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ゲーム世界へ転生したモブ♂、死ぬ未来を回避するために美少女(偽)になる  作者: ゼクスユイ


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第91話 和平交渉へ

 12月某日。世間がクリスマスシーズンを迎え、街中ではジングルベルが鳴り響き、子供たちがサンタさん(親)にプレゼントをねだる光景が見受けられる中、それは突如として降りてきた。


「ったく、日本の領海近くに降りてきたせいでせっかくのオフが台無しじゃねえか」


「仕方ありませんよ、大佐。ダンジョン外の防衛は僕たち、国防軍の仕事でしょう。それにしても大きいですね。僕たちの軍艦が小舟に見えますよ」


「居住スペースだけで全長数千メートルはあるらしいからな」


「ずいぶんと詳しいですね。もしかして、みみみちゃんのファンだったりします?」


「ちげえよ。天使の情報を得るために見ねえといけなかったんだよ。で、少佐、何かわかったか?」


「一つ言えるのは、僕たちの装備だと外側からの解析ができないことが分かったことくらい。やっぱこういうのは自衛隊のダンジョン用の設備でないときつそうですね。どうです、今からでもEX-06の協力を得るっていうのは?」


「それで安全が確保されるなら、それに越したことはねえが……まあ、今回は横紙破りする必要ねえだろ。名目は監査だしな」


「年末に行う予定の和平交渉を相手の懐でやるとか、黒木総理も大胆なことしますよね」


「負傷による引退とはいえ、それまでは名が知れた探索者だったからな。腕に自信ありなんだろうさ。おかげで、こっちは諸外国に睨まれ、事前監査のためにこうやって駆り出される……面倒ごとしか起こらねえな」


 大気圏外から降下してきたセラフィムの宇宙船、要塞ともいえるような建造物が荒波をたてないようにゆっくりと着水すると、宇宙船から出てきたミツ子が国防軍の船を中へと招き入れるのであった。



 監査の日から約1週間が経過し、国防軍の護衛の下、黒木総理らは天使たちの宇宙船へと向かう最中、カケルたちはその隣で航行している護衛艦の甲板から海を眺めていた。さすがに真冬なので、遮蔽物の無い海上は寒いが、艦内にいるよりかは解放感もあって気分転換にはちょうど良い。


「見て、魚が跳ねてる」


【今度は落ちるでないぞ】


「大丈夫だよ、ピーちゃん。そういうマリンスポーツじゃあ……おっとっと」


【本当に大丈夫か? 大丈夫なのか? サキよ、操を捧げる相手は慎重に選んだほうが良いぞ】


「み、みさおって……!?」


「僕たちはまだそういう関係じゃないから!」


【ほほう、『まだ』ということはそういう気はあるということじゃな。少しは感心したぞい】


 二人がゆでだこのように真っ赤になりながら、てんやわんやしている様子をアスカたちは反対側の手すりにもたれながら見ていた。


「アスカちゃん、残念だったね。信二君が居なくて」


「『行きたいのはやまやまなんだが、俺にはやらないといけないことがあるからな』とか言って、断ったもんなぁ。軍艦に乗れるチャンスなんてそうそうないぜ」


「一生に一度あるかだもんね」


「普通は一度も無いわよ」


「ツッコミの切れ味がいつもより鈍いですね。7割減くらいはあります」


「……ポニ子、アンタは空を飛べるでしょう。そもそも向かう先はアンタの本拠地でしょう!一緒に来る必要ないでしょう!」


「畳みかけるようなツッコミ。少しは元気が戻ったようでなにより」


「ワン!」


「タロ~海に落ちたら大変だから歩き回らないでね」


「で、ポニポニ~一緒に来た理由って?」


「船旅に興味があったので」


「おいおい、遊覧船気分かよ」


 ポニ子の言葉に鷲崎が思わずつっこむ。お偉いさんやマスコミたちの対応は部下たちに任せて、自分は天使側の招待客である彼らの護衛についている。と言っても、まだ子供とはいえ、彼らは探索者。何かあったとしても、政治家やマスコミよりかは自分らで対応できるだろうと思い、鷲崎一人で対応している。


「いけませんか?」


「いいわけねえだろ……って、言いたいが、そこの天使を除けば招待された側の人間だしなぁ。そういう気分になるのは分かる。はしゃぐのは良いが、余計な仕事は増やさないでくれよ」


「分かっているわよね」


「ああ、もちろんだぜ」


「ワン!」


「タロもわかっているって」


「犬っころには聞いてねえよ。ったく」


 ゆる~い雰囲気の学生たちに鷲崎はため息をつきながらも彼らが、ふとした拍子で転落しないか見張りつつ、時計を見て、後方を守っている自衛隊たちに指示を出す。すると、自衛隊の船が見送るかのように速度を落とし、どんどんと離れてしまう。


「どうしたんだろう?」


「自衛隊はあくまでもダンジョン災害専門の軍隊。おいそれと自衛隊をダンジョン災害でもねえのに派遣することはできねえのさ」


「じゃあ、なんでついてきたのよ」


「何かあった場合の保険ってところだ。国防軍の装備だと天使相手じゃあ力不足だからな。わざわざ真空管ハゲに頭下げて、自衛隊の協力を申し出たってわけだ」


「天使が相手? ポニ子が急に寝返って、私たちを人質にするとか? ないない」


「しませんよ」


「さすがにしねえと信じたいが、大人ってのは最悪の状況に備えて準備しねえといけない生き物なのさ。さてと、そろそろ中に戻りな。もうじき着くからよ」


 カケルたちが艦内に戻ってしばらくすると、船が大きく揺れた後、急に揺れが静かになる。窓の外を見ると、どこかのロボットアニメに出てくるような基地の中といったような光景が広がっていた。どうやら無事にセラフィムの宇宙船の中に入れたらしい。

 カケルたちが駆け足ながら外に出ていくと、多数のお天使を引き連れたセラフィムたちが総理達を出迎えていた。その中に混じっているゴスロリの少女、エクステラがこちらに気づいたらしく、下船してきたカケルたちに向かって歩いてくる。


「エクステラも呼ばれていたんだ」


「当たり前よ。この和平が無事に成功するのが私の使命よ」


「使命ねえ……なら、この和平交渉が無事に終わればどうするつもりだ?」


「行く末を見届けるだけよ。ただ……」


「なんだ?」


「もし、無辜の民が危険にさらされるようなら、また表舞台に立つかもしれないわね」


「そうかい。だったら、これを渡しておくぜ」


 鷲崎から手渡されたのはエクステラの名前と顔が映っているIDカードとスマホ。顔写真は配信で幾度となくさらしているのだから、切り取って載せられるのは分かるとして、問題はこのIDカードがどこのカードかということだ。


「さすがに賞金首の犯罪者が和平の立役者ですなんてのは対外的に悪い。ってなけで、1年前に俺の部隊に入隊した隊員ってことにしてある」


「人殺しには興味ないわよ」


「だから、裏でダンジョン関連を調べる特別調査員ってことになっている。表立って普通の戦場に出す気はねえ」


「それだったら、自衛隊員にしてくれた方が良いのに」


「真空管ハゲに『人気のあるエクステラを俺らのところに引き入れたら国防軍の評価も上がって、中将、いや大将だって狙えるぜ』って唆したら、まんまと乗ってくれてな。ハゲの人づても使って、賞金首になったのも『評議会』の陰謀のせいってことにして、近々取り消しが行われる予定だ」


「普通に恩赦した方が楽でしょうに……」


「それに、そのカードを受け取ってくれるなら、ことのついでに竜東学園の違法捜査で前歴がついたお友達も協力者という体でチャラにするぜ。どうだい、俺たちと手を組むつもりが無いならそのカードと通信機を返しても構わないぜ。その場合でも、お前さんの罪()()は帳消しにさせてもらうけどな」


(こちらの良心をつくようなやり方を……亀北の時といい、まともにやり合いたくない相手だな)


【どうするんです? ミステリアス美少女を貫くなら拒否したほうが自然ですけど?】


(……配信のおかげで世間的には好意的な印象があるとはいえ、俺たちがやったことは不法侵入をはじめとする犯罪だ。前歴がついたままではアスカたちがまともなギルドに就職できないかもしれない。となれば受けざるを得ないか)


【姑息な手ですね】


(姑息に卑怯という意味はないぞ。その場しのぎや一時しのぎという意味だ)


【うそ~ん!? アニメでよく使われているじゃないですか!】


「……言いなりになるつもりはサラサラ無いけど、パイプくらいには使えそうね。ありがたく受け取っておくわ」


「意外と素直だな。拒否られると思ったんだがな」


(断れない状況にしてよくもぬけぬけと……だが、今後、何かあった場合に国からも情報が集められるのは大きい。なにせ、この後の未来なんてわかるはずもないからな)


 そう、ここまで話が進めば、信二が持つ原作知識という名の情報はもはや打ち止めだ。となれば、行動が縛られる可能性があるとはいえ、国防軍との繋がりを得られるのは非常に大きい。正体バレによるリスクも含め、多少のデメリットを許容してでも、手を組むメリットは十二分にある。


「今後は見守ると言ったでしょう。ただ、こちらの活動が縮小している間に手遅れになったら困るもの。信頼できる情報が多いに越した方が良いわ」


「利用されるくらいなら利用するつもりってわけか。良いね、俺好みの回答だ。名目上とはいえ、俺の部下になるならそれくらいの反骨精神は持ってもらわねえとな。つーわけで、これから俺はガキンチョどもの面倒を見ないといけないわけだが、お前さんも来るかい?」


「交渉中は私に出る幕は無いわ。手持ち無沙汰だし、同行させてもらうとするわ」


「では、皆さん。揃ったようなので、艦内ツアーを始めさせてもらいます。ツアーガイドは私、ポニ子です」


「ちなみに、このツアーガイドはこのみみみが生配信しまーす。イエーイ!」


「おいおい、配信は聞いてねえぞ」


「「今、言った」」


「事前に打ち合わせしろ!!」


「「サプライ~ズ☆」」


「さっきから無駄に息合わせるんじゃねえよ!仲良しか!」


 鷲崎のツッコミが鳴り響く中、ポニ子は小さな旗を持ってイキイキとした様子で艦内を案内するのであった。

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