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ゲーム世界へ転生したモブ♂、死ぬ未来を回避するために美少女(偽)になる  作者: ゼクスユイ


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第88話 入れ替わり観光

 宴会でも開けそうな大広間に和・洋の様々な食事がずらりと並んでいる中、アスカ姿の信二は白ご飯に味噌汁、納豆、おひたし、焼き魚にだし巻き卵と和風のものをチョイスしていく一方で、エミ姿のアスカは大皿に唐揚げやソーセージ、スクランブルエッグなどをドカドカと並べる。


「昨日、太るとか言っていた人の量じゃないわね」


「アンタの身体なんだから良いじゃない。ザ・日本の朝食も良いけど、肉食べなさいよ、肉。そんな食生活しているから、筋肉が付かないのよ」


「腹八分目って言葉知ってる? そんなに腹いっぱい食べたら、動けなくなるわよ」


「これくらいへーき、へーき。代わりに私が食べてあげるわ」


 余裕と言わんばかりに大皿に乗せていた料理をガツガツと平らげていくアスカを見て、信二は旅館の雰囲気に合わせて懐石料理にしなくて良かったと思っていた。きっと、そっちを選んでいたら食べたりなかっただろう。


「やば、ちょっと限界かも……普段なら、これくらいの量食べられるのに」


「私の身体なんだから、限界来るでしょ。ってか、こういうセリフ言うの逆じゃない?」


「なによ。私が男っぽいって言いたいわけ?」


「男っぽいじゃなくて男でしょ。今は」


「うぐっ……それ言うの反則」


 ぐぬぬと言った様子で大皿に残っている料理をゆっくりと食べていき、なんとか完食する。


「もう無理。動けない」


「だから言ったのに……これから朝市行くつもりだったけど、まずは部屋で少し休みましょう」


「そうするわ……ところで、今日は何するつもりだったの?」


「東ダンジョン方面に向かって、外湯めぐりと植物園・昆虫館に行く予定だったけど、その姿で男湯にはいるわけにはいかないわよね」


「ごめん。外湯めぐりは体が元に戻ってからで」


「仕方ないわね……動けるようになったら、運動がてら植物園に向かいましょう」


 ぽっこりと膨らんだお腹をさすりながら、テレビをつけて普段見ることができない地元番組を見ていく。芸人が最近SNSで流行りのダンジョン飯を食べるという内容だ。事の発端は文化祭で魔物肉の処理に特定用途でしか使われなかった毒消し草が注目され、2匹目のどじょうを狙おうと色んな探索者があれやこれやと情報を出し合っているところにメディアが乗っかった形だ。


「マスコミがこういうことすると、ブームってすぐ終わっちゃうわよね」


「まあ……一昔前は変なブームを作るのもマスコミで、終わらせるのもマスコミだったが、今はブームを作るのがSNSになっているからな。マスコミの体質が変わらなかったら、終わらせることしかできないだろう」


「なるほどね。じゃあ、アンタのマイブームってなんかある?」


【美少女になることですよ】


「それだと女装癖があるようにみられるだろうが」


【今も女装しているようなものでは?】


「なによ、それだとアタシの身体が男でも言いたいわけ!」


【そういうつもりでは~!? あ~れ~】


 スマホ形態のステラをブンブンと振り回すアスカを見て、地雷踏んだなと思いながら笑う。そうこうしているうちにアスカのお腹の調子も戻り、二人はホテルから出るのであった。



 植物園についた二人は受付を済ませて、受け取ったパンフレットを見ながら、順路に従って植物を眺めていく。ただ、3連休の真ん中という絶好の観光日和にもかかわらず、2人以外の客は1人、2人見かける程度でいつ潰れるのかヒヤヒヤものである。


「へえ~、こじんまりしたものかと思ったけど、結構広いじゃない」


「私も驚いたわ。あと、奥の方でパンフレットによるとダンジョン植物との比較展をやっているみたい」


「そういうイベントごともやっているのね。誰よ、昨日のフルーツ狩りと言い、亀北には温泉と鉱山しかないなんて嘘言ったの!エクステラじゃなくて、こういうのを推しなさいよ」


「そうは言っても、植物園と温泉とダンジョン、どっちに人が来るなんて子供でも分かるわ」


「そりゃあ、そうだろうけど……それにしても中は暖かくて助かるわ」


「この辺りは熱帯の植物を展示しているエリアだもの。日本の冬なんて天敵中の天敵よ」


「それもそうよね。でも、私にわかるのはバナナの木とかヤシの木くらいだわ」


「食べられるものしか覚えていないのかしら」


「うぐっ……」


【う~ん、このクスクスと笑う感じ……アスカさんにもメスガキ成分があったんですね】


「だれがメスガキよ。というより、ステ……じゃなかったエクスは黙ってて」


「無知無知雑魚お姉さんはエンジェルストランペットも知らないざ~こ」


「アンタものらない!ほんとアンタたちって性格似ているわね」


「ものすごく心外なんだけど……この際だから少しでも覚える努力したら? ハイビスカスくらいは聞いたことあるでしょう」


「ああ、ハイビスカスティーね」


「……まあ、興味あるものから覚えるのも手といえば手ね」


「なによ、まるで私が食いしん坊万歳みたいな目で見ちゃって」


【事実では? あっ……】


 無言のブンブンである。ステラへの懲罰を終えたところで、亀北に自足している植物エリアを周り、目玉でもある特別展の部屋へと入っていく。部屋の中央には5,6mはゆうに超えてそうな巨大ウツボカズラの模型が飾られており、説明プレートには『通常個体は数m程度だが、ボスモンスターのウツボカズラは10mを超えている個体もあるぞ!』と書かれている。


「アタシたちの学校のダンジョンに出てくるけど、アレよりも大きいわね」


「あれらが通常個体なんでしょうね。その脇にあるのが本物というか普通のウツボカズラみたいよ」


「モンスターの方を見ていたせいで小さく見えるけど、思ったより大きくない?」


「説明文によると、大型種のウツボカズラなら4,50cmくらいになるみたいね」


「そりゃあ、モンスターになったらあんなに大きくなるわけね……」


 今度は壁際に展示されている食人植物の模型とモチーフになったと思われる食虫植物を見ていく。今度はトラップモンスターであるハエトリグサタイプの比較だ。


「こっちは思ったくらいの大きさだけど、思ったより密集してない?」


「成長すれば、この写真みたいにばらけるんじゃない」


「それでも、思ったのとなんか違う」


 次はウツボカズラやハエトリグサと比べると、あまり聞き覚えの無いゲンリセアという植物。ダンジョンの壁に擬態し、自身の管状の根を洞窟と思わせて、奥に進んだ野良モンスターや探索者を捕食するトラップモンスターの1種だそうだ。


「えげつないわ。どうやって気づけって言うのよ」


「魔力反応を調べるしかないでしょうけど、ボスクラスだと迷路状にめぐらされた根は数km以上にも及ぶらしいから並みの探索者では気づきにくいかもしれない。こいつほど事前情報が重要なモンスターは居ないわ」


「ほんと。初見なら全滅必至よ」


 ウツボカズラと同様、本物は甘い香りで虫を誘惑させ、中に入り込ませて捕食するヘリアンフォラ。モンスターだと、ウツボカズラと違い、筒状の捕虫葉を周りの植物に紛れさせて、筒の中にある人や宝箱の形をした蜜腺で探索者を誘い出してくるトラップモンスターだ。


「こっちも中々にエグイわね」


「宝箱を見つけたら、ミミック対策で下級魔法1発放って様子見るよう言われるのも納得。私たちだとそういう面倒ごとも引き受けてくれるタロさまさまよ」


「あとでペットフード買ってあげるわ。ちょっと高い奴」


 飼い主もといサモナーよりも先に土産が決まりそうである。そんなこんなで、併設されている昆虫館に行ってみると、世界中の珍しい昆虫の標本やゲージに入れられている昆虫たちがお出迎え。名前は聞いたことのあるカブトムシやクワガタ、きらびやかな蝶が展示されているが、虫にさほど興味ないのかアスカがサクサクと先に進んでいく。


「ゆっくり見れば良いのに」


「だって、生きているやつも動き少ないし、面白くない」


「まあ、昆虫は大抵が夜行性だもの」


「こっちにも植物園みたいにモンスターとの比較展しているみたいだから、そっちに期待しているわ」


 アスカが先にズシズシと進んでいき、その後を追う信二。亀北の絶滅の危機にある昆虫たちの展示室を抜けた先に、植物園と同様、部屋の中央に数mのカブトムシの模型が飾られている展示室があった。


「なになに『カブトムシ型はジャイアントインセクトの中でも随一のパワーを誇る。ボスモンスターになると角に各種属性の魔法を纏って突撃して来るから要注意!』か」


「魔法攻撃を纏ってくるのは厄介よね。でも、パワー勝負なら負けないわよ!」


「ええ、相手する機会があったら任せるわ」


 他の展示品を見ていくとカマキリやクワガタ型のモンスターの模型がある中、その脇には遺族から寄贈された鋭い断面で斬られた鎧や砕け散った剣等が飾られており、たかが虫などと舐めたらこうなると言っているようにも思える。

 そして、特別展示室から出ていくと、お土産を売っているショップや軽食を食べられるレストランが見えてきて、これ以上の展示物がないことを告げる。


「良い勉強になったわね」


「でも、デートスポットって感じじゃなくない?」


「うっ……」


「まあ、思っていたよりかは面白かったし、十分楽しめたわよ」


 アスカが喜んでくれたことでほっと胸をなでおろす信二だったが、入れ替わりについては何も進展していない。とはいえ、デートを台無しにさせるわけにもいかず、レストランで遅めの昼食をとることにするのであった。

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