4話 人を好きになるのに理由なんているの?
時を戻そう!!ぺこぱじゃないよ!!!
「私、お兄ちゃんと結婚する!」
「は?」
思わず声が出た。
何も聞かなかったことにして今からでも、部屋に戻りたいが、しっかりと聞いてしまったからには、自分の問題にもなってくる。
居間に入る前で聞けていたならば、今からでも耳を塞いで部屋に戻れたのだが……そういう訳にはいかなそうだ。
沈黙が場を支配する。
義父さんは、焦ったように交互に僕と羽乃を見て、あわあわしてる。
一番、焦っているのは羽乃かと思ったが、意外にも、冷静そうに僕を見ていた。
というか、睨んでる気がする……。
それは、まるで僕を試すかのような眼差しで、いつも穏やかな羽乃とは違う雰囲気に少し悪寒を感じるほどだ。
「お兄ちゃんは、私の事どう思ってるの?」
そして、言った。
今度こそ、僕を試すような発言。
てか、何そのマンネリ化したカップルみたいな会話。
どう思ってるかって聞かれたって、今までそんな事考えたことないから分からないのですが?
こんな時は、助けて、マイファザー!
マイファザーは、いつの間にかいなくなっていた。
なんて、逃げ足の速さだ……。メタルスライムかよ……。
会社に行く、という書き置きを残して、消えていた。
こうなったら、本心を話すしかない!
「何言ってんだよ、家族さ!」
当たり前の答えだろう。
今まで、少なからず同じ屋根の下で寝食を共にした家族だ!
それ以下でも、それ以上でもない!
「そんな、家族だなんて……」
読者諸君は、彼女がこの発言と共に、どんな反応をしたと思う?
考えてみて欲しい。
悲しそうに、しゅんとしたと思うか?
いいや、違うね。
嬉しそうに、ぽっと頬を赤らめました。
「違うよ!そういう意味の家族じゃないよ?兄妹としてのだよ?!」
「なーんだ、残念…」
何が残念なんだか分からないが、僕の思いはあまり伝わっているようには思えない。
では、僕はそろそろ……部屋に戻ります。
もう、疲れた。
すると、まだ質問があるようで羽乃は、口を開く。
「ところで、お兄ちゃんは彼女さんとかいるの?」
何が、ところで、だよ…。
「いたら、どうすんだよ?」
「い、る、の?」
おぉ、今のが殺気か……、こえぇ。
「いいや、居ないぞ。」
確かに、僕はモテる。
でも、誰かと付き合おうとは中学時代には思わなかった。
思わなかったというよりは、良い人が居なかったとも言えるが。
どちらにせよ、まだ僕は彼女が出来たことはない。
いや、作ろうとすればいつでも……。
「ふぅ、良かった…」
そう言って羽乃は、くしゃりと頬を緩めた。
…………ン。
いや、決して可愛いなんて思っていないぞ。
仮に可愛いと感じていたとしても、小さく微笑んだ妹に、家族として可愛いと感じただけだ。
どこかの誰かさんみたいに勘違いしないで欲しいから言うが、家族というのは、兄妹としてという意味だ。
「だから、お兄ちゃん……いいえ、頼くん!私と結婚して下さい!」
「は?」
一体全体、どういう思考回路をしていたら、そういう結論になるのだろう?
「てか、羽乃は僕のことが好きなのか?」
「うん、そうだけど?」
「なんで?」
「人を好きになるのに理由なんているの?」
え?
なんですか?
哲学ですか?
なんか、もっともなこと言われて論破されちゃったんですが?
「いや、なんで僕なのさ?僕以外にも沢山良い男なんて……」
「いや、いないよ?」
なるほど。
いないのか。
納得だ。
僕より良い男なんていないのか、ふむふむ。
その通りだ……。
いや、幸せを噛み締めている場合では無い。
この状況をどうにか打破しないと、今後の生活に大きく響く。
それどころか、今後の人生を大きく左右する。
「でも、義妹だとしても家族は結婚出来ないんだぞ?」
「ん?ああ、それなら大丈夫だよ!」
何を根拠に……、大丈夫なんて言葉が出てくるんだ…。
僕が名字が変わること知って絶句するのは、また別の話。
ダメだ。疲れた。
まさか、ほぼ関わりの無かった妹が、僕と結構願望があるなんて、思いもしなかった。
これは、非常にマズイ。
あんまり、深く根付くとどうにも出来なくなってしまう。
その前に……。
目標を決めよう!
高校入学までに、僕との結婚を諦めさせよう!
そして、一人は良い関係の女を作る!!
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なんて、思っている時期が僕にもありました。
最初は、探り探りだった羽乃も高校入学時には、僕への愛全開で迫ってくるまでに進化を遂げた。
極めつけはクラスの自己紹介。
「前橋北中学校から来ました!藤崎羽乃です!私は、唐草頼君と将来を約束した仲なので少し度の過ぎた彼への行動があるかもしれないですが、是非暖かい目で見守ってください!」
その何とも清々しい笑顔で言った。
妹でなければ惚れてしまうかもしれないような、可愛らしい笑顔で言った。
でも、妹であるから寒気しかしない。
どうしてこうなったんだ……。
彼女の自己紹介にクラスメイトは拍手喝采で応えた。
なんなら、スタンディングオベーションだ。
何で、皆僕を見る。
否定できないじゃないか、やめてくれ。
楽しいスクールライフを僕にくれ!
こうして、僕の高校恋愛プランのドキドキクラスメイトガールフレンド大作戦は、終了を告げたのであった。
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