最強のままで
物語も本話で折り返しです!
ぜひとも評価☆☆☆☆☆⇒★★★★★をいただけないでしょうか?
モチベ維持、向上のためにもぉ!
二人は腹をくくる。
先に動いたのはサラだった。
聖剣アテナと融合した大剣を振るい、フローレアを攻撃する。
常人ならざる怪力を持つ者同士、肉体的な条件は五分である。
が、当然優位はフローレアにある。
「力だけでは勝てませんよ」
鍔迫り合いから光の光線を至近距離で放つ。
サラはギリギリ回避して畳みかける。
張り付くほど至近距離で、攻撃を加え続ける。
「時間稼ぎですか? もう一人の悪魔が何かしていますね」
「だとしたら何ですか?」
「無駄ですよ。ここに私がいる限り、全ては私の支配下です。入念に準備した魔法も――」
地面に配置された魔法陣が複数破壊される。
全てリリスが準備していたもの。
発動と同時に、フローレアを外に転移させる魔法だった。
が、破壊された。
聖剣テミスの効果は範囲。
一定領域内に聖剣の力が満ちて、あらゆる魔法を阻害する。
「くそっ」
「無駄な足掻きでしたね」
作戦は失敗した。
ペンダントの効果も切れる。
これで終わり――
「かかったな」
「え?」
直後、巨大な魔法陣が地面に展開された。
フローレアは焦りを見せる。
「どうして魔法が……」
「ここがどこかお忘れですか? 魔王城、敵の拠点です。なんの仕掛けも施されていないと思いましたか?」
「まさか――」
魔王城には防衛のため、様々な魔法が備わっている。
アテナの効果は範囲内の魔法発動の妨害。
魔王城全体に施された魔法は、彼女の効果の外である。
故に阻めない。
フローレアを暗闇が襲う。
漆黒の結界に包まれ、外部との交信を絶たれた。
「こんな結界」
「もう遅いですよ」
眼前にサラが大剣を構えて迫る。
咄嗟に防御姿勢になるフローレアに、サラは大剣を捨てて見せた。
「え……」
一瞬、気が緩む。
聖剣アテナの効果は融合。
その対象は、生物も含まれる。
手放す直前にサラは、アテナの融合対象を自身に変更した。
今、聖剣は彼女の身体に宿っている。
「歯を食いしばってください!」
「ぐっ、う……」
文字通り聖なる拳が、『最善』の勇者を殴り飛ばした。
手から十字架を放し地面に倒れ込む。
漆黒の結界が消失し、子供に戻ったリリスが歩み寄る。
「やったのう」
「はい」
「……悲しいですね。それだけの力があって……悪に惑わされてしまうなんて」
「こやつまだ……」
リリスは大きくため息をこぼす。
サラも、呆れた顔をする。
「私は自分の意志でここにいます。勝手に決めつけないでください」
「悪魔じゃから悪という考え方をしておるみたいじゃが、それこそ悪い決めつけじゃ!」
「ふっ……ははっ、何を言っても無駄ですね。でも……まだ終わっていません。私には彼がいますから……」
「……そちらもすでに、決着がついているようですよ」
「え……ああ――」
二人の視線の先で、確かに決着していた。
最強が立ち、最強になれなかった者が膝をつく。
勝者は――
◇◇◇
「はぁ……はぁ……」
「……どうして」
「ん?」
「どうして僕は、君に勝てないんだ」
決着はついた。
激闘の末、レインは膝をついている。
立っているのは俺のほうだ。
「どうしてだ! 僕は勇者だ! 勇者の座を捨てた君とは違う! なのに……どうして、どうして君は、僕の先にいる?」
「レイン……」
「勇者に敗北は許されない。なら僕は……僕のほうこそ勇者に相応しくないじゃないか!」
悔しさを拳に込めて、地面を叩く。
彼の気持ちを理解できる……なんて言いたくはない。
勝者が敗者に、ましてや勇者を辞めた俺が言えることなんて何もないんだ。
「あっちも決着がついたらしい。彼女をつれて王国へ戻れ。お前たちまでいなくなったら、王国の人々を守る奴がいなくなる」
「待ってくれ……どうして、裏切ったんだ?」
「……理由はならわかってるだろ? 先に裏切られた……だから、こっちについた」
「違う……違うじゃないか。君の心は、魂は、強さは未だ勇者だ。僕が知る最強の勇者のままだ! その証拠に、君は最後まで僕を傷つけないように戦っていただろう?」
どうやら見抜かれてたらしい。
情けない話だが、俺は人間を相手にすると躊躇してしまう。
勇者が人を傷つけてはいけない。
シクスズの時だって、殺すことはできた。
そうしなかったのは、俺の弱さだ。
「弱さだなんて思わないでくれよ? それは強さだ。勇者らしい強さだ」
「お前……勝手に人の心を読むなよ」
「読まなくてもわかる。僕たちは勇者だ! 勇者の想いはすべて等しく、人々の平和だ。なら君も……」
真剣に、信じるように俺を見つめる。
こいつとは別に、仲がよかったわけじゃないのに……。
似ていると言われたのは、正しかったかもしれない。
「俺は、勇者を辞めた。けど、敵になったわけじゃない」
話しながらリリスを見る。
あの小さく、まだ弱い魔王が言ったんだ。
「全種族の共存、それを叶えたいと思ったんだ」
「共存……それが、君たちの望みなのかい?」
「ああ、むちゃくちゃな夢だろ? けど、実現できたらすごいことだ」
いがみ合っている全ての種族が手を取り合い、共に生きる。
そんな未来があるとすれば、まさに理想的。
真の平和って、そういうものだと思う。
「待遇に不満があったのも事実だけどさ。俺は彼女の夢に共感した。だから、これからはその夢のために生きようと思う」
ずっと、少しだけ後悔していた。
勇者を捨てる。
そう決めて、リリスの元で働くようになって……。
他に道があったんじゃないかとか、勇者に戻れるのならって、少し考えた。
迷っていたんだ、俺も。
でも今日、レインと戦って覚悟が決まった。
「俺は……俺の信じる道を行く。それでも俺を勇者と呼びたいなら好きにすればいい。肩書なんて自分が決めるものじゃないからな」
「……ははっ、その通りだ」
勇者レインは笑う。
呆れたように、解放されたように。
「自然と誰かの幸せを見ている……そういうところも、勇者らしいよ」
「そうか? だったら俺は――」
今もまだ、『最強』の勇者であり続けているのだろう。
【作者からのお願い】
新作投稿しました!
タイトルは――
『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』
ページ下部にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!
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