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【WEB版】パワハラ限界勇者、魔王軍から好待遇でスカウトされる ~勇者ランキング1位なのに手取りがゴミ過ぎて生活できません~【第一巻5/19発売】  作者: 日之影ソラ
『戦後の世界』編

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スカウトお断り!

「うぅ……なんでワシがこんなこと……」

「文句を言わずに手を動かしてください」


 リリスはサラと一緒に王城内の掃除をしていた。

 嫌々箒で床を掃除する。


「ワシは魔王じゃぞ。魔王が城を掃除するってありえんじゃろ!」

「アレン様から甘やかさないように言われています。給料を払えないなら、その分自分も働くようにと」

「くっ……まじめな奴じゃ」

「アレン様は勇者です。本来ならばここいることすら――」

「ん?」


 サラが先に気付き、遅れてリリスが気配を察知する。

 悪魔ではなく人間二人。

 本来ならば招かれざぬ客である。


「やぁ、二人とも」

「お久しぶりですね」

「レイン様、フローレア様」

「げっ!」


 二人の勇者の登場に、リリスはあからさまに嫌そうな顔をする。

 レインではなく、フローレアのことは未だに少し苦手なリリスだった。

 フローレア当人は気にしておらず、変わらずニコニコしながらリリスとも顔を合わせている。


「な、何しにきたんじゃ!」

「アレンに用があってきたんだよ。彼は?」

「出かけております」

「そうか。じゃあ戻ってくるまで待たせてもらうよ」


 レインがそう言うと、リリスはムスッとした表情で尋ねる。


「アレンに何のようじゃ? 伝言ならワシから伝えるぞ」


 遠回しにさっさと立ち去れ、とリリスは言っている。

 それに気づきながら、レインは首を横に振って否定し続ける。


「ちょっとした勧誘だよ」

「勧誘じゃと?」

「以前から話はしていてね? 彼に……王国へ戻ってきてもらおうと思ってるんだ」

「――なっ、なんじゃと?」


 リリスは驚愕し、額から汗を流す。


  ◇◇◇


「はぁ……はぁ……」

「中々やるではないか。さすがは最強の勇者」

「そっちこそ。今ならお前でも、偽サタンに勝てるんじゃないか?」


 激闘を終え、俺たちは武器を納める。

 思った以上に全力を出したから、かなり披露してしまった。

 けれどその分スッキリはしたし、ストレスの解消にはなかったかな。


「お二人とも、やり過ぎですよ」

「キスキルか」

「すみません。結界、助かりましたよ」


 彼女は小さくため息をこぼす。

 俺たちの戦いに周囲が巻き込まれぬよう、キスキルが結界を張ってくれていた。

 止めても無駄だと判断し、戦わせるほうがいいと思ったのだろう。


「満足されましたか?」

「俺はな。勇者アレン、この後の予定はあるのか?」

「そうだな。結構時間経ったし、一度リリスのところへ戻るよ」

「そうか。暇になったらいつでも来い。相手をしてやる」

「こっちのセリフだ」


 俺たちは拳を突き合わせる。

 最強の勇者と最強の魔王、俺たちの間には、いつしか奇妙な友情が芽生えていた。

 なんて、恥ずかしくて口には出せない。

 俺はキスキルに視線を向ける。


「リリスに伝えることは?」

「元気にやっているならそれで十分です。また、こちらから会いに行くと」

「伝えます」


 リリスもきっと喜ぶだろう。

 ちゃんとサラの言うことを聞いているだろうか。

 少し不安だから、早めに帰還しよう。

 俺は空を飛び、ルシファーの城を出発する。


「……あ」


 途中で気づく。

 結局戦っただけで、バイト代貰ってないな。


「次に会った時に請求するか」


  ◇◇◇


 リリスの城へと帰還する。

 上空から落ち、玄関前にたどり着いた。

 俺は玄関を開ける。


「ただい――」

「嫌じゃああああああああああああ」

「うおっ! リリス!?」


 玄関を開けたら一秒もたたずリリスが抱き着いてきた。

 なぜか大号泣している。


「嫌じゃ嫌じゃ! ワシのことを捨てないでくれ!」

「は? 何の話を……」

「やぁ、お帰りアレン」

「レイン、フローレアも」


 二人の姿が魔王城にはあった。

 このリリスの変化はレインたちの影響か?

 俺はじとっとレインを見ながら言う。


「何をしたんだよ?」

「僕は何もしていないよ。ただ、君を勧誘していることを話しただけだよ」

「アレン! 王国に戻るんじゃろ? そんなの嫌じゃ!」

「ああ、その話か」


 リリスが泣きながら抱き着いてきた意味は理解した。

 おそらく誤解があることも。

 誤解を解くため話始めようとすると、リリスが力いっぱいに俺の身体に抱き着いて離さない。


「約束守れんかったことがダメだったんじゃろ? ワシもっと頑張るのじゃ! ワシも働いてお金を稼ぐ! だからどこにも行かないでくれ。ワシの下から……いなくならないで……」

「リリス……」


 久しぶりに見るな。

 こんなにも弱々しくなったリリスは。

 俺は微笑み、彼女の頭を撫でる。


「断ってるよ、とっくに」

「え?」


 リリスは顔を上げる。

 キョトンとして、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔をこちらに向けた。


「前々からスカウトはされてた。その度に断ってるんだよ。レイン、また来たのか?」

「もちろん、君が首を縦に振るまで何度でも来るよ」

「懲りない奴だな。俺は戻る気はない。俺の居場所は……」


 俺はリリスの頭に触れながら言う。


「ここにある」

「アレン……」

「……やれやれ、また振られてしまったか」


 臭いセリフを吐きながら、レインは首を振る。

 最初から断られるのはわかっていた癖に。


「気が変わったらいつでも歓迎するよ」

「そうだな。あんまりこっちの待遇が酷いなら、考えるかもな」

「ぜ、絶対ダメじゃ! アレンはワシのじゃ! 誰にも渡さんぞ!」


 ガルルと唸りながら俺の腕に抱き着き、レインに威嚇するリリス。

 いつからお前の物になったんだ、とツッコミたいところだが、今の俺は気分がいいからやめておこう。


「それにしてもリリス、そんなに俺と一緒にいたいのか?」

「うっ……」


 彼女はビクッと震え、顔を真っ赤にする。

 いつものように否定するか?

 今回は違うらしい。

 

「あ、当たり前じゃろ」


 恥ずかしがりながら、眼を逸らしながら……。


「アレンはワシのものなんじゃ」


 改めて腕に抱き着く。

 ここまで魔王に好かれた勇者は、長い歴史の中でも俺だけだろう。


 悪くない気分だ。


「だから絶対! 誰からのスカウトもお断りじゃぞ!」

「はいはい。そうするよ」


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