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護衛騎士からは逃げられない

作者: みどり

第一王子の婚約者候補だったティアはある日突然、呪われた都市への追放を命じられる。

ーーでも待って、これって願ったり叶ったりなのでは!?


初投稿です。よろしくお願いしますmm

7.17 誤字報告ありがとうございます〜〜!

「聖女アリスティアよ、君を正式に私の婚約者候補から外し、筆頭聖女を虐めた罰として生涯「第二聖都マルセリア」への赴任を命ずる!!」


急に朝から大聖堂へ呼び出されたかと思えば、ほとんど顔を合わせたこともない第一王子から身に覚えのない罰を言い渡された。


えーっと?


状況を把握すべく周囲を見渡す。

王子の横には、私にいつも面倒な仕事を押し付けていた筆頭聖女であり、公爵令嬢でもあるエリザベス様。勝ち誇ったように私を見下ろしている。


なるほど?


「アリスティア様からはいつも面倒な仕事を押し付けられていたんです……!わたくしが筆頭聖女であることが気に食わないとおっしゃって……!」


エリザベス様はそう言いながら大きなお胸を王子に押し付ける。


王子、デレっとするな。顔に出てるぞ。

ていうか、いやいやいや逆じゃん!いつもエリザベス様が「お前なんかが殿下の婚約者候補なんて!」って言いながらありとあらゆる嫌がらせしてたじゃん!


反論したいところではあるが、いったん飲み込む。

もしかして私としてはかなり願ったり叶ったりな状況なのでは。


正直第一王子の婚約者候補とか面倒でしかなくて、どうにかして辞退できないかと悩んでいた。

こちとら平民出身だぞ。王族の婚約者なんて正直全然嬉しくない。

謂れのない罪で責められるのは不本意だけれど、このまま流れに乗ってしまえば婚約者候補からも外してもらえるし、マルセリアに赴任となればエリザベス様からも離れられるのでは??


あ、やばい、嬉しくてニヤニヤしそう。


「わかりました。筆頭聖女様、醜い嫉妬からくる今までのご無礼をお許しください。すぐにでもマルセリアへと向かいます。」


わざとらしく反省してます、みたいな表情で二人を見上げる。聖女なのに思いっきり嘘ついちゃった。まあいいか。


「アリスティア、反省しているの?」


「ええ、もちろんです。筆頭聖女とあろうお方に薪割りを押し付けたり、民間への奉仕活動を全て代わりに行かせたり、寒い日に神殿の外の掃除が終わるまで閉め出したりしてしまい申し訳ございませんでした」


そう言うとエリザベス様の頬がひくつく。それもそう。今言ったのは全て、エリザベス様が私にやったことだ。心当たりがありすぎることだろう。


「まあ、反省しているのなら今までの分、私に代わりに首都の聖女の任務を託しましてよ」


「そんな!とんでもございません。今まで散々無礼を働いたのに、首都で筆頭聖女様と同じ空気を吸うなんて烏滸がましいことでございます。現在マルセリアにいらっしゃる聖女様はもうご高齢です。私がマルセリアに行き、この先一人で第二聖都を守る任をこなすことこそが、何よりの罰であり、償いといえましょう」


自分でもびっくりするくらいスラスラとセリフが出てくる。

エリザベス様は今まで聖女の仕事を真面目にしたことがほとんどない。エリザベス様の取り巻きの聖女たちも全部私に仕事を押し付けていた。自慢じゃないけど神聖力の量は多いし、平民育ちなのでタフなのだ。


エリザベス様は私を首都に残して一生仕事を押し付けたいみたい。

ということはマルセリア行きは王子が決めたのかな。王族はマルセリアのこと嫌いだからなあ。

エリザベス様は今頃内心焦ってることだろう。私は畳み掛ける。


「今夜すぐにでも発ち、これから呪われた民たちの浄化に励みます」


そういうと大神官様が私の前に立ってくれる。


「では殿下。アリスティアもこのようにおっしゃっているのでここからは神殿が引き取ります。必ずアリスティアをマルセリアに向かわせます。」


私が大神官様を見上げると、目が合って頷いてくれる。


「頼むぞ。エリザベス、それでいいかな?彼女は一生呪われた土地で浄化作業させる」

「え、ええ」


ちょっとやばそうなエリザベス様をよそに、私のマルセリア行きが確定した瞬間だった。


***


大神官様と退出して、そのまま足早に執務室へと向かう。

バタンと扉が閉まったのを確認して私は叫んだ。


「やったーーーーー!!!!!」


バンザイして飛び跳ねる。うれしーー!


「こらこら。おやめなさい」

「あ、すみません、嬉しくて」


大神官様はしょうがないなという顔をして私の頭を撫でた。へへへ。

大神官様は私の親代わりなのだ。これでもうるさい貴族や王族たちからいつも私を守ってくれている貴重な人なのだ。


「君をこのまま首都に置いておくと、権力闘争に巻き込まれていい未来が見えなかったから、君の名誉を傷つけるとは思ったが、このような形をとらせてもらった。よかったかな?」


「もちろんです!さすがです、大神官様」


さすが私を路地で拾い、ここまで育ててくれただけはある。嬉しさのあまりまた飛び跳ねそうになる。これで面倒な中央の権力争いからも離れられる。


マルセリア勤務とか嬉しすぎる。

王家の皆さまはマルセリアを『呪われた土地』というけれどそれは真実ではない。

マルセリアは数世代前の結界の聖女様が、呪いを受けてしまった恋人のために作った土地だ。


聖女によって張られた結界で覆われた街。


街には結界により二つの特性がある。

一つは『呪いの進行を止める』というものである。どんなに複雑な呪いも、マルセリアに入れば症状と進行が止まる。そのため住人の多くは呪いを受けたものとその家族である。

そしてもう一つは『呪いに関わった人間を受け入れない』というものだ。呪いをかけたことがある人、それに関わった人を受け入れない。


だから呪いをかけた人間はマルセリアに足を踏み入れることができない。呪いを受けたものたちは安心して暮らすことができる。

確か王弟殿下が随分前に呪いを受け、マルセリアに移り住んだと聞いている。今のマルセリア領主のはずだ。

噂では陛下が王位争いのために王弟殿下を呪ったのではないかと言われている。真偽は不明だけど、だからこそ『呪われた土地』とか言って王族がマルセリアに近づく理由を無くしているんだろうなとは思う。

マルセリアの結界に弾かれれば、それはつまり王族が『誰かを呪った』ということだから。


「マルセリアは確か結構大きな街なんですよね」

「そうだね、呪いを受けた貴族や平民を受け入れていくうちに一族も移り住んだりと、結果大きな街になっていると聞く。元々結界に豊穣の効果も入っていたから、急速に街が発展してね」

「神殿も大きいのですか?」

「そこそこ大きいな。呪いの浄化に優れた神官が多くいるよ」

「私も浄化したほうが良いでしょうか?」

「君の役割は結界のメンテナンスだから、そこまで浄化の勤務をこなす必要はない。そもそも君の住まいは神殿とは別にある。街郊外に屋敷があるからそこを使って欲しい。現在の聖女もそこに住んでいるから、引き継ぎのためにも街に着いたらまずそこへ向かっておくれ」


そう言って住所を書いた紙を渡された。


「あの街では結界の聖女の役割が大きいからな。結界の聖女がいるから街が成り立っている。君の居心地もいいはずだよ」


なるほどー、などと感心していると廊下の方からドタバタと大きな音がする。

それからノックもなしにドアが勢いよく開いた。


「おや、ナイトが遅れてきたね」

「ティア様!!!」

「あらシング、おかえりなさい」


息を切らして入ってきたのは騎士の服に身を包んだ、綺麗な顔をした私の専属護衛であるシング。

異国の血が濃く、褐色の肌に銀の髪、それから緑色の澄んだ瞳に大きな体。騎士というのに整った容姿。おまけに近くにいるとなんだかいい匂いもする。ここ最近、貴族令嬢の間では一番人気らしい。私のもう一人の味方。


今日は皇室の騎士団との合同訓練とかなんとかで午前中留守にしていた。訓練が終わって先ほどの騒ぎを聞いて慌ててきたんだろう。汗もかいているし珍しく息も切らしている。


「ご無事ですか!?」

「大丈夫だよ、なんともないから」


シングは近くに来ると、真剣な顔で全身をペタペタ触り傷や怪我がないかを確認する。「筆頭聖女ごときがティア様に」などと不敬すぎる言葉をぶつぶつとつぶやいては、何度も私の体を確認する。


「別に身体的に何かをされたわけではないよ。大丈夫だから」

「当たり前です。ティア様に何かあれば私は誰であろうと相手を討ち取ります」

「血の気が多いなあ」


本当に血の気が多い。

なんでこうなってしまったのか。引き取った当時はおとなしい子だったと思うんだけどなあ。いつの間にか「ティア様命!」みたいな子になってしまった。


シングと初めて会ったのは、専属護衛を選ぶために騎士たちの訓練場に行った時。当時シングは一番年下で、それも異国の見た目が濃く、若い騎士たちにイジメられていた。


イジメられてもその目から光を失わず、一人で孤独に戦う姿がなんとなく自分と重なって、助けてあげられればいいな、なんて思いでシングを専属護衛に選んだ。

他の騎士から「シングに護衛が務まるはずがない」って文句をたくさん言われたけど、それでも私はシングを連れて帰った。


一緒にご飯を食べたり、鍛錬を見守ったり、傷を癒してあげたり、最初は私がシングの面倒を見ていたはずなのにいつの間にか逆転して、今では超過保護な私の護衛騎士となってしまった。朝も起こされて、ご飯も用意してもらってるし着替えもお風呂も手伝ってくれている。

オカン兼護衛騎士。

私にとって大事な味方。大事な人。


エリザベス様からの嫌がらせに対して、報復しようとするシングを止める生活も今日で終わりかあ。


「シング、何があったか聞いたの?」

「ティア様が第一王子の婚約者候補から外されたとお聞きしました」

「そう、そうなの。そういうことだから」

「ティア様はよろしいのですか?」

「王子のことなら顔すらもギリギリ覚えてないくらいだったから、別に気にしてないよ。むしろ首都の聖女間でのいざこざから解放もされるし超嬉しい」

「なら良いです」


そういうと全身の健康チェックが終わったらしい。怪我もなくほっとしたような表情をして私をソファに座らせてくれる。それから紅茶とお菓子もくれる。

やっぱり子供扱いだなあ。あ、このお菓子おいしい。


「これからティア様はどうされるのですか?」

「それは…「それはこれから決めるの」」


シングの問いに答えようとした大神官様の言葉を遮る。


「これからの動きは、この後大神官様と話し合って決める予定よ」


ですよね?と大神官様を見れば、話を合わせて「そうだね」と言ってくれた。


「シング、そういうわけで今日は私のお仕事もなし!護衛も大丈夫だからゆっくり休んでよ。どうせ合同訓練で騎士団に喧嘩売られて疲れてるでしょ?」


「喧嘩を売られたのは事実ですが、弱すぎて疲れてません」


「まあまあ、とにかく、いいの!今日は護衛のお仕事はなし!この後大神官様と今後のこととか色々と整理したいの。何時までかかるかわからないし、今日はもう休んでいいから。また明日から来てくれる?」


ずるいかな、と思いつつ、頑張ってシングに上目遣いでおねだりをする。シングは私のこのお願いに弱いのだ。そういうとシングはちょっと納得いかなさそうな顔をしつつも「わかりました」と言って退室していった。


「大神官様、シングはもう行きましたか?」


私は大神官様ほど人の気配を感じられないので確認する。大神官様は頷く。


「じゃあ、今から一時間後に出発します。目立たないように出立することはできますか?」

「シングを置いていくつもりか?」

「はい、少し寂しいですけれど」


嘘。少しどころかめちゃくちゃ寂しい。


「あいつはついて行きたがると思うが…」

「どうでしょう。シングはかなりの実力があります。私の護衛を続けている限りは出世もできないし、結婚もできないでしょう?シングのことは大切です、だからこそあまり私の人生に縛りつけたくありません。今が一番いい機会なのです」

「もしシングがお前と一緒に行きたいと言ったら?」

「ないとは思いますが」

「私はお前と離別することの方がないとおもうけどねえ」

「まあ、どうしてもついてきたいというのなら、私と同じ墓に入る覚悟を決めてからいらっしゃいと言いますね」


マルセリアは結界の聖女が治める土地だから。おそらく、私はこれから死ぬまでマルセリアにいることになるだろうから。


**


一時間で支度を整えて、神殿のほとんど使われていない裏門から出ていく。あたりはすっかり暗くなっていた。裏口には目立たない小さな馬車が止まっていた。大神官さまと通じている神官が私を馬車に乗せてくれる。


「マルセリアまでは2日ほどです。ないとは思いますが、念の為護衛を二人つけております。どうかお気をつけて」

「ありがとう。ついたら手紙を飛ばします。大神官様によろしくお伝えください」


そういうと神官は静かに頷いた。馬車が神殿を離れる。


手荷物はカバン一つ。元々平民出身だから荷物が少ない上に神殿に来てからも増えてない。生活に必要なものはマルセリアの神殿にあるだろうから、これだけで十分だ。

カバンの中には休日用の私服と少しのお金、それから昔家族やシングからもらった手紙が入っている。

シングと別れるのだけが少し残念だけど。


「まあ、あんな話を聞いちゃったら仕方がないわよね」


少し前に神殿で貴族出身の聖女たちが話しているのが聞こえたのだ。

なにしろシングは今やこの国では5本の指に入るほど強いらしく、合同訓練のたびにその姿を見るために若い令嬢たちが見学に来るのだとか。

声をかけようにも「私はティア様に仕える身ですので」と言って取り付く島もないらしい。

実力がどれだけあっても、私のそばにいる限り「護衛騎士」のままだ。

皇室の騎士団にでも入れば、すぐに彼は手柄を挙げて、爵位をもらえるかもしれない。もしくは貴族のご令嬢と恋に落ちるかもしれない。


私のそばを離れないから、それもできない。


手放した方がいいのかもな、とは思っていた。彼は幼い頃の恩もあるだろうし、自分から離れたいなんて絶対に言わないだろう。

だから今回はいい機会なのだ。

大丈夫、私は結界の聖女だから、護衛がいなくても守ることだけは得意だから。シングもそれをわかっているはずだ。


**


二日間、幸い追手もなく無事にマルセリアの街に辿り着いた。一応移動についてきた人たちの負担を減らすために、常に姿を隠す結界をはっておいてよかった。


「聖女様、つきました」

「ありがとう……うわっ!?」


馬車のドアを開けた瞬間、私は思い切り腕を引かれた。

落ちる!と思ったら誰かに抱きしめられて、それからすごく親しみのある香りがした。


「シング……!?あっ!?え……!?」


なんで??なんでいるの??というかなんで私より先に着いているの!?

空気を読んでか二日間護衛をしてくれていた二人が離れていくのが見える。え、まって、行かないで。あれ??


「シング、なんでいるの…」

「ティア様、私があなたのおそばを離れるはずがないでしょう」


顔を上げるとシングの苦しそうな目と目が合う。


「どうして置いていこうなどと……ッ」


あまりの悲痛な表情に私は「あ…」とか「う…」という音しか出ない。シングが泣きそうな顔してる、それを見て私も泣きそうになる。


「ごめんなさい……」

「もう二度と置いていかないと約束していただけますか?」

「…」

「ティア様?」

「だって……私がシングを縛っているから」


言い出すと止まらない。


「聞いたわよ…シングって人気なんでしょう? 私の護衛騎士を降りれば、結構いいポジションにつけるんでしょう?そしたら貴族のご令嬢たちと結婚もできちゃうんでしょう?でもシングは私の護衛騎士をしているからそれが叶わないって」


自分で言っていて悲しくなってくる。

そう、私は結界がちょっと得意な聖女ってだけで、シングに見合うだけの価値はないのだ。所詮は平民上がりのただのありふれた聖女。


「だからここでお別れよ。あなたは首都に帰って」

「ティア様」


離れようと腕に力を入れたけど、シングの力が強すぎて離れられない。離れようとしたことで余計にシングの腕に力が入る。ぐぬぬ。

何度か離れようと奮闘したけど、圧倒的な筋力差で諦めた。

はあ、とため息を吐くとぐいと顔を上に上げられ、緑色の瞳と目があう。


「ティア様、確かにそれは事実です。私がティア様の護衛騎士を辞めれば、おそらくすぐに皇室の騎士団からお声がかかり、副団長あたりに収まり、それからいくつかの貴族から求婚を受けるでしょう」


うう、ほら、やっぱりそうじゃない。

私はまた下を向こうとするけど、シングはそれを許さない。


「ですが私はそれを望んでいません」

「私が一番に望むのはティア様のおそばに一生いることです。」

「ティア様、愛しています」

「ティア様がそのような気持ちを抱いておらずとも、私は愛しています」


そう言って逃さないと言わんばかりに再び抱きしめてくれる。

ああ、シングの匂いがする。だめだ、安心してなんだか泣きそう。


「あなた、私のこと妹だか子供だかと思ってるのだとばかり…」

「そんなはずありません」

「だって着替えも風呂も、平気な顔して手伝ってるじゃない」

「必死で耐えてるだけです。自分の部屋に戻った後はとんでもないことになります」


なんだそれ。とんでもないことって。


「なんでそんなに好かれているのかわからないわ…」

「私がどうしてティア様を愛しているのか、語り出すと最低でも3日ほどかかるのですが…」

「あ、じゃあダイジョウブデス」


そういうとお互いなんとなく笑う。


「私と一緒にいたら、もうこの土地から一生出られないよ?」

「それは大きな問題ですか?確かにここは呪われた人たちの土地ではありますが、結界の聖女の庇護下にありますし、他の土地よりもむしろ過ごしやすいはずですよね」

「そうだけど…出世も一生できないよ?」

「大丈夫です。ティア様のおそばが、私にとって最も高い地位ですから」

「貴族にもなれないよ?」

「ティア様、そう言って私から離れる理由ばかり探さないでください」

「そういうわけじゃッ」

「ティア様は私のことがお嫌いですか?」


その質問はずるい。そんなの


「大好きに決まってるじゃない…」


そういうとシングは嬉しそうに笑って、私を抱え上げた。今まで見た中で一番幸せそうな顔だった。


***


そうして、私とシングはマルセリアで一緒に暮らした。


前任の聖女様のおかげで、神殿の整備も思ったより行き届いていたし、神官たちも街の人もいい人ばかりで親切にしてくれた。

風の噂で、数年後に第一王子と筆頭聖女様が遠い地に飛ばされたことを聞いた。なんでもいろんなことがうまく回らなくなったとかなんとか。トラブルを起こしたとか。


それもそうだよね。私がほとんどの仕事を肩代わりしていたから。

何度か王家や神殿から手紙が届いた。

神殿からは「王家からどんな手紙が来ても、気にせずゆっくり過ごしなさい」という内容だった。

王家からは私の帰還を求める内容だった。私はその手紙をこの地を治める王弟殿下に丸投げした。

王弟殿下はその手紙を見ると少し顔を顰め、一応中身を確認したのち暖炉に放り投げた。


「君が欲しいなら、迎えに来るべきだろう。まあ無理だろうが」


王弟殿下はそういうと笑いながら首元にある呪いの印を指差した。

私は結局このままこの土地でシングと結婚して今では二人の子供がいる。とても幸せ。


「シング、私についてきたんだから、同じ墓に入ってもらうんだからね」

「もちろんです」



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 周辺のまちとの交易はどうしてるのかな? 呪われた商人が買付に行くのかな…
[良い点] 呪われた者かその家族だけしか入れない結界の都市、っていう設定が斬新。そういう結界ができた理由も無理なく納得できるものでした。 そして呪いをかけた側(その関係者)は入れない=王族が入れない(…
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