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この世全ての聖剣は

 俺は聖剣を構える。

 壊れた物は直せばいい。

 失われた文明も、少しずつでもいいから取り戻せ。

 完全になくなったわけじゃない。

 少なくとも、俺の手の中には残っている。

 守るべきものが……大切な命が。

 かつてのアダムとイブに比べたらなんてことはない。

 俺たちの力で、平和な世界を作ればいいんだ。


「それは叶わぬ夢だ。お前たちを最後に世界は滅ぶ。ここはただの戦場だ。余と神が戦うための場にすぎん!」


 サタンは魔剣の切っ先を俺に向ける。

 奴の目的が垣間見える。

 世界を崩壊させ、神をおびき寄せて戦うこと。

 それこそがサタンの……魔王の集合体の望みなのだろう。

 彼らの目的はいつも勇者に阻まれた。

 勇者に力を与えているのは紛れもなく、神だ。

 魔王は神を恨んでいる。

 目的は異なれど、魔王たちは皆、神に対して怒りと持っていた。

 その集合体ともなれば、神を打倒することを目的にしても不思議じゃない。

 これでようやく、知りたかったことも知れた。

 もはや言葉は必要ないだろう。

 お互いに、そろそろ我慢の限界だ。


「――行くぞ」


 刹那、俺たちは動き出す。

 地形が変わるほどの力で地面を蹴りだし、真正面から衝突する。

 聖剣と魔剣、その刃が重なる。

 空気が、地面がはじけ飛ぶ。

 激しい剣劇の応酬。

 小細工はなく、ただ剣のみでぶつかり合う。

 互いに小細工など使う余裕などない。

 一瞬でも気を抜けば首が飛ぶ。

 集中に集中を重ね、相手の次手を予想して先手を打つ。


 上段からの振り下ろしをサタンが半身になって躱す。

 そこから切り上げる刃を俺がのけぞり躱す。

 俺は斜めに回転して剣を振りぬく。

 サタンが魔剣受け止め、衝撃で空気が軋む。

 鍔迫り合いから弾き合い、距離を取る。


 このままじゃ埒が明かない。


 お互いの脳裏にその言葉が浮かび、次の手を考える。

 先に動いたのは――


「黒劉」


 サタンだった。

 魔剣からあふれ出る漆黒のエネルギーを操り、無数の斬撃が俺を襲う。

 一撃一撃が致命傷になり得る攻撃だ。

 だが、イブを神意解放した今の俺には通じない。

 

「スゥー」


 大きく短く息を吸い、止めると同時に剣を振るう。

 光を纏った剣圧によって、迫りくる漆黒のエネルギーは相殺される。


「弾くか。ならばこれでどうだ?」


 サタン周囲の黒劉が渦巻き、小さな無数の球体に凝縮されていく。

 球体はサタンの背後に浮かび、形を変える。

 一振りの剣に。


「黒劉を圧縮して剣を作ったか」

「形だけではないぞ」


 宙に浮かんだ無数の黒い剣。

 その全ての切っ先が俺に向けられ、一斉に射出される。

 先ほどのように剣圧で弾くという選択肢はないと、直感が告げる。

 俺は聖剣で撃ち落とし、撃ち落とせないものは回避する。

 一撃に触れて理解する。

 一振り一振りが並の魔剣以上の力を有していることに。

 直感は正しかった。

 剣圧で弾くことはできず、もしそうしていれば俺の身体は針の筵になっていただろう。

 強度も威力もけた違い。

 加えて手数も多い。


「どうした? 防戦一方か?」

「――まさか」


 この程度で終わるはずがない。

 勝つために戻ってきた。

 醜態を晒すのではなく、結果で示せ。

 俺は意識を左手に向ける。


「燃えろ」

「――!」


 瞬間、迫りくる無数の剣が焼け落ちる。

 激しい爆炎をまき散らし、灰が舞い周囲が燃え上がる。

 サタンが訝しむ。


「……どういうことだ?」


 奴の視線は、俺の左手に向けられていた。

 理由は明白だ。


「なぜお前が……その聖剣を持っている?」


 俺の左手には、業火の聖剣アグニが握られていた。

 奴はすでに、『最硬』の勇者アッシュと戦っている。

 だから知っている。

 この剣の所有者は、奴自身が殺している。

 今現在、アグニの所有者は存在しない。

 それ以前に、俺が持っているはずがないんだ。

 

「アグニだけじゃないぞ」

「何?」


 会話の直後、俺はサタンの眼前から消える。

 光速で移動する俺をギリギリで追い、背後から突きを回避する。


「この速度……その聖剣は!」

「知ってるだろ? 雷撃の聖剣トール、『最速』だよ」


 左手にはトール、右手にはアルテミスを握り、二つの力を掛け合わせている。

 召喚しなくても力は使えるけど、出したほうが効果は高い。

 月光と雷撃、二つの速度を合わせれば、この世の誰も追いつけない。

 真の意味での最速を手にする。

 アグニとトール。

 この二振りがあれば、もう一振りも思い浮かんだはずだ。


 『最優』の勇者オータムの聖剣。

 流水の聖剣ポセイドン。

 アルテミスからポセイドンに持ち替え、自身の足元を中心に水流を生み出す。

 高波がサタンを襲い、周囲が水で浸かった所で、雷撃を突き刺す。


「ぐぁあ!」


 さすがのサタンも防御が間に合わず、戦いが始まって初めてダメージを受けた。

 しかしすぐに黒劉で周囲を吹き飛ばし、水と雷撃を遠ざける。


「はぁ……偽物ではないのか」

「お前と一緒にするな。正真正銘、全て本物の聖剣だ」

「新たに聖剣を手に入れたというのか。この短期間で所有者が移り変わるなど……」

「勘違いするな。別に、俺の魂に宿る聖剣は増えちゃいない。変わらず七本だけだよ」


 俺はトールとポセイドンを手放す。

 ふわっと淡い光の粒子になって消えて、代わりにイブを握る。


「教えたばかりだろ? この剣は誰の名を持っている? 生命は……神は誰から生まれた?」

「――! まさか……」

「気づいたか? そう……神はイブから生まれた。ならば神の生み出した聖剣も、元を辿ればイブの力に通じる。神意解放した俺は、イブの力を行使できる。故に……」


 サタンは驚愕する。

 眼前に広がる光景に、圧倒的な存在感に。

 無数の聖剣が列を作り、俺とサタンを囲むように回る。


「――全ての聖剣は俺の支配下だ」

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