「「っ!!??」」」」」



マグーマ・ティレックス伯爵とは、トライセラの実の兄であり前の王太子だった男のことだ。かつては第一王子マグーマ・ツインローズだったのだが、不正や国外逃亡などという不祥事を起こして王家から除籍され、任された領地にちなんで今の名前になったのだ。その際、本来は侯爵になるはずだったが、伯爵に降格もしていた。


そもそも、マグーマはこのパーティーに呼ばれてもいなかったはずだったのだが、トライセラの宣言の直後に待ってましたと言わんばかりに一人の男がどこからか堂々と姿を表した。



「よくぞ言った! 我が弟よ!」



「「「「「あ、あれは!!??」」」」」



突如現れたその男の姿を見た誰もが驚きのあまり動揺を隠せなかった。何しろ、その男は極めて悪い意味で有名で人々の記憶に強く残っているのだから。特にリリィとジェシカは嫌悪感すら感じてもいた。



「お嬢様、あの男は……!」


「ええ、マグーマ……ティレックス伯爵そのひとね……」



リリィとジェシカを含め多くの貴族が察したように、現れた男の正体はマグーマ・ティレックス伯爵だった。コアトルもその事実に気づいて大きな声で叫んだ。



「マグーマでん……いえ、マグーマ・ティレックス伯爵!? 何故貴方がここにいるのです! 貴方はこのパーティーに呼ばれていないはずでしょう!」


「いいや、呼ばれていたさ。我が弟にして今の王太子にな」


「!?」



涼しい顔で『今の王太子』に呼ばれたというマグーマの言葉を聞いて、コアトルはトライセラを振り返ると信じられないことを告げられた。



「その通り、私が密かに呼び出したんだ」


「で、殿下!? 何故にございますか!? マグーマ・ティレックス伯爵を呼ぶことはないと決めてあったでしょう!? 挙げ句に王太子の座を譲るなどと!」


「ああ、完全に私の独断だ。これも……王太子から降ろされるきっかけの一つになるかな……ははは……」


「そんな……殿下……」



コアトルは言葉を失った。トライセラが王太子になってから前にもまして大変な思いをしていたことは分かっていたつもりだった。だがまさか、失脚した兄を独断で呼び出して王太子の座を明け渡そうとするなど考えるとまでは思ってもいなかった。



「なりませぬ! なりませぬぞ! 今更、兄君を王太子に戻すなどあってはなりませぬ! そもそも、兄君は王位継承権を剥奪されて王家から除籍されておりまする!」


「それならば私の権限で王家に戻し、王位継承権を復活させればいいのだよ。兄上と弟のわたしの立場をまるごと入れ替えるんだ!」


「何を馬鹿なことをおっしゃるのですか! 正気に戻ってください!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ