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ゲーム世界へ転生したモブ♂、死ぬ未来を回避するために美少女(偽)になる  作者: ゼクスユイ


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第83話 文化祭 part4

 運動場と体育館を探すこととなったツトムとアスカだが、二人の関係は友達の友達。虎西での特訓で顔合わせた程度しかなく、ほぼ赤の他人と言って差し支えない。その二人の仲にいるはずの信二は別グループとして行動している。つまり、黙々と宝探しをする羽目となってしまった。


「……中々見つからないわね」


「目立つところには置かれていないだろうな」


「あるとすれば、隅の方とか何かの影に隠れているとかよね。そっちのサーチに何か引っかかった?」


「デコイなら見つかった」


 ツトムが汚れた野球ボールを拾い上げる。探すのは数字の書かれた握りこぶし大のボール。デコイとして運動場にあってもおかしくないサッカーボールや野球ボールが転がっており、遠目で見たり下手な探索魔法を使ったりすればデコイと見分けがつかないようになっている。


「面倒ね……」


「そうだな」


 それ以上の会話が続かず、ふたたび黙々とボールを探し始める。どんよりとした空気に耐え切れなくなったアスカが気になっていたことを聞くことにした。


「…………元生徒会長さん、信二とはどういう関係なの?」


「……どこまで知っている?」


「全部。エクステラのことも」


「そうか。俺と信二の最初の関係は天使という素材を提供してくれるスポンサーだった。だが、龍東の事件でリンネ……妹の死の真相が明るみになってからは協力者になった」


「スポンサーや協力者? 友達とかじゃなくて?」


「ビジネス的な付き合いしかしてないからな。いや、そもそも俺に友達と呼べるような……」


「もしかして、友達いないの?」


「……いや、そんなはずはない。発明は……どちらかというと先輩を慕ってくる後輩だな、うん。他は…………」


「……もう楽になったらどう?」


「訂正する。俺と信二は友達だ」


「ということにしてあげるわ」


 なんかいたたまれない感じとなって今度はこちらから会話を打ち切る羽目に。早いとこ合流したい気持ちを抑えながら、今度は体育館へと向かっていくのであった。



 一方、その頃、信二と発明ペアはとはいうと――


「何のあてもなく探したら、体力と集中力が削がれるだけ。まずは、どこに隠されていそうか検討しましょう」


「せやけど、そんなの分かるんか?」


「ちょっとしたクイズよ。自分ならどこに隠すか考えればいい」


「メタ読みってわけか。ウチやったら見つからんように、地面の中に隠すで」


「それは無いわね。老若男女問わず見つけられると言われている以上、探索魔法ありきの構成にはしないはず。あったとしても、半分埋もれている程度だと思うわ」


「だったら、この辺にあるとしたらどの辺にあると思うんや?」


「制限時間を考えると5個ともわかりづらい場所に隠されているとは思えない。1個や2個は目立つところに隠されていると考えているわ」


「どうしてそう考えるんや?」


「クリアできないゲームほどつまらないものは無いもの。考えてみて、残り1個で時間切れになるのと1個しか見つからず時間切れになるの。どっちが面白かったと思う?」


「そんなん、残り1個で惜しい!もう1回って思うわ」


「でしょう。だから、見つかりにくい担当のボールでもない限りは、このあたりで比較的目立ちやすい場所……プールや池の中とかを中心に探索魔法を使えば……脈あり。でも数が多いから、偽物が混ざってそうね。服は着替えているし、水の中に入るしか無いわ」


「ちょい待ち。水の中に入ったら、化粧取れるやろ。ここはウチに任せて置き。【引力】発動や」


 発明がプールサイドの上から手をかざすと、プールの中にあった数個のボールが発明に引っ張られて、水揚げされていく。その中には『3』と書かれたボールもある。


「まずは一つ目やな。どうする、この辺にはもう無いと思って校舎内調べるか?」


「それもありだけど、そういった心理を逆手にとってあえて2つを近い場所に置くことも考えられる。軽く調べるくらいはしましょう」


「それもそうやな。ところで、アスカちゃんとはどういう関係なんや。彼女か?」


「ただの友達よ」


「ホンマか? ウチの見立てやとあれは恋する乙女の顔やったで~」


 信二がそんなわけないと一蹴しようとしたが、その言葉を飲み込む。アスカが長年片思いだったカケルに振られてからひと月。心の傷が癒えて新たな恋を始めてもおかしくない頃合いではあった。そして、身近にいる誰かに恋するなら、誰になるか。考えれば、いや、そもそも、その答え自体、発明が既に喋っている。


「…………そんなわけないでしょう」


(おっ、すぐに否定せえへんってことはもしかして脈アリか。アスカちゃん、押せばいけるかもしれへんで!!)


 信二からの答えを聞いた発明は内心でガッツポーズ。あとは最後に一押しくらいして、恋の行く末はアスカ次第だと考えるのであった。



「まさか、体育倉庫のボール籠に紛れていたとはね」


「見つかったのは2番か。向こうも何個か見つけたかもしれん。連絡を取り合うか」


 アスカたちは別グループで行動している信二たちと互いの進捗について話し出す。見つかっていないボールは残り3つ。その全てが校舎にあるとは限らないが、残り時間的にももう一度外を調べなおす余裕はない。予定通り、残り時間半分は校舎内探索にオールイン。見つからなかったらそこまでだ。


『ところでな、今度はアスカちゃんと組みたいねん』


「なんでまたチームシャッフルするのよ」


『どうせ会話が弾まなくて気まずい気持ちになっとるやろっと思っての親切心や』


「……間違っては無いわね」


「すまん……」


『決まりやな。ゲタ箱前に集合や』


 ということで、ふたたびチームを入れ替えて、1Fをアスカ・発明ペア、2Fと屋上を信二・ツトムペアが調べることとなった。

 アスカたちが教室を手当たり次第、開けては机の中を調べるもそこにあるのはデコイの大きめのスーパーボール。肝心の宝となるボールはまだ見つけることができずにいた。


「さっきはすんなり見つけたんやけどなぁ」


「運が良いわね。こっちは最後に探したところにあったせいで、ずいぶんと時間かかったわよ」


「ウチらはローラーやなくて、隠して良そうなところを集中して探したからな」


「そんなことできるの?」


 発明が先ほどの信二の推理を話していくと、アスカが何か考え始める。もしかすると、信二みたいに隠し場所を推理しようとしているのかもしれない。


(せやけど、校舎内……例えば、どこかの机や引き出しの中ならいつかは見つけることができるから、難易度的には今まで見つけたのとそう変わらんし、狭めることできへんやろ)


「よし!賭けだけど、普通の教室よりも家庭科室とか職員室みたい特殊な部屋から探すわよ」


「理由はなんかあるんか?」


「ノーヒントで最後の1個が3-2の教室にありましたとか言われて納得する? それよりかは職員室にありましたの方がまだ納得できるわよ」


「言われてみればそうやな」


「だから普通の教室は後回し。まずはそっちから調べるわよ」


「ええで」


 ということで、近くにあった家庭科室に入り、鍋を1個1個ひっくり返していくと、カランコロンと4と書かれたボールが転がっていく。あっけなく手に入れてしまった宝にガクリと頭を垂れてしまう。


「さっきまでの苦労はなんなのよ!」


「まあまあ、見つかったんやからええやん」


「それはそうだけど……なんか納得できない」


「気持ちはわかるで。拍子抜けやもん。早く見つかったんやし、宝探しとは関係ないこと聞いてもええか?」


「良いけど。一体、何?」


「アスカちゃんって、信二のこと好きやろ」


「はあ!? なんで私が……アイツのこと……」


 条件反射的に否定しようとしたところを引っ込め、顔を赤く染め上げるアスカを見て、内心ビンゴとガッツポーズをする発明。あとは一押しするだけだ。


「なんちゅうか、ツンデレムーブもええけど、たまには素直になった方がええで」


「誰がツンデレよ」


「男ちゅうのはな、分かりやすい女の方が好きなんや。せやから、アニメでも暴力系だとかツンデレ系だとか無口系のヒロインが淘汰されたわけや」


「だ、だからそういうつもりで――」


「本人がその気でなくとも相手にその気にさせたらあかんのや。でないと失敗するで」


「うぐっ……」


 すでに好きだった幼馴染を友達に奪われた形で失恋しているアスカにとって、発明の言葉はいかなる魔法よりも鋭く突き刺さる。アスカ本人は知らないが、振られた理由として先にサキに告白されたことも要因の一つだろ。つまり、このままズルズルいけば今晩告白するつもりのみみみに奪われ、恋愛糞雑魚モンスターの称号は不動のものになるだろう。


「分かっているわよ。伝えればいいんでしょう。伝えれば!」


 心のどこかで色々と言い訳していたアスカもようやく腹をくくる。その顔つきは告白するヒロインではなく今から戦場に出るといったものだ。


(あかん、ちょっと焚き付けるつもりがやりすぎたわ。どうみても恋する乙女ちゃうもん。ボスモンスター討伐やん)


 声をかけて落ち着かせようと時間をかけている内に、2Fの探索チームから理科室で5のボールを発見したから、職員室で屋上への鍵を探してほしいと頼まれた。もうその頃には、アスカの目つきはマシなものに戻っており、発明は胸をなでおろすのであった。



「さてと、残る1番だけど屋上にあるのかしら」


「順番的には1・2・3が外で、4・5が校舎内やろ。屋上に無いんちゃうか」


「今までの捜索で見落としが無いなら、ここしか無いわよ」


「開けるぞ」


 ツトムが屋上に続く扉を開けて、屋上に出るとその中央にはでーんと1番と書かれたボールがこれ見よがしに置かれていた。罠を警戒して発明が【引力】でボールを拾うと、ファンファーレが鳴り響き、無事宝探しゲームクリアとなった。



「おめでとうございます!宝5つ集めた方には亀北旅館2泊3日の宿泊チケットをお渡しします」


「交換留学のときに泊まった旅館ね。あそこの温泉は良かったわ」


「そうか。それなら俺のチケット。お前に渡す」


「要らないの?」


「就活がな……元『評議会』の協力者となれば、就職先は引く手数多というわけにはいかないさ」


「大変ね。なら、このチケットはありがたく受け取っておくわ」


「ええな。ウチもどっかの誰かさんが抜けた穴を埋めへんとあかんから、肩が凝るんよ」


「すまん……」


「ええって。因果応報の報いは受け取るみたいやし。ウチまで責めたら可哀そうやん」


「ああ、そうだな。14時からの劇は必ず見に行く」


「ウチも二人が活躍しとるところバッチシ見とくで~」


 信二たちは発明たちと別れ、軽めの昼食を取った後、自分たちの劇に備えるため、体育館へと向かうのであった。

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