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仲良くなったね

 フィーの魔王城で目的を果たした俺たちは、再びルシファーの城へと戻った。

 今後についての対策を練るため、レインたちも含む全員が会議室に集合している。

 長いテーブルを囲み、各々の席に座っているのだが……。

 

「ここ研究施設とかないんですか? はぁ……もう帰りたい」

「我慢してくれ」

「兄さん、眠いので兄さんの膝で寝てもいいですか?」

「ダメに決まってるだろ。これから話し合いだ」


 俺の右側には研究できずにイライラしたサルが座り、左側ではフィーが眠たそうにしている。

 好きな席に座れとルシファーから指示があって、なぜかこの順番になった。

 いつも隣に座るサラとリリスは、一席ずつ離れている。

 サラは毅然とした態度を崩していないけど、リリスは明らかに不服そうだった。

 周囲の視線が俺たちに集まる。


「アタシたちなんか見られてる?」

「気のせいじゃないですかね~」

「……そりゃ注目されるじゃろ。ぬしらの変わり様を見ればのう」

 

 事情を知っているリリスが呆れている。

 視線は俺も感じていた。

 大体が意外なものを見る視線だったけど、ルシファー辺りは面白がっている。

 クスクスと笑いながら彼は俺に言う。


「随分と仲良くなったようじゃないか。お前ほどの大勇者ともなれば、一夜で悪魔の一人や二人を篭絡するなどお手の物か」

「人聞きの悪いことを言うんじゃない。それじゃまるで、俺が遊んで帰ってきたみたいだろ」

「違うのか?」

「違う」


 俺はキッパリとそう答えた。

 断じて遊びに行ったわけでも、お泊りを楽しんだわけでもない。

 明確な目的を果たすための二日間だったことを主張する。

 するとルシファーは俺ではなく、両サイドの二人に尋ねる。


「お前たちも同意意見か?」

「アタシはこの男の身体に興味があるだけ」


 真顔でサルが応えた。

 言い方をもう少し考えてくれ、と心の中で嘆く。

 さすがのサラも、一瞬だけわずかにぴくっと反応していた。


「ボクは兄さんができたので楽しかったですよ~」

「あーそういやお前、兄貴が欲しいとか昔から言ってやがったな」

「そうなんですよ~ 夢が叶いましたー」

「……おめぇら、本当にただ休暇を満喫してただけじゃねーだろうな?」


 ベルゼビュートまでも俺たちのことを疑い始めた。

 というより呆れた顔をしている。

 俺は断じて違うと改めて否定した後、リリスのほうへ視線を向ける。


「俺たちはあくまで、リリスのペンダントの修繕に向かった。その目的は、ちゃんと果たしてる」

「まぁそうじゃな」


 彼女はペンダントを胸元から見せる。

 砕かれていた結晶部分が治り、元通りの綺麗な状態になっていた。

 リリスは大事そうにぎゅっとペンダントを握る。


「改めて感謝するぞ。サルカダナスよ」

「アタシは対価を貰ったから感謝とかいらない。それと、修理というより改良が正しいから」

「細かいのう」


 修理ではなく改良。

 サル曰く、今のペンダントは壊れる前の状態に戻ったわけではないらしい。

 原料となっていたのは大魔王サタンの血だ。

 血縁者であるリリスの血が似ていると言っても、完全に同じものではない。

 だから普通に元の形に戻そうとしても、必ず劣化する。

 そこで彼女は、サタンの血からできた結晶をベースに、リリスの血液を材料に作った複合物質をさらに加えたものを作り出した。

 簡単に言うと、ペンダントの効果はよりリリスに合った状態にチューニングされている。

 発動時間も大幅に伸びている。


「怪我の功名、ってやつだな」

「うむ! これで今までみたいに時間を気にする必要が減ったのじゃ」

「戦力が上がったのは喜ばしいことだ。で、他には何があった? それだけじゃないのだろう?」

「ああ、いろいろあった」


 俺はこの二日間で起こった事件を手短に説明した。

 アスモデウスからの勧誘と、フィーの部下たちの反逆。

 後者は普段通りだったみたいで、結局あれからしばらくして眠りから覚めると、全員ケロッとした顔でフィーに謝罪して持ち場に戻った。

 いつか超えてみせるという対抗心は目から溢れていたけど……。

 問題なのは勧誘のほうだ。


「奴らは十日間、ただじっと待っているわけじゃない。めぼしい奴には直接声をかけに言っている。誰の部下だろうと関係なく、な」

「当然だろうよぉ。じっと待っておくなんざ馬鹿だぜ。オレでもそうする」

「ベルゼビュート、ここで重要なのはそこじゃない」

「あん? なんだってんだよ」


 さすが、ルシファーが気づいたらしい。

 彼らの行動から考えれる事情を。

 視線が合う。

 お前が説明しろと言われている気がして、ルシファーの代わりに口を開く。


「奴らは危険を冒してまで勧誘に来ている。それはつまり、戦力が足りていないってことじゃないのか?」

「――! なるほどな、そういう見方もできんのか」

「元を含めて魔王が四体、魔王サタンの偽物、それと王国に残った勇者たち……一見戦力的には十分に見えるが実際は違う」


 もし仮に、魔王同士が対決すればどちらが勝つ?

 間違いなくルシファー側が勝利する。

 ルシファー、ベルゼビュート、フィー、この三名の魔王の実力は頭一つ抜けている。

 アンドラスたちの奇襲を受けた時に戦い、奴らとルシファーたちの間には明確な差があると改めて実感した。

 では勇者側は?

 数の上では圧倒的に負けている。

 こちらの人数は俺たち三人と、一緒に寝返った数名を含めて十人にも満たない。

 相手は少なく見積もっても八十人以上いるだろう。

 が、勝つのは俺たちだ。

 これに関しては自信を持って言える。

 俺がここにいて、レインが味方にいる。

 どれだけ数を増やしたところで、ランキング下位の勇者は相手にならない。

 ここ数年で討伐した魔王の数も、俺とレインが断トツだった。

 俺たちが本気で戦えば、まず間違いなく勝利するのはこちら側だ。


 未知数なのは魔王サタンの偽物だけ……。

 その一点を除けば、俺たちのほうが優勢だとすら言える。

 現状で上回れるとすれば兵力、数の差だ。

 魔界にいる他の魔王たちが全て敵に回った場合、こちらは圧倒的に不利になる。

 予想ではすでに大半がサタン側に寝返っていると思っていた。

 だが、必死に仲間集めをしている当たり、予想は外れている可能性が高い。

 奴らはまだ、俺たちと戦うために必要な戦力が揃っていない。


「――十日間という期間を、最初は俺たちに与えた猶予だと思っていた。けどもし、奴らが準備に必要な期間だとすれば? 今がチャンスなんじゃないのか?」

「はっ! そういうことかよ」


 ベルゼビュートも俺の考えを悟り、ニヤリと不敵に笑う。

 そう、今がチャンスなんだ。

 奴らを倒すために、俺たちがとるべき行動は一つ。


「こっちから攻めるぞ」

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