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ゲーム世界へ転生したモブ♂、死ぬ未来を回避するために美少女(偽)になる  作者: ゼクスユイ


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第85話 デート

 10月。世間では衆参W選挙が行われ、『評議会』に与する各省庁とダンジョン利権の癒着問題が焦点となっていた。各政党がマニフェストを掲げる中、野党第一党である民民党が掲げた『ダンジョン庁』の設立がメディアによって大きく報道された影響もあり、政権交代が果たされることとなった。

 さらに、天使との和平会談が年末に決まり、日本どころか世界情勢すら大きく変わろうとしている中、信二は明日の旅行に向けて、抜け落ちが無いかチェックしていた。


「この1か月、ダンジョンで得られた素材の売却で、立ち寄った店でアスカに高価な品物をねだられたとしても金銭面は問題ない。亀北西ダンジョンで行われるフルーツ狩りも予約は済んである。後で情報提供してくれた守たちにお礼を言っておかないとな」


【デートの準備なのになんで作戦立案しているんです?】


「大学生時代を合わせても、初めてのデートだぞ。慌てふためくようなところを見せないためにも、準備に時間をかけている」


【そういうイレギュラーのことを楽しむのもデートだと思いますよ】


「そういうものなのか?」


【だって、すべてが予定調和で終わったら盛り上がるところありません? デートなら突然、雨降ってきて店先で雨宿りイベント、濡れて透けた衣服がみえてキャーとなる展開!少年漫画なら強敵の乱入で主人公側敗北!とかのハプニングがあるから面白いと思うんですよ】


「……確かに一理あるか」


【でしょう? だからデートの準備なんてのはある程度は適当に。ケ・セラ・セラってわけですよ】


「なるようになれか……力を入れすぎていたかもしれん。早めに寝るとするか」


 カバンの中に入っているものを確認し終えた信二は、いつもより早めにベッドに横たわることにするのであった。



「ごめーん、待たせた?」


「いや、俺も来たとこ……」


 翌日。中黄駅前で待っていた信二にアスカの声が届く。スマホを閉じ、振り向くと、そこには美少女がいた。いつもは戦闘の邪魔にならないように長めの髪を束ねているのだが、今日は降ろしており、服装も動きやすいパンツルックからあまり馴染みのないスカートをはいて、お嬢様といった格好だ。


「どう? 似合う?」


「ああ。ちょっと意外だった」


「意外って何よ!」


「ボーイッシュなイメージが強いからな。そういった服しか持っていないものかと……」


「私だって持っているわよ」


 先週、サキに見繕ってもらったとは言わないアスカであった。ちょっとした口喧嘩の後、信二から差し出された手を繋ぎ、二人仲良く駅の中へと入っていく。そんな彼らの後を追うように、二つの怪しげな人影がそそくさと駅へと入りこんでいくのであった。



「亀北に遊びに行くのって小さいころ以来なのよね」


「そうなのか。学園都市に住んでいるから、日帰りで遊びに行けるんじゃないのか?」


「そりゃあ、特急に乗れば1時間もしないうちに着くけど……温泉でゆっくりなんて年頃でもないし、ダンジョンの優先権は中黄が万年ドベよ。横取りされる可能性が高いんじゃあ、旨味も無いのよねえ……」


「確か、今年は交流会の中止に伴って優先権が無くなったな」


「そうそう。今年だけじゃなくて、ずっと無くなって欲しいわ」


「案外、快適だという意見に圧されてこのまま廃止という可能性は十二分にある」


 売店で買ってきたコーヒーを飲みながら、窓の外の矢継ぎ早に流れてくる風景を見る。住宅街を抜けているが、亀北の駅まではまだ遠い。そんなこと思っているとアスカが声をかけてくる。


「そういえば、アンタってそっちの世界だとこうやって誰かと旅行しに行くことはあったの?」


「大学に通っていた時に、友達二人と一緒に伊勢まで旅行しに行ったことはある」


「へえ~、その時のこと教えてよ」


「ダンジョンが無いから、ハラハラする展開なんて無いぞ」


「私にとっては新鮮よ。だって、ダンジョンの無い世界なんて創作の中の出来事だもの」


「そういう見方もあるか。まずは友達の一人が遅刻して電車に乗り遅れそうになるところから話すか」


 無事に電車に乗って伊勢に付いた後は、おかげ横丁や伊勢神宮に行って、友達の一人が神社の参拝が趣味だったことを初めて知ったり、翌日には鳥羽水族館に行ったりと観光を満喫していたことを話していこうと思いながらも、語りつくせないうちに亀北の駅に着くのであった。



「この硫黄の匂い……亀北に来たって感じだな」


「そう? やっぱり、少し前まで留学していたから懐かしい感じ?」


「かもしれないな。まずは旅館に荷物を預けてから、辺りを探索するか?」


「私は探索者だからアイテムボックス機能付きのリュック持ってきているわよ。荷物かさばらないし、大丈夫よ」


「本当に便利だよな、ボックス機能付きリュック」


 見た目と変わらない容量の安価なリュックでさえも、中に入れた荷物の重さを感じないから日用品としても優秀である。ただ、デザインが探索者向けの登山用リュックのような武骨なものが多く、女性受けするような可愛らしいものは高価になりがちである。よって、アスカが持ってきているリュックも、今の服装にはあまり似合わないものになっている。


「サキなんか、『荷物はスーツケースに入れて、可愛いポーチとか持ってきた方が良い』なんて言っていたけど、ただ手間が増えるだけじゃない」


「言えてる。おしゃれは良いが、そのために機能性を落とすのは馬鹿らしい」


「そうよね」


【この似た者同士……おしゃれをわかっていませんね。良いですか、おしゃれは美少女になるために必要なことで――】


「俺の中にいるステラが騒ぎだてているが、気にしないでおこう」


「ピーチクパーチク言いそうよね。で、どこから回る?」


「ここは大通りから西ダンジョンに向かおう。この時期、フルーツ狩りをしているらしい」


「ダンジョンで?」


「なんでも、Eランクのダンジョンで危険性がほぼ無い上にリンゴや梨、ブドウ、モモといった果物が採っても採っても生えてくるそうだ」


「へえ~、そうなんだ。そんなダンジョン、あるって知らなかった」


「予約必須なうえに、地元でも宣伝していないそうだ。有名になりすぎて業者や転売ヤーがダンジョンの中に入って取り放題なんてしたら、農家がつぶれてしまうからやむなしと言ったところだろう」


「それはそうよね」


「まあ、こんな小言よりかは……おじさん、すみません。焼きたてせんべい2つ下さい」


「あいよ。ところで枚数限定のエクステラせんべえはどうだい?」


「ぷふっ」


 唐突に出てきたエクステラの言葉に噴き出すアスカ。天使の襲撃から亀北の地を救い、潜んでいた『評議会』の摘発に貢献したエクステラ。そんな生きた英雄を町おこしに使っていることもあって、ここが聖地と言わんばかりにそこらかしこに彼女のグッズが販売されている。


「良かったわね。グッズが売れてて」


「肖像権ガン無視のフリー素材になっているから、彼女に何の得もないがな。エクステラせんべえも良いかな」


「あいよ。エクステラ2つね」


 ソースをたっぷり塗って焼き上げた芳しいせんべいと、髪に当たることには海苔が巻かれている女の子の顔の形のせんべいが2つずつ出される。


「う~ん、あまり似てない?」


「そうか? デフォルメ利かせたらこんなもんじゃないか」


「ご本人がそういうならそれで良いか」


 納得したかのように思いっきり噛んで、エクステラせんべえをバリバリと割りながら食べていくアスカに対し、自分モチーフもあって食べずらそうにしている信二と対照的な二人だ。食べ歩きながら、今度はオルゴール館へと入っていく。様々な曲のオルゴールの他に、隣のガラス館のショップも兼ねているので、館内は煌びやかなものになっている。


「いろんなオルゴールあるのね」


「こっちはガラスの動物がオルゴールの中に入っているのか」


「可愛いわね、そっちのオルゴール」


「この中だとどれが可愛いんだ? このイルカの奴か?」


「それも良いけど……こっちかな」


「わ、ワニ……(意外なものが来たな)」


「この口を開けて何も考えてなさそうなのが可愛くない?」


「(〇オーみたいなものか。あっちはオオサンショウウオだったはずだが) まあ、ボケっとしているところは可愛いかもしれない」


「でしょう。でも、1万もするのね……」


「これくらいなら俺が出すよ」


「えっ、でも……」


「こういうのは欲しい時に買った方が良い。あとで欲しかったと後悔するよりかはな」


「じゃあ、お願いしようかな」


 ワニのオルゴールを買い物かごに入れて、他に欲しい物や友達への土産物によさそうなものが無いか見ていく。信二が手に取ったのはステンドグラス風のコップだ。


「この前、コップ1個割ったんだよな。せっかくだから、1個買うか」


「だったら、それは私が買うわ!」


「お金は十分にあるから、だ――」


「貰いっぱなしは趣味じゃないの」


「そういうことなら、買ってもらおうとするか」


 お互いに相手の欲しい物をレジまで運び、清算を終えるとアスカが少し恥ずかしそうに信二のコップを渡そうとする。


「信二、これ……」


「ありがとう、アスカ。こっちはアスカの」


「うん。大切にする(私の馬鹿、もう少し雰囲気ってのがあるじゃない!強引すぎるでしょうが!)」


 恋愛音痴のアスカは恥ずかしそうな笑顔を浮かべつつも、内心では激しくうろたえていた。そんな彼女の内心を知らない信二はガラスづくり体験コーナーへと手を引っ張っていくのであった。

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