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【WEB版】パワハラ限界勇者、魔王軍から好待遇でスカウトされる ~勇者ランキング1位なのに手取りがゴミ過ぎて生活できません~【第一巻5/19発売】  作者: 日之影ソラ
『自由の研究者』編

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違うのじゃ!

 大魔王サタンの宣言から一時間後。

 キスキルの迅速な行動により、二人の魔王が招集された。

 集結に時間がかかったのには理由がある。

 どうやら二人の領地でも軽く混乱が起こっていたらしく、その対処に終われていたらしい。

 集まってすぐ、二人は大きくため息をこぼしていた。


「ったく散々だぜ。戦い以外で無駄な体力使いたくねーんだけどな」

「ボクはぐっすり寝てたんですよぉ~」

「二人ともよく来てくれた。悪いが、雑談をしている暇はない。大体のことは察してもらうぞ」


 ルシファーが二人にそう言うと、二人の視線は俺たちに向いた。

 どうしてリリスと俺たちが一緒なのか。

 勇者レインとフローレアもいる。

 事情を知らない二人にとって、この光景も異常だろう。

 だけど、それ以上に危機的状況にあるが故に、余計なことは突っ込まない。

 

「先に現状わかっていることの共有をする。キスキル」

「はい」


 俺たちが持っている情報の全てを、二人の魔王にも伝えた。

 驚きこそしていたが、二人は冷静に話を聞いていた。

 全ての共有が終わり、情報をまとめる。


「……で、さっきの宣戦布告かよ」

「あれはビックリしましたねぇ~ ぐっすり寝てたのに起こされちゃいましたよ」

「てめぇはもっと緊張感を持て」

「えぇ、なんでボクが怒られてるんですかぁ? 頑張って起きたのに」


 イライラしているベルゼビュートとは対照的に、ベルフェゴールはノホホンとした態度を崩さない。

 大罪会議で見た二人のイメージは崩れないな。

 この状況でも、大きく動じていない証拠だろう。

 ベルゼビュートはため息をこぼし、鋭い視線でルシファーを見る。


「で、てめぇはどう思う?」

「あの男か」

「ああ、大魔王サタンと名乗った。オレたちの王の名を……本物だと思うかよ」


 ルシファーに注目が集まる。

 この場の誰もが意見を聞きたい内容だ。

 ルシファーは数秒沈黙して、ゆっくり口を開く。


「映像だから魔力は感じない。が、あの通信魔法からわずかに、大魔王サタンの魔力を感じた」

「やっぱそうか」

「あれは間違いないですねぇ。ボクたちが忘れるはずもありませんし」


 三人とも、かつての主君の魔力を感じたらしい。

 魔力は悪魔固有の力で、それぞれに個性が現れる。

 たとえ親子であっても、まったく同じ魔力は存在しない。

 だとしたら、結論は出る。

 

「映像から感じた雰囲気も近かった。あれは――」

「違うのじゃ!」


 ルシファーの言葉を遮って、リリスが否定する。

 真剣な表情をする彼女に、全員の視線が集まった。

 ベルゼビュートが尋ねる。


「違うって? 別の悪魔だって言いてぇのか?」

「そうじゃ。あれはお父様ではない」

「根拠はあんのかよ」

「……ワシが、そうだと思ったのじゃ」

「……は?」


 ベルゼビュートは呆れた顔をする。

 根拠になっていない。

 ただ、リリスの表情は真剣で、ふざけている様子もなかった。

 彼女は続ける。


「確かに魔力は似ておる。声も、雰囲気もそっくりじゃった。けど……違うんじゃ。絶対に違う! あれがお父様であるはずがないのじゃ」

「リリス……」

 

 彼女は訴えかけるように話す。

 その様子を心配そうにキスキルが見守る。

 リリスは感情を高ぶらせ、胸の内に秘めた思いを発露する。


「お父様なら! ワシらを殺そうとするはずがないんじゃ。お前たちだって、お父様が優しいことを知っておるじゃろ!」


 リリスの言葉がルシファーたちに響く。

 彼らはかつて、大魔王サタンの部下だった。

 共に戦い、共に生きた。

 彼から後事を託され、大罪の魔王として魔界を統治してきた。

 リリスの言う通りなのだろう。

 彼らは知っている。

 大魔王サタンが、どういう存在だったのかを。


「ったく、根拠もくそもねぇな」

「ですね~ けど、あながち間違ってないんじゃないですか?」

「まぁな。オレも薄々、違うんじゃねーかと感じてた」

「ボクもですよ~ そっくりさんっているんですねぇ~」

「お前たち……」


 ルシファーが小さく笑う。


「お前はどう思う? キスキル」

「……私も、リリスと同じ考えです」

「そうか。ならそういうことだ。あれは大魔王サタンではない。その名を騙る偽物だ」

「うむ!」


 大魔王サタンではない。

 彼らにとってその結論は、話を次に進める上で重要なことだったはずだ。

 サタンは夫であり、父であり、主君だった。

 それぞれの想いが、サタンの生存を否定する。

 前提に結論が出たところで、ルシファーが話を進める。


「あの宣言で同調した悪魔たちは多いだろう。少なくとも半数以上は俺たちの敵になる」

「数がいればいいってもんじゃねーだろ」

「大事ですよ~ うじゃうじゃ湧かれると駆除が面倒ですから。こっちも仲間は増やしたほうがいいんじゃないですかぁ?」

「そうだな。本格的に動き出すのは十日後と言っていたが、あれが事実とは限らない。キスキル、傘下の魔王たちと連絡を取っておけ。交流があった者たちもだ」

「かしこまりました」


 来るべき戦いに備えて戦力を整える。

 ルシファーたちの方策は決まった。


「勇者アレン、お前はそれで構わないか?」

「ああ、異論はない。戦力集めは俺じゃどうしようもないからな。役に立てなくて悪いな」

「ふっ、必要ないことだ。お前は戦いで魅せてくれればいい」

「了解だ。で、一つ問題があるんだが」


 俺はリリスに視線を向けた。

 視線を感じて、リリスも気づく。

 彼女は自分の胸からペンダントを取り出す。


「これじゃな」

「ああ。アンドラスにペンダントを破壊された。今のままじゃ大人バージョンに変身できない」

「なるほど。それは少々面倒だな」


 ルシファーは顎に手を当て目を細める。

 多くが敵に回ってしまった現状、リリスも大きな戦力だ。

 時間制限付きだが終焉の魔剣を持ち、アンドラスから『憤怒』の権能を簒奪した。

 これからの戦いで、リリスが活躍する場面はあるだろう。

 戦いが始まる前にペンダントを修繕する必要がある。


「治せるか?」

「悪いが俺には専門外だ。この手のことはベルフェゴールに聞け」

「えぇ、ボクだって魔導具は詳しくないですよぉ~ あーでも、それ大魔王様が作ったものですよね? だったら普通の悪魔に修繕は無理だと思いますよぉ」

「そうなのか……誰かいないのか? 修繕できそうなやつは」


 沈黙が続く。

 心当たりは誰もいないのか。

 そう思った時、リリスが口を開く。


「一人おる。治せる者なら」

「なんだ、いるなら早く言ってくれ」


 黙っているから誰もいないのかと思ったぞ。

 俺はリリスに尋ねる。


「誰だ?」

「ワシの部下じゃ。ほれ、前に話したじゃろ?」

「ん? あー二人いるって話の」

「うむ。一人は魔界屈指の魔導具師じゃ。研究したいからとどこかへ旅立って……どこにおるかもわからんのじゃよ」


 リリスがすぐ回答しなかった理由を察する。

 いるけど、今どこにいるかはわからない。

 宣戦布告は魔界中に響いた。

 出てってからしばらく帰ってこない不忠の部下だ。


「こんな状況じゃ……もうあちら側についとるかもしれん」

「……」

「あのー、それサルさんのことですよね?」


 ひょこっと手を挙げたのは『怠惰』の魔王ベルフェゴール。

 だらーんとした緊張感のない態度は変わらず、何かを知っている様子を見せる。


「なんじゃ? 行方を知っておるのか?」

「ええ、まぁ、だってボクの城にいますからねぇ」

「……は?」

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