4 革命起こしてやらぁー!
イェイ、イェイ。
こちら、ナルちゃんでーす。
今日はなんと、おめでたいことに私の誕生日なのです!
イェーイ!
え?何歳になったかって?
レディに年齢を聞くなんて失礼ですね。
ふふん。まあ、今日は特別に教えてあげましょう!
なんと驚く勿れ!
一歳です!さらば、0歳!こんにちは一歳!
ふはははは!どうだ!凄いでしょう!
え?すごくない?レディの年齢じゃない?驚きもしない?
いや、一年も生きれたんですよ?赤ん坊の体で!
どれだけの苦行だと思っているのですか!
あと、体は確かに一歳児ですが、中身は立派なレディですよ!
ん?いや、前世をよく思い出してみると、どちらかと言えば男よりの感性だった気がする。
常にズボンだったし、髪も短かったし、極めつけは女の子を見てドキドキしていましたね。
うん、レディよりジェントルマンだった気がする。
まあ兎に角、この世界に転生して無事一年も経ったのです!
いやー、おめでたいですねぇ。
と言うわけで、今日は私のお誕生日会があるようなんですねー。
実はこれは私のお披露目会も兼ねているみたい。
だから私も今日はこの小さな体に合うような可愛らしいドレスを着ております。
鏡で自分の姿を見ましたが、めちゃくちゃ可愛いです。天使です。
今まで鏡をあまり見なかったのですが、我ながら美形ですねぇ。
試しに鏡の前で笑顔を作ると、周りで見ていたメイドが二人ほど倒れた。
確かに自分でもこれはずるいだろうと言いたくなるようなとっても可愛らしい笑顔。
でも、それとは別の感情も渦巻く。
私は生粋の日本人で黒髪で黒い瞳だったのに、鏡の中の私は金髪で鮮やかな緑色の瞳を持っている。
手には刀を振ってできたマメもなく、肌は日焼けをしていないし、泥臭さもない。
前の顔は特段美人ではなかったけど、鍛え抜かれた体に自信を持っていたからちょっと寂しい。
いかにもお嬢様という顔は何というか…………面白みがない。
まあ、いずれボロボロになるからまだ良いか。
さて、そろそろかな。
丁度その時母が入ってきました。
「ナルちゃーん、そろそろいくわよ。」
「あーい」
ううむ。
はいも満足に言えぬとは情けない。
そのまま母に抱かれ、会場へと向かう。
母の胸は今日も張りが素晴らしい。
かなりの大きさのはずなのに垂れないという奇跡。
なんてどうでも良いこと考えていると、会場に着いた。
母が私を下ろしました。
ここからは歩いて行きます。
ふふふ、そうです!
私、何と歩けるようになりました!
え?一歳時の歩き方はどうせよちよち歩きだろうって?
いや、ほら、そこは、一人で歩けるだけすごくない?
伝い歩きじゃないんだよ?
やっと最近歩けるようになってきたんだよ?
ま、まあ!そんなことより!お誕生日会!
母と一緒に会場に入ります。
「セシリア・フォン・ノイラート子爵夫人!並びにナルーシャ・フォン・ノイラート子爵令嬢のご入場です!」
パチパチパチパチパチパチ
うおっ!
思ったより人がいる!
何と家は子爵家だったのか。
ノイラートという家名は自己紹介の練習の時に知ってたけど。
それよりも”フォン”か………。
前世で言うところのドイツ辺りの貴族の称号だった気がする。
世界地図を見たいよ。
まあ、そちらは後で考えるとして、今はしっかりと無表情を作りましょう。
「何と可愛らしい……。」
「天使のようだわ……。」
「笑った顔が見てみたいわ……。」
色々聞こえるけど、無視して人見知りのような表情を作って壇上で挨拶をする。
「なるーしゃ・ふぉん・のいらーとでしゅ……。」
滑舌………。
大勢の前で、舌ったらずさを披露するのは屈辱的だな……。
無表情を作って無愛想に挨拶したのに、ご婦人方から黄色い声が上がる。
何故?
とりあえず挨拶は済ませたので、あとはお飾り人形を演じる。
人見知りをする一才児モード。
え?何でそんなことをするかって?
決まってるじゃん。
面・倒・臭・い!これに尽きる!
貴族の面倒ごとに私を巻き込んでくれるな。
私は既に貴族だから手遅れかも知れないけど。
色々な人に挨拶されながら周りの人を観察。
何となく前世の感覚で言わせてもらうと、ダッセェ……。
男性は半ズボンでカツラっぽいものをつけていて、お坊ちゃんと言う言葉がに合いそう。
女性は腰辺りがメチャクチャ膨らんで、大型犬でも入っているのかな?
頭も邪魔だろあれ。白い巨大ブロッコリーだな。
ファッションセンスから分析すると、恐らくまだ前世で言う所の19世紀には入っていないと思われる。
でも間違いなくこれから革命が起こる。
時代は川のように流れゆくものだから、いつまでもこの貴族という体系が残るわけでない。
平民による革命が起きるはず。
…………。
いっそ、もう私が産業革命やフランス革命みたいなものなどを起こして時代を進めるか?
どうせ起こると思うからなー。
魔法という不安要素はあるけど、それはそれで面白そう。
小説に出てくる貴族とイメージが違いすぎて、正直言ってここにいる貴族ムカつく。
ゴテゴテ飾りすぎて己の良さを殺してる。
世界の役に立ちたいと願ってこの世界に来た訳だし、どうせならでっかい革命起こしてみようかな。
ふふふ、面白そう。
どうせ起きるなら、早いに越したことは無い。
ああ、でもきっと沢山の人が死ぬ革命になるだろうな。
でも、時代の変化に伴う流血は当たり前。
それは、多くの歴史が証明してる。
ならば、その業を私が背負い地獄に行くことになろうとも革命を起こそう。
どうせ、誰かその役をやらなければならない。
せっかく生まれ変わったんだ。
私がその役をやってやろう。
この世界に役立てるならば。
こんな風に頭の中では物騒な新たな決意をしているが、まだパーティに参加しています。
普通の1歳児の考えることじゃないよね……。
まあ、今日はもうこのパーティを無表情で楽しもう!
では、皆様ごきげんよう!