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UNLIMITED  作者: しんた☆
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第1章 フィン・ハーパー 4

 雑用係を言いつけたまま、じっと僕を見るリーダーさんだったが、少し考え込んだ様子で、「まあいいか」とつぶやいて部屋に案内してくれた。ベッドが2つと机があるだけの部屋だ。


「こっちはブルーノが使っているから、手前のベッドを使うといい。朝食は7時。8時をすぎると食堂が閉まるから遅れるな」

「はい」

「分からないことがあれば、同室のブルーノか、さっきの受付にいたミゼルに聞いたらいい。」


 リーダーさんはそれだけ言うと、あっさりと引き上げて行った。少ない荷物をベッドの横に置いて、フウっとため息をついた。与えられたベッドの上には微かに砂が浮いている。手で払って、ベッドに横になってみる。これから、ここでどれだけの時間を過ごさなければならないのか。途方に暮れたまま、いつの間にかぐっすり眠ってしまった。


「ぐはっ!痛い!」

「うわっ!誰だよ、俺のベッドに寝てる奴は!」


 眠っている上にいきなりどさっと全体重を掛けられ、飛び起きた。目の前にいたのは、少し年上の男の子だった。この人がブルーノさんだろうか。


「誰だ!」

「僕は、フィン。今日からここで寝るようにって、リーダーさんに言われたんだ」

「はぁ?お前みたいな赤ちゃんが来るところじゃないぞ。家に帰れ!」


 男の子は憎らし気に言うと、プイっと踵を返して部屋を出て行った。そして、しばらくすると、リーダーさんが邪魔くさそうに現れた。


「だから、言ってるだろ。ここは2人部屋なんだ。今まではたまたま誰もいなかっただけだ。自分一人で使おうなんざ、20年早いんだよ!

「俺だって、来年からは討伐隊に参加するんだぜ。一人前じゃないか!」


 リーダーさんは吠え立てる彼をギリっと睨むと、つぶやいた。


「ほう、お前はそんなに強力な力を持っているのか。それで、ブルーノ様が一人部屋にするってことは、こいつの相方もいないから、こいつも一人部屋で、俺と所長に2人部屋を使えってことか?」

「ええ、そ、そういうことじゃなくて…わ、分かったよ、がまんするよ」

「下らんもめごとをおこすなよ。」

「ちっ!俺だけの部屋だったのに。」


 リーダーさんはそう言い残してさっさと出て行った。ブルーノさんは悔しそうに僕を一瞥すると、奥のベッドにドカッと寝ころんだ。僕はあまりのことに体がこわばっていたけど、旅の疲れが出たのか、早々に眠りについてしまった。



 翌朝は5時に目を覚ました。家にいるころからこの時間に起きるのが日課になっていたので、目覚まし時計がなくても正確に起きられる。早々に服を着替えて、受付に向かう。そして、周りを見回せば、片隅に縦長のロッカーが見えた。


「あれかな?」


 金属の扉を開けると、思った通り掃除道具が入っていた。家に居たとき、父上とやっていたことを思い出して掃除を始めることにしたんだ。昨日は気づかなかったけど、受付フロアはゴミだらけだ。ガムやたばこの吸い殻も落ちているし、武器の部品らしきものまで転がっている。これって、何かに使う奴じゃないだろうか。

 床に落ちていた黒いかけらを手に取ると、父上が武器の手入れをしているときに並べてあったかけらを思い出した。小さなネジや、見たこともないきれいな石まで落ちている。大事そうなものと、ゴミを分けながら掃除をしたら、今度はバケツに水を汲んで拭き掃除だ。


 窓ガラスを拭いていると、外から「キュルン」と鳴き声が聞こえてきた。


「クルン! お願い、高いところは届かないんだ。手伝って」


 クルンは、絞ったぞうきんを受け取ると、見よう見まねで窓ガラスを次々拭いていく。クルンがしっぽを室内に入れて僕を支えてくれるから、内側を僕が、外側をクルンが拭くと、あっという間に終わってしまう。


「やったね!クルン、ありがとう!」


 クルンは楽し気にその場で一回りしてすっと姿を消した。


 それにしても、この窓はどのぐらい掃除してなかったんだろう。朝日が差し込んだフロアは、とっても明るい。ぞうきんを片付けていると、どかどかと大きな足音が響いてきて、ドドン!と扉が開けられた。


「やべぇ! 俺の魔石、どこやった!?」


 入ってくるなり、大声で叫んでいるのは、昨日父上の名前を挙げていた人だ。しゃがみ込んで床の上に転がっているだろう何かを探している。だけど、床にはゴミも塵も落ちていないのを見て、いきなり僕に掴みかかった。


「てめぇ!俺の魔石を横取りしやがったな!」


 力任せに突き飛ばされ、僕は壁にぶち当たった。


「何の騒ぎだ!」


 物音を聞いたリーダーさんがフロアにやって来て絶句している。


「これは、どういうことだ?床がきれいになっているじゃないか。それに妙に明るい」

「そ、それどころじゃねえ。俺が昨日置いておいた魔石が無くなってるんだ。犯人はこいつに決まってる!」


 リーダーさんは、怒り狂う男を抑えて、僕に手を差し出して立たせてくれた。そして、静かに確認してきた。


「フィン、どういうことだ」

「僕は雑用係だって言われてたから、掃除をしただけです。落し物は、そこのかごに集めておきました。」


 カウンターに置いてあったかごに、武器の部品やねじと一緒にきれいな石も置いている。二人はすぐさまそれを手にとった。


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