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必ず勝つさ

 俺は向かい合う。

 一度は敗れた相手に、正面から堂々と。

 

 これは……。


「魔剣に権能の力を融合させたのか?」

「気づいたか。さすがに鋭い。あの攻撃から逃げ切っただけはある」

「助けられただけだ」

「助けた? 一体誰が――」


 サタンが接近する気配に気づく。

 俺の背後に降り立ったのは、遅れてやってきたネロだった。


「アレン兄さん速すぎっすよ!」

「よく追いついたな」

「全然追いつけてないっすからね」

「ネロ!」

「あ! お久しぶりっす主様! やっと帰ってこられたっすよー」


 リリスを見つけたネロはしっぽを嬉しそうにフリフリする。

 感情の起伏で尻尾が反応するのは、普通の犬と似ている。

 困惑するリリスが俺に視線を向ける。


「どういうことじゃ? なんでネロと一緒に?」

「ボロボロだった俺を介抱してくれたのが彼女だったんだ」

「そうじゃったのか」

「そうっすよ! 急に目の前に現れてビビったんすから。というかなんすかこれ! 力が抜けていくんすけど!」


 ネロのしっぽが逆立つ。

 寒気や嫌な感覚を拒絶している。

 原因は間違いなくサタンだ。

 奴の力が、この場にいる者から力を吸収している。

 魔力も聖なる力も無関係に吸い出している。

 通りで、これだけのメンツが揃って苦戦するわけだ。

 おそらく、奴の吸収に影響を受けないのは……。


「俺だ」

「ワシも平気じゃ」


 ルシファーとリリスが名乗りを挙げた。

 予想通り、この二名にはサタンの吸収も届いていない。

 二人が持つ力の種類が理由だろう。

 とはいえ、すでに前戦でかなり消耗している。

 他のみんなも力の吸収に抗っているが、止められていない。

 このまま放置すれば、完全に力を吸い取られるだろう。

 一番危ないのはサラだ。

 彼女は聖なる力も、魔力も持たない。

 アテナの力で抗ってはいるが、吸い取られるのは生命力だ。


「ルシファー、リリス、みんなを安全な場所に避難させてくれるか?」

「吸収のエリア外へ出ればいいんじゃな?」

「ああ」


 力が吸われる者を残すことは、サタンを強化し続ける結果に繋がる。

 戦えるのは、俺を含めて三人だけだ。


「二人もその間に体力を回復させてくれ」

「一人で戦う気か?」

「ああ、遅刻した分、しっかり働かせてもらうよ。それでいいよな? 上司」


 俺はリリスに尋ねる。

 忘れがちだが、俺はリリスにスカウトされ魔王の部下に雇われた。

 本来、命令権は彼女にある。

 魔王として、トップとして未熟な彼女を育てようと頑張ってきたが、もう十分だろう。

 俺がいない間も、彼女は折れずに戦ってくれた。

 それは紛れもなく、彼女の成長を示している。

 彼女の成長を感じ、思わず笑みがこぼれる。


「……任せてよいのじゃな?」

「ああ」

「もう、いなくなったりせんのじゃな?」

「もちろんだ」

「勝つんじゃな?」

「――そのために戻ってきた」


 俺の言葉にリリスが頷き、自信満々な笑顔で言う。


「わかった! 任せるのじゃ!」

「おう。任せろ!」


 上司から部下への指示だ。

 これを全うできなくて、何が部下だ。

 上司の信頼を失わないためにも、精一杯結果を出すとしよう。


「勇者アレン」


 ルシファーが俺に呼びかける。

 この中で彼が一番元気そうだから、自分も残ると言い出すかと思った。

 サタンは強敵だ。

 先ほどまで戦っていたのがルシファーなら、自分の獲物を取られたくはないだろう。


「手早く終わらせろ。俺とお前には約束がある」

「――そうだな」


 と思ったが、どうやら俺の気持ちを汲んでくれるらしい。

 一人で戦いたい、リベンジしたいという俺の我儘を。

 口に出さずとも、彼は感じていた。

 本当に、ルシファーと俺はよく似ている。

 腹が立つことに……けど、今はそんなに嫌な気分じゃないな。


「勝ってくる」

「当然だ。お前は……最強の勇者だろう?」

「ああ」


 宿敵に鼓舞され、俺はサタンと向かい合う。

 動けるルシファーとリリスに先導され、皆が戦場から離脱する。

 不思議なことに、話している間にサタンは攻撃をしてこなかった。

 空気を読んでくれた?

 否、そんな優しい相手ではない。

 本物のサタンならともかく、あれは魔王の集合体だ。

 正々堂々なんて言葉は似合わない。

 理由はただ一つ、手を出すことができなかったからだろう。


「何をした?」


 サタンが俺に問いかける。

 俺は問いを問いで返す。


「何がだ?」

「……お前はまだ聖剣を取り出していない。にもかかわらずなぜ、その力を行使できている?」

「気づいたか」

「気づかないほうが不自然だ。現に、この余が動けなかった」


 やはり気づいて待っていたのか。

 俺がみんなと話している間も、一秒たりとも警戒を解いていないことに。

 暴風の聖剣オーディンの能力で周囲の気流を操り、月夜の聖剣ニクスの力で、地面にできている影を展開し、攻撃に備えた。

 どちらの聖剣も、まだ召喚していない。

 勇者が聖剣の力を行使できるのは、顕現させ手に持っている間のみ。


「その常識が間違いだった。よく考えれば不自然だ。聖剣は俺たちの魂に宿っている。溶け込んでいると言ってもいい。力はここにずっとある」


 俺は自分の胸に親指を立てる。

 今も感じる。

 顕現させずとも、魂と共にある力を。

 聖なる力の奥底に眠る聖剣の輝きを。


「魂と一体になっているのなら、顕現させなくても力は使える。わかったら意外と簡単だった」

「……何をした?」

「最初の質問に戻ったな」

「以前戦った時と明らかに違う。何をして力を得た?」

「今日はやけに質問が多いな」


 サタンも感じているんだ。

 俺の中に宿る力が、大きく輝きを増していることに。

 警戒している。

 大罪の権能を融合させ、圧倒的な力を得たサタンが、俺に対して得体のしれない危機感を抱いているんだ。

 それがわかって、ホッとする。

 どうやら俺は、奴と対等に戦えるだけの次元に立てているらしい。


「お前には感謝しないといけない。あの戦いがあったから、俺は知ることができた。こいつの名を――」


 魂から聖剣を抜く。

 聖剣の頂点にして原点、最強の一振り。

 ずっと、知らないままだった。

 共に戦い、信頼していた相手なのに、名すらわからなかった。

 けどようやく、教えてくれた。

 この剣の名を知っているのは、現代では俺一人だけだ。

 優越感に笑みを浮かべ、俺は聖剣を構える。


「さぁ、いくぞ――」


 神意解放――


「――イブ」

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