表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/107

バイトでもすれば?

 復興が進んだこの一年、いろいろなことがあった。

 魔王サタンの下に集まり、共に戦った戦友たちも一度はバラバラに散っていった。

 そしてもう一度集まり、壊れた魔界を修復した。

 今はもう、それぞれの居場所に戻っている。

 ただ、中には戻らなかった奴らもいた。

 というより、元の鞘に収まった二人だ。


「ネロ」

「あ! おはようっす! アレン兄さん、主様!」


 サルの研究室へ向かう道中、偶然ネロに出くわした。

 彼女は魔王城の玄関に向かっている。

 俺は彼女に尋ねる。


「今からまた見回りか?」

「そうっすよ!」

「毎日よくやってくれているな。無給で」

「うっ……こっちを見ないでほしいのじゃ」


 俺のジト目にリリスは目を逸らした。

 俺が無給で働いているのと同じように、彼女にも給料は支払われていない。

 にも拘らず、彼女は文句ひとつ言わず、毎日城下町を見回っている。


「立派だな、ネロは」

「そんなことないっすよー。ウチにできることはこれくらいっすからね」


 戦いは終わり、世界平和になった。

 ルシファーたちの協力もあり、生き残った悪魔たちを集めた集落をこの城の近辺に作り上げた。

 彼らが去るのに合わせて、自分たちの領地へ戻った悪魔たちもいれば、この地に残っている悪魔もいる。 

 平和になろうとも、悪魔は気性の荒い種族だ。

 小競り合いはどうしても起こる。

 ネロは毎日見回って、悪さをする奴らがいないか、問題がないかを見守っている。

 彼女のおかげで、大きな問題に発展する前に対処できた事例も少なくない。


「あまり無理しすぎるなよ」

「問題ないっすよ! これも修行の一環っすからね!」

「本当に熱心だな。こっちの上司にも見習ってほしいものだ」

「だ、誰のことかのう……」

「お前以外にいるか!」

「痛い痛い痛い! 痛いのじゃ! 頭をぐりぐりするな!」


 しらばっくれるリリスには頭を両手でぐりぐりしてお仕置きだ。

 そんな様子を見ていたネロは、小さくクスっと笑う。


「楽しそうっすね」

「どこがじゃ!」

「こっちは全然楽しくないぞ」

「ふふっ、仲良しで羨ましいっすよ」


 そう言って彼女はステップを踏み、弾むように魔王城の外へと出ていく。


「行ってくるっす!」

「うむ! 夕飯までには帰って来るのじゃぞ!」

「気をつけてな」

「はいっす!」

 

 俺とリリスは彼女を見送り、見えなくなるまで待つ。

 それからサルの下へと歩き出す。

 向かう先は地下にある研究施設。

 元々彼女が使っていた場所らしく、今もそこで魔導具の研究を続けている。

 そして一応、魔王リリスの参加の一人として、経済面も担当してくれているのだが……。

 

「サル、入るのじゃ」


 研究所に入ると、難しそうな本や資料が積み上げられ、研究途中の魔導具はいくつもテーブルに並んでいた。

 サルはというと、一番奥で魔導具と睨めっこ中だ。

 俺たちのことにも気づいていない。


「おーい、サル! 聞いておるのか?」

「……」

「あれは聞こえてないな。仕方ない、リリス、耳を塞げ」

「了解じゃ」


 気づかない時の荒業を使おう。

 リリスが両手で耳を塞いだのを確認して、俺は目の前で思いっきり、両手を叩く。

 拡散し響く音。

 空気の振動は資料や本を揺らす。


「うっるさいなー! なに?」

「やっと気づいたか」

「毎回これやらんと気づかんのか? ぬしは」

「研究中に入ってくるそっちが悪いでしょ。で、アタシに何の用?」


 あきらかに不機嫌なサルが不貞腐れながら尋ねてくる。

 リリスが答える。 


「ワシらは金がないのじゃ! なんとか金を集める方法を教えてくれ」

「そんなの自分たちで考えれば? アタシは関係ない」

「関係大有りじゃ! ぬしもワシの部下じゃろう! 城に残ったんじゃなからな!」

「他に研究設備がなかったから、あと研究対象がここにいるか。それ以外の理由はないよ」


 別に部下に戻ったわけじゃないと一蹴する。

 サルの言葉に嘘はなく、経理担当とか言ったが、あれもリリスが勝手に任命しただけだ。

 一番お金を稼いだりするのが上手そうだからという雑な理由で。


「大体、お金なら貯めてるだろ? アタシの魔導具、売れてるんだから」

「そ、それはそうじゃな……助かっておる」

「じゃあ十分でしょ? 今以上に欲しいなら、もう自分たちでアルバイトでもすれば?」

「ワ、ワシにアルバイトなど無理じゃ!」

「知っている。だからさ、そこの優秀な部下に頼めばいいよ?」

「優秀な……部下」


 二人の視線が、俺に向く。


「おい……」


 それじゃ本末転倒だろ?

【作者からのお知らせ】

いつも本作を読んで頂きありがとうございます!

さて、いよいよノベル第一巻が5/19に発売されます!

改稿を重ね、新エピソードも書下ろし、より一層面白くなっておりますので、ぜひぜひお手にとってくれると嬉しいです!


よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』

https://ncode.syosetu.com/n2188iz/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ