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ゲーム世界へ転生したモブ♂、死ぬ未来を回避するために美少女(偽)になる  作者: ゼクスユイ


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第82話 文化祭 part3

 文化祭2日目。

 午後から演劇があるものの、午前中は宣伝という名の自由時間である。そのため、信二は相も変わらずエクステラのコスプレ(本人)をしている。昨日と違うところと言えば、隣にいるのはみみみではなくアスカというところだ。


「それにしてもあっという間にハケるわね」


「エゴサしてみたけど、昨日の宣伝の効果で、エクステラそっくりな私目当てで来る客が多いみたい」


(そっくりどころか本物でしょう……)


 ジト目でエクステラ姿の信二を見る。クラスメートの手で女装している姿は自身で見ているし、信二が本物のエクステラであることも知っている。だが、今、目の前にいる彼女が信二であることがどうしても結びつけるのを脳が拒否反応を示す。


「ほんと、アンタのその姿、板につきすぎよ。二重人格だとか双子の妹と入れ替わっていますとか言われた方が納得できるレベル」


「100%演技だ。それに俺に妹は――」


「あら~、見ないうちにずいぶんと可愛くなったわね~」


「……母さん、父さんも」


 その声の主は信二の母親のものであった。高校生の息子がいる年相応の見た目はしているが、心は若いままでありたいらしく、どこか甘ったるいような口調で話し始める。その隣には息子を心配そうに見ている几帳面そうな父親の姿もあった。


「父さんな、お前がMIAになった時、どれだけ心配したかと――」


「はいはい、仕事放り出して母さんと一緒にテレビにかじりついたって話でしょう。その話するの何回目だよ……」


「一人息子が恐竜だかなんだかわからんところで、生死不明で行方不明になったと聞いたら――」


「分かっているって。()も反省したからさあ……それにこんなところで説教したらみんなの邪魔だよ」


「そうよ、あなた。しんちゃんがこんなにも可愛い娘になったんだから」


「娘呼ばわりはどうかと思うけどね……今日の14時から体育館で友達と一緒に演劇するから見に来てよ」


「絶対に行くわ。あなた、そこでぼっーと突っ立ってないで中に入りましょう。学生時代に戻った気分だわ」


「お、おい。とにかく、無茶するんじゃないぞ」


 母親が父親をぐいぐいと引っ張り、その場を立ち去る。親襲来イベントというサプライズが通り過ぎ、信二は頭の中でカチリとスイッチを切り替える。


「やれやれね……」


「アンタ、親の前で僕とか言ってキャラ違うくない? いつものアンタなら、口手八丁で言いくるめるでしょう」


「しょうがないでしょう。事故に遭うまではそういうキャラだったんだから」


「あっ……」


 信二に指摘されるまで目の前の出来事があまりにも自然すぎて、今の信二が異世界転生(憑依?)者だったことを今更ながらに思い出す。


(どう考えても、久しぶりに会った親子の会話じゃない! 本当に赤の他人なわけ!?)


 ステラ曰く演技力チートのことだが、アスカもその言葉を身をもって思い知らされることとなった。確かにこれだけの演技力があればエクステラを演じることは容易いだろうと。


「……アンタ、どこかの劇団員だったとか無いわけ?」


「ただの学生よ。今も昔もね。あるとすれば、演技を3年も続けたことくらいね」


 演技。それを聞いて、信二の『家族ごっこ』という言葉が脳裏に浮かぶ。まだ言葉すら交わしていないが、父親も母親も良い親なのは間違いない。だけど、肝心の息子は死んでおり、今いるのは赤の他人であることは知らない。


(だから家族『ごっこ』……偽の家族を演技ている)


 ()からすれば、元居た世界こそが本物で、自分たちが住んでいる世界そのものが偽物なのだろう。だからこそ、彼は演技し続けなければならない。親の知る思春期真っ盛りの『信二』と自分たちの知る飄々とした『信二』と『エクステラ』の3役を。


(だとしたら、本当の『アイツ』は――)


「なに? 難しい顔をして――」


「今日は思いっきり遊ぶわよ!」


 だったら余計なことを考えられないくらいに動けばいいと手を引っ張ってアリーナ施設へと向かっていく。午後から演劇もあることもあって激しい戦闘はNG。よって、交流戦ではなく【宝探しゲーム】に参加するため、列に並んでいく。


「ルールは4人1組で制限時間内にエリアに散らばる5つの宝を集める。5つ集めたら豪華景品……シンプルね」


「問題は誰がチームとして来るかってことね。探査能力に優れた人がくればいいんだけど」


「普通に考えたら前後に並んで――」


「ってことはウチらが同じチームちゅうこともあるってわけやな」


「その声は発明か」


「せやで~、ってなんでウチの時だけ素やねん!対応ちゃうやろ!そこはエクステラっぽい対応しろや!」


「関西人ってそういうノリが好きでしょう。それと生徒会長さんも来たのね」


「元だけどな」


 並んでいる間、ツトムが信二たちが帰ってからのことを話し始める。

 虎西の1件が落ち着いてきたころ、『評議会』の協力者であったことを警察に暴露。司法取引として、今までの罪は問わない代わりに『評議会』関係者のリストを提出したそうだ。その中には上級国民、いわyるうお偉いさんの名前がずらりと書かれており、連日の逮捕劇につながったそうだ。

 そして、いくら罪には問われないとはいえ、ツトムは自身の心の整理をつけるため、今まで所有してきた特許や発明品は関連企業に捨て値で売却、学院は自主退学してきたそうだ。


「ウチ、話聞いたときに辞めなくてもええやんって説得したんやけど……」


「リンネの旅立ちを見送るのに黒いままではみっともないからな」


「……彼女とは会ったことは無いけど、貴方にはお世話になったし、いつか線香の1つでも上げさせてもらうわ」


「ああ、きっと喜ぶ。何しろ、俺たちの恩人だからな」


 ツトムは柔らかく微笑む。そこには初めて会った時にあった目のクマや濁りは存在せず、彼の内面を映すかのような澄んだ目をしている。どうやら、溺愛していた妹の死をようやく乗り越えたようだ。

 そんな二人の様子をアスカはじっくりとみつめていた。


(信二って虎西の生徒会長には私たちよりも先に自分の正体を明かすくらいには仲が良いのよね)


 正直なところ、羨ましいと思った。一緒にいる時間、死線を掻い潜った時間なら自分たちの方が長いはず。それでも、本心からは信用されていないことにショックを受けると同時に嫉妬していた。

 そんなアスカを見た発明が面白そうなものを見たかのような顔をしながら、一緒に列を並んでいく。


「次の方、どうぞ」


 信二たち4人が宝探しゲーム用のマップに飛ばされる。飛ばされた先は学校エリア。マップの中央には校舎があり、北側にはプールと庭や駐車場、南側には運動場と体育館。制限時間は1時間とすべてのエリアをくまなく探すには時間的余裕はない。いかに効率よく探すかがカギだ。


「さて、どうする?」


「ここは無難に2手に分かれましょう」


「なんでや? 4人バラバラに探したほうが効率ええやろ?」


「理論的にはね。だけど、その方法だと一人が見逃した時点でアウトよ。時間的にも再捜索する暇はないもの」


「見落とし防止にも、ダブルチェックは必須というわけだな。理にはかなっている」


「あとはどうチーム分けするかだけど――」


「それなら、せっかく他校と手を組めるんやから、ウチは信二君と組みたいわ」


「はあああ!? ここは無難に――」


「別に構わないわよ。慣れ親しんでいる人より、客観的に見れる第三者から見た方が見落としは少ないかもしれないもの」


「ちょ、ちょっと!?」


「俺だと不安か? 俺の異能は探索向きじゃないが、魔法はある程度は使える」


「そんなことないけど……」


「決まりやな。ウチらはプール側、アンタらは運動場側。探索途中でも、残り時間半分切ったら、切り上げて校舎の中を探索するってのはどうや?」


「それで構わないわ。早くしないと貴重な時間が無くなるわ」


(な、なんでこんなことになるわけ~!?)


 心の絶叫がアスカの中で鳴り響く中、信二&発明ペアが北側へと向かっていくのを見送ることしかできないのであった。

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