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25/107

最強のままで

物語も本話で折り返しです!


ぜひとも評価☆☆☆☆☆⇒★★★★★をいただけないでしょうか?


モチベ維持、向上のためにもぉ!

 二人は腹をくくる。

 先に動いたのはサラだった。

 聖剣アテナと融合した大剣を振るい、フローレアを攻撃する。

 常人ならざる怪力を持つ者同士、肉体的な条件は五分である。

 が、当然優位はフローレアにある。


「力だけでは勝てませんよ」


 鍔迫り合いから光の光線を至近距離で放つ。

 サラはギリギリ回避して畳みかける。

 張り付くほど至近距離で、攻撃を加え続ける。


「時間稼ぎですか? もう一人の悪魔が何かしていますね」

「だとしたら何ですか?」

「無駄ですよ。ここに私がいる限り、全ては私の支配下です。入念に準備した魔法も――」


 地面に配置された魔法陣が複数破壊される。

 全てリリスが準備していたもの。

 発動と同時に、フローレアを外に転移させる魔法だった。

 が、破壊された。

 聖剣テミスの効果は範囲。

 一定領域内に聖剣の力が満ちて、あらゆる魔法を阻害する。

 

「くそっ」

「無駄な足掻きでしたね」


 作戦は失敗した。

 ペンダントの効果も切れる。

 これで終わり――


「かかったな」

「え?」


 直後、巨大な魔法陣が地面に展開された。

 フローレアは焦りを見せる。

 

「どうして魔法が……」

「ここがどこかお忘れですか? 魔王城、敵の拠点です。なんの仕掛けも施されていないと思いましたか?」

「まさか――」


 魔王城には防衛のため、様々な魔法が備わっている。

 アテナの効果は範囲内の魔法発動の妨害。

 魔王城全体に施された魔法は、彼女の効果の外である。

 故に阻めない。

 フローレアを暗闇が襲う。

 漆黒の結界に包まれ、外部との交信を絶たれた。


「こんな結界」

「もう遅いですよ」


 眼前にサラが大剣を構えて迫る。

 咄嗟に防御姿勢になるフローレアに、サラは大剣を捨てて見せた。


「え……」


 一瞬、気が緩む。

 聖剣アテナの効果は融合。

 その対象は、生物も含まれる。

 手放す直前にサラは、アテナの融合対象を自身に変更した。

 今、聖剣は彼女の身体に宿っている。


「歯を食いしばってください!」 

「ぐっ、う……」


 文字通り聖なる拳が、『最善』の勇者を殴り飛ばした。

 手から十字架を放し地面に倒れ込む。

 漆黒の結界が消失し、子供に戻ったリリスが歩み寄る。


「やったのう」

「はい」

「……悲しいですね。それだけの力があって……悪に惑わされてしまうなんて」

「こやつまだ……」


 リリスは大きくため息をこぼす。

 サラも、呆れた顔をする。


「私は自分の意志でここにいます。勝手に決めつけないでください」

「悪魔じゃから悪という考え方をしておるみたいじゃが、それこそ悪い決めつけじゃ!」

「ふっ……ははっ、何を言っても無駄ですね。でも……まだ終わっていません。私には彼がいますから……」

「……そちらもすでに、決着がついているようですよ」

「え……ああ――」


 二人の視線の先で、確かに決着していた。

 最強が立ち、最強になれなかった者が膝をつく。

 勝者は――


  ◇◇◇


「はぁ……はぁ……」

「……どうして」

「ん?」

「どうして僕は、君に勝てないんだ」


 決着はついた。

 激闘の末、レインは膝をついている。

 立っているのは俺のほうだ。


「どうしてだ! 僕は勇者だ! 勇者の座を捨てた君とは違う! なのに……どうして、どうして君は、僕の先にいる?」

「レイン……」

「勇者に敗北は許されない。なら僕は……僕のほうこそ勇者に相応しくないじゃないか!」


 悔しさを拳に込めて、地面を叩く。

 彼の気持ちを理解できる……なんて言いたくはない。

 勝者が敗者に、ましてや勇者を辞めた俺が言えることなんて何もないんだ。


「あっちも決着がついたらしい。彼女をつれて王国へ戻れ。お前たちまでいなくなったら、王国の人々を守る奴がいなくなる」

「待ってくれ……どうして、裏切ったんだ?」

「……理由はならわかってるだろ? 先に裏切られた……だから、こっちについた」

「違う……違うじゃないか。君の心は、魂は、強さは未だ勇者だ。僕が知る最強の勇者のままだ! その証拠に、君は最後まで僕を傷つけないように戦っていただろう?」


 どうやら見抜かれてたらしい。

 情けない話だが、俺は人間を相手にすると躊躇してしまう。

 勇者が人を傷つけてはいけない。

 シクスズの時だって、殺すことはできた。

 そうしなかったのは、俺の弱さだ。


「弱さだなんて思わないでくれよ? それは強さだ。勇者らしい強さだ」

「お前……勝手に人の心を読むなよ」

「読まなくてもわかる。僕たちは勇者だ! 勇者の想いはすべて等しく、人々の平和だ。なら君も……」


 真剣に、信じるように俺を見つめる。

 こいつとは別に、仲がよかったわけじゃないのに……。

 似ていると言われたのは、正しかったかもしれない。


「俺は、勇者を辞めた。けど、敵になったわけじゃない」


 話しながらリリスを見る。

 あの小さく、まだ弱い魔王が言ったんだ。


「全種族の共存、それを叶えたいと思ったんだ」

「共存……それが、君たちの望みなのかい?」

「ああ、むちゃくちゃな夢だろ? けど、実現できたらすごいことだ」


 いがみ合っている全ての種族が手を取り合い、共に生きる。

 そんな未来があるとすれば、まさに理想的。

 真の平和って、そういうものだと思う。


「待遇に不満があったのも事実だけどさ。俺は彼女の夢に共感した。だから、これからはその夢のために生きようと思う」


 ずっと、少しだけ後悔していた。

 勇者を捨てる。

 そう決めて、リリスの元で働くようになって……。

 他に道があったんじゃないかとか、勇者に戻れるのならって、少し考えた。

 迷っていたんだ、俺も。

 でも今日、レインと戦って覚悟が決まった。

 

「俺は……俺の信じる道を行く。それでも俺を勇者と呼びたいなら好きにすればいい。肩書なんて自分が決めるものじゃないからな」

「……ははっ、その通りだ」


 勇者レインは笑う。

 呆れたように、解放されたように。


「自然と誰かの幸せを見ている……そういうところも、勇者らしいよ」

「そうか? だったら俺は――」


 今もまだ、『最強』の勇者であり続けているのだろう。

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タイトルは――


『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』


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『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』

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― 新着の感想 ―
一つだけツッコミさせてもらいます・・・ 光の光線、音速のソニック?
[一言] 王国に戻ったらあの二人、聖剣を返してこっちに移住しそうだな⋯。 それか、国王に問い詰めそうだよな⋯、今回の勇者の暗殺の事も⋯。 知らぬ存ぜぬと言っても、国王の言葉と最強の勇者の言葉、どち…
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