第94話 制圧戦
「ぞろぞろとおいでなすったか!」
「でも動きは鈍いですし、あれじゃあ天使というより、ゾンビじゃないですか」
「堕天使の奴はネクロマンシーの爺さんの身体を乗っ取って、作り替えたんだろ。だったら、元の能力が使えてもおかしい話じゃねえ」
数だけ揃えましたと言わんばかりの黒ずんだ上級・下級交じりの天使と主戦力と思われるメタルザウルスの混成部隊がセラフィムの船に向かって進軍してくる。国防軍が魔力を込めた銃弾で応戦するも、下級の小型獣ベースの天使ならいざ知らず、ドラゴンに匹敵するような大型獣をベースにした中級以上の天使相手だと銃弾が効いていないように見える。メタルザウルスはいわずもがなだ。
「ホーク中佐、無人ヘリの準備は出来ているか」
「はい、【縮小】を解除させ、上空に待機しております」
「よし、一斉掃射だ」
人間の手持ち火器で倒せないなら、それよりも大型の銃器を取り出せばいい。上空に待機させていた6機の無人ヘリの機関銃が敵の軍勢に向かって機関銃やミサイルを放っていく。下級の獣天使が面白いように吹き飛んでいく中、ドラゴン天使も体表を削り取られ、足を止めている間にじわじわとダメージを負っていく。
だが、後方にいた座天使級やメタルザウルスは銃弾の雨を気にしないようかのように進み続け、鬱陶しいとでも思ったのか座天使級の手のひらから放たれたビームで薙ぎ払われて一掃されてしまう。
「航空戦力無しで一撃かよ……こいつは困ったもんだ」
「そう言っている場合ですか!向こうの航空戦力は日本本土に向かっているせいで、海上に展開している自衛隊からの応援が見込めない状況なのに、通常武装で太刀打ちできないなんて絶望的な状況なんですよ」
「ライチョウ少佐の言う通りだな。じゃあ、魔力を練る時間も稼いでくれたわけだし、こっちの最大火力を見せてやるぜ!!」
鷲崎の全身のあらゆる毛を一つの巨大ミサイルに集約し、相手の頭上に向けて発射する。敵陣の中央で炸裂したミサイルは直径1キロはありそうな炎柱とキノコ雲を作り出し、ドラゴン以下の天使を跡形もなく消し飛ばし、座天使級もその炎に身を焼いていく。
「はぁ……はぁ……一発撃つだけでこの虚脱感。やっぱ使いたくねえわ。ナイチンゲール、回復を頼むぜ」
「言われなくとも、すでに治療を開始しています。みっともない恰好だと部下に示しがつかないでしょう?」
「その通りだな。これで倒れてくれればいいんだが……」
そんな淡い期待を裏切るかのように装甲を溶かしながらも進軍してくるメタルザウルスの群れとわずかに生き残った座天使級の敵部隊。少なくないダメージは負っているはずだと再度展開知った無人ヘリの爆撃を浴びせるも、効いている様子はまるでない。
(少しくらいは効いとけって話だな。もう一度、魔力を練り直すにしても、今度は味方との距離が近すぎる。下手したら自爆だ)
仮に部下たちを艦内に避難させて、玉砕覚悟で攻撃を行ったとしてもメタルザウルスの群れを一掃できるのか、そもそも相手の戦力はこれで打ち止めなのかと疑問がわいてくる。そして、それらの答えは自爆をしても無駄死にしか無いのである。
「せめてこっちに通じる武器があれば良かったんだがな」
「武器があればええんやな。こっちにはスタンピードの時に大量生産した電気銃があるんや」
「そのためにも態勢を整える時間が必要だな」
国防軍たちの前に一瞬にして分厚い氷の壁が出現し、敵を分断していく。鷲崎が後ろを振り返ると、そこには大量の段ボールを抱え込んだタコハチとそれを操る発明、そのほかにも学園都市の子供たちが続々とやってくる。
「おいおい、増援を連れてくるなんて聞いてないぜ、エクステラ」
「あら、増援が無いなんて一言も言わなかったわよ」
「ああ言えばこう言う奴だな。だが、助かる。各員、武器を取って応戦の構えを取れ!反撃開始だ!」
国防軍に特製の電気銃が渡ったところで、氷堂が氷の壁を一瞬にして溶かす。それと同時に放たれる電撃を纏った弾丸がメタルザウルスの群れに襲い掛かる。ただでさえ、鷲崎の攻撃で装甲がもろくなっているところに弱点の電気が流し込まれたメタルザウルスたちは、次々とその機能を停止させ、倒れていく。その傍らで満身創痍になりながらも、座天使級が侵攻を続けている。
「さすがに天使相手やと電気銃は通用しないみたいやな」
「では、我が愛刀にてその首を……無くとも切り捨て御免!」
EX-04の甲冑を纏ったサクラが単身で突っ込み、座天使級をバッサバッサと切り捨てていく。その中には、メタルザウルスたちもいるようだが、かつてメイドレッドがやっていたように装甲に覆われていない関節部を切断し、動きを封じている。
「鈍い、鈍い!あくびが出るくらい鈍いぞ!」
「あんだけ暴れるとこっちの攻撃が当たりそうなんだが……」
「大丈夫よ、あの子の甲冑は特別性だから。貴方が本気を出しても壊れないと保証するわ」
「そうかい。こっちの攻撃も通じるようになった。防衛は任せてくれ」
「ええ、次に会うときは全てが終わってからね。氷堂生徒会長、サクラ、神藤生徒会長以外の竜東生徒会はこのまま残って国防軍の支援に!」
「秋に引退したから、もう生徒会長では無いがな」
「タツヤもな」
「そういえば3年だったわね、忘れていたわ。堅井、突破口を!」
「おう!【突進】発動、ライノ・ハイパー・チャージ!」
ドカドカとゴンゾーが天使やメタルザウルスを暴走機関車の如く轢いていき、その後をエクステラたちが追っていく。敵陣を突っ切り、艦内への突入口を目指していくと、敵の第2陣と鉢合わせてしまう。さすがにゴンゾー一人でこのまま敵陣を突っ切るには荷が重いため、カレンが前に躍り出て炎で焼き払っていく。
「メタルザウルスには炎が効きづらいわ。ここは――」
「笑止。私は炎を手足のように動かせますの。指向性を持たせればこのように」
メタルザウルスの装甲は電機以外弾く最強の装甲。だが、関節部は剣で切れるように、炎を関節部に纏わせてどろどろに溶かせば、無力化は容易である。
「最小限の魔力消費で倒せるというわけですわ。私よりも美しく倒せるものが居れば、名乗りなさいな」
「それじゃあ、この僕、ナルシーが最初にエントリーしようかな。美しい薔薇で君たちをデコレーションしてあげるよ」
ナルシーの【完美】によって眼前にいたメタルザウルスの体表にバラが咲き誇ると、突如として、動きが鈍くなり、止まっていく。
「君たちのような心の無い機械でも、僕の薔薇を見ると見惚れて動きが止まるんだ」
「関節に異物が挟まっただけでしょう。これだからナルシスト先輩は」
「くっ、悔しいですが、一瞬にしてあれだけの数を無力化できるほどの洗練された技量は我がライバルくら……いえ、残念ですが、私よりも美しいと認めざるを得ませんわ」
「え、ええ……」
アスカがツッコミできないほどにあきれていた。ただ、二人の頑張り(?)によってメタルザウルスの群れが無力化されたことは向こうも予想外だったらしく、座天使級も戸惑っている様子であった。だが、そんな様子を見逃すわけもなく、EX-02が腕をライフル銃に変形させて、その胸元を撃ち貫いていく。
「この程度の相手なら問題無いな。」
「さすがは高官のSPを務めていただけのことはあるわね」
「茶化すな。第一陣は掃討戦に入っている。この第二陣をこのまま放置しても問題無いと考えられるが?」
「そうね。まずは突入口に近い東ブロックのサブコントロールルームを全員で向かい制圧!その後、中黄校組は南ブロックに、他校生は北ブロックに向かい制圧。西ブロックのサブコントロールルーム前で合流して一気に制圧するわ」
「エクステラは?」
「私は南に向かうわ。EX-02は北に向かってちょうだい」
「了解した」
ドタドタと階段を下り、東のサブコントロールルームへとなだれ込むと、そこにはかつてドクターが作った趣味の悪いキマイラドラゴンがこちらを睨みつけると同時に姿を消す。
「みんな、気を付けて!」
「カケル君、あんなのに気を付けるまでも無い!」
タツヤが事前に持ってきたサーチ系の異能でパーフェクトステルス状態のキマイラドラゴンを見破り、電撃を纏った拳打を叩きこむ。悶絶したキマイラドラゴンが思わずステルスを解いてしまうほどには強烈な一撃だ!
「あれは我が校の恥の象徴……ここは一人で任せてもらおうか」
「負けそうになったら介入するわよ」
「承知した」
剣を抜き、キマイラドラゴンの胴体に向かって突き刺すと、内部に向かって電撃を流し込んでいく。これはマズイと判断したのか自らの肉をどろりとパージして、すかさずバリアを張る。
「その程度の防壁で俺の攻撃を防げると思ったか!【崩御】発動!」
手にした剣が赤く染まるとキマイラドラゴンの張っていたバリアを易々と切り裂き、すかさず剣を突き刺す。
「そう何度も同じ手は使えまい!喰らえ、【蓄電】で強化された【放電】最大出力!」
内部から高電圧で焼かれるキマイラドラゴンがそのライフの数を急激に減らしていく。放電が止むと、そこには黒焦げになって倒れるキマイラドラゴンの姿があった。
「とまあ、俺にかかればこれくらいの敵、朝飯前だ」
「って言っている割には息上がっているじゃん。治してあげる」
「ほう、疲労感も消えるのか。いや、わずかだが、魔力も回復している。これはすごい異能じゃないか。ぜひ、僕に習得させてくれ!」
「あ~し、たっちゃんが思っているほど尻の軽い女じゃないし~」
「た、たっちゃん? 俺をそんなふうに呼ぶ奴は初めてだ」
「それ、マジ? あり得ないしょ」
「うん。子供の時にタツヤって子が居たら、たっちゃん呼びだよね」
「そういうものなのか……?」
【エリート君にはあだ名をつけるような子はいなかったのかな】
【勝手にラブコメしているところ悪いけど、俺たちのこと忘れないでくれよな】
【全国に筒抜けやからね~】
【ひゅ~ひゅ~】
「この部屋のコンピューターは壊したし、予定通り2手に分かれましょう」
「ヤバかったら私の配信にコメントしてね」
それぞれのグループに分かれ、エクステラたちは南のサブコントロールルームへと向かっていくのであった。




