大いなる旅立ち。11
『な、なんだ!? この力はっ!!』
大ムカデでは、私の一撃で真っ二つに割れていた。
『わ、私がやったの??』
『た、助かった……。』
『秀郷様! お怪我は有りませんか!?』
『お、おお。 儂は何とも無い。
それにしても、今の力は……。』
『私も無我夢中で、何が何だか……。』
『しかし、アヤメ殿はあの大ムカデよりも強いのだから恐ろしわ。』
『ひ、秀郷様っ!!』
私達は大笑いした。
『しかし、先程の光輝くアヤメ殿は、失われた記憶と何か有るのやもしれぬな。』
『私の記憶と??』
『分からぬが、あれは人智を超えた力だ。
まあ、ともかく礼を言う。』
『気にしないで下さい。
さあ、もう今日は帰りますしょう。』
そして、日も暮れようとしていた。
それて、私達は将門様がお借りしている屋敷へと戻った。
『な、何と! その様な事が有ったのか!?』
将門様に報告すると、眼をまん丸にして驚いていた。
『で、でも秀郷様が助けてくれたので助かりました。』
『あ、アヤメ殿っ!?』
私は秀郷様の背中をつねった。
『い、痛っ!!』
『秀郷殿、如何なされた??』
『もお、秀郷様ったら、背中に虫が止まってましたよ?
刺されてしまっても何か有ったらいけないので、つい叩いてしまいました。』
『あ、アヤメ殿っ!!』
『しーー!!
秀郷様!? 私が倒したなんて言ったら秀郷様の名誉が……。』
女の私に助けられた事実が分かれば、秀郷様の名誉は地に落ちる。
だから、秀郷様が退治したと偽った。
『もう、あの時の秀郷様の武勇を将門様にも、お見せしたかったですよ!』
『そうでしたか!
で、どの様に退治したのですか?』
『あ、え??
そ、そりゃあ、太刀を抜いて迫り来る無数の腕を切り落としながら……。』
『それは凄い!
秀郷殿、ささ! もっと酒をご用意致しますので、お聞かせ下さい!』
『あ、ああ……。』
『それから秀郷様は、それでも向かって来る大ムカデに一歩も譲らずに、勇敢に戦ったんですよ!!』
『そこで儂は、一気に大ムカデを一刀両断に真っ二つに切ったのだよ!!』
『流石は秀郷様!!
この将門、感服致しましたぞ!!
ささ、呑んで下されぃ!!』
申し訳無さそうに、秀郷様は盃に酒を注がれる。
その姿が、何だか可愛いらしかった。
それからも、大ムカデ退治の話で盛り上がった。
そして秀郷様は、私をちらっと見つめる。
私は、困る秀郷様の顔にほっこりと笑ってしまった。
©︎2022 山咲 里