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自由すぎる悪魔

 深夜。

 研究室は変わらぬ明るさを保つ。

 ピコピコと魔導具を操作するサルガタナス。


「……ふぅ、さてと……」


 彼女は椅子に座ったまま振り返る。

 そこにはすでに、一人の男が立っていた。


「そろそろ来ることだと思ったよ」

「ヒッヒッヒッ~ 夜分遅くに申し訳ありませんね~」

「相変わらず気持ち悪いしゃべり方だね」

「褒めていただき光栄ですよぉ」

「褒めてないけど」


 サルガタナスは小さくため息をこぼす。

 研究所に現れたのは裏切り者の一人、『色欲』の魔王アスモデウスだった。


「用件は?」

「もちろん、お応えを聞きにきたんですよぉ~」


 サルガタナスは以前に、アスモデウスから勧誘を受けていた。

 自分たちの仲間にならないかと。

 仲間になれば研究に必要なものは全て提供する。

 その代わり、魔王サタンの目的を達成するための武力、魔導兵器を作ってほしい。

 復活した大魔王サタンの話も、外で何が起こっているかも、すべて先に知っていた。

 

「一応十日間の猶予は作ったんですけどね~ わたーしも忙しいんですよぉ~ だーかーらー、ここで決めてください」

「……そうだね」


 サルカダナスにとって、研究こそが全てである。

 未知を探求し、新しきを知ることこそが生きがいだった。

 それ以外に興味はない。

 故に、研究環境が整っていれば、彼女はどこでもよかった。


「悪くない条件だよ」

「であれば――」

「けど、お断りさせてもらおうか」

「なんと! なぜ?」


 驚くアスモデウス。

 まさか断られるとは思っていなかった様子。

 サルカダナスは笑いながら言う。


「だって面倒くさいから。アタシがやりたいのは自分の研究だよ? なんで兵器なんか作らなきゃいけないの? 充実した設備があっても、自由にやれないんじゃ意味ないな」


 彼女はとにかく、自由な悪魔だった。


「なるほどぉ~ そういうことでしたかぁ、いや、納得しましたよぉ」

「そう。じゃあ帰ってらえるかな?」

「うーん、残念ですがぁ、そうはいきません」


 アスモデウスの表情が変わる。

 ふざけた態度から想像できないほどの殺気を向ける。


「仲間にならないなら邪魔なだけですからねぇ。ここで死んでもらいましょう」

「まぁ……そうくるよね」


 アスモデウスが一歩進む。

 サルカダナスが下がる。

 しかし後ろは魔導具の壁、これ以上は下がれない。


「逃げ場はありませんよぉ」

「困ったなぁ。アタシは研究者だから戦闘は苦手なんだ。魔王が相手じゃ勝ち目はない」

「その通りですよぉ~ 選択を間違えましたねぇ」

「本当に困った。まだ死にたくない……助けてくれないかな? 助けてくれたら、お返しになんでも言うことを聞くかもしれないよ」

「もう遅いですよ。いう相手を間違えていませんか?」


 アスモデウスの手が、すぐ近くに迫る。


「いいや、あっている。あんたに言ってるわけじゃないから」

「ん? それはどういう――」


 瞬間、空間に亀裂が走る。

 黒くひび割れた空間から、聖剣の一振りがアスモデウスを襲う。


「なな、なんと!」


 ギリギリで回避したが、左腕は斬り落とされた。


「ぐぅ……なぜ、どうして……」

「気づいてくれたんだね」

「まぁな。間に合ってよかった」

「勇者アレンがここにいるんですかぁー!」


  ◇◇◇


 空間移動から見えた先、アスモデウスの腕を狙った。

 左腕を斬り落とし、俺はサルガタナスを守るように立ちふさがる。


「ぐぅううう、わたーしの腕がぁ~」


 追撃しようと剣を構える。

 それを見たアスモデウスは即座に転移の魔法を使用。

 一瞬でその場から消えてしまう。


「逃げたか」

「みたいだね。ちょっとヒヤヒヤしたよ」

「その割に冷静だな」

「そんなことない。今も怖くて、足が震えてる」

「っと!」


 倒れそうになった彼女を抱きかかえる。

 どうやら本当に恐怖していたらしい。

 それを見せず、アスモデウスと正面から向き合っていたのか。

 すごい胆力だな。


「気づいてくれたんだね」

「俺の力だ。すぐにわかったよ」


 原初の聖剣に彼女が触れた時、魔法を付与されたことに気付いた。

 言葉でのやり取りはなく、視線だけで伝え合った。

 正直、どういう理由かはわからなかったけど……。


「お前が助けを求めてるのはわかった」

「はははっ、さすが勇者」

「よく断ったな」

「聞いていたでしょ? アタシは自分の研究がしたい。あいつらに従っても、どうせやりたくもない兵器の研究ばかりさせられるのがオチだからね」


 彼女は自分のためだと語る。


「俺にだけこっそり助けを求めたのは、周りを巻き込まないためか?」

「別に? ただ、こうしたほうが一番速いって思ったからだけだよ」

「そうか。で、助けてやったんだ。言うことを聞いてくれるんだろ?」

「……そうだね。ペンダントは修理してあげるよ」

「足りないな。あいつらを倒すまで協力もしてくれ」


 この先も戦いになれば、リリスはペンダントを狙われる。

 破壊される可能性は多いだろう。

 サルカダナスの協力は不可欠だ。


「いいけど、それならこっちも条件があるよ」

「なんだ?」


 彼女は俺の腕の中でごそごそ動き、人差し指を俺の胸に当てる。


「あんたの身体、研究させてほしいな」

「え、俺の?」

「そう。歴史上唯一、原初の聖剣を含む七本の聖剣を宿す身体……ずっと興味があったんだ」

「お前まさか……」


 この要求をするために、俺を指名して助けさせたんじゃないだろうな?

 だとしたらこいつは……。


「はぁ……わかった。好きにしてくれ」

「交渉成立だ。あんたの身体……隅々まで調べてやるから」

「お手柔らかに頼むよ」


 サルカダナスは意地悪な笑顔を見せる。

 やっぱりこいつは、相当な策士だな。

 

これにて『自由の研究者』編は完結です!

いかがだったでしょうか?

この章が面白い!

続きが気になる!

そう思った方はぜひ、ページ下部の評価☆から★を頂ければ幸いです。

頑張って執筆するぞーというモチベ向上につながります!


お願いしますー!!!!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] サルガタナス?orサルカダナス?
[良い点] 最強は最強であるからこそ、意味がある。 早々に見抜いたサルちゃんの慧眼恐れ入る。
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