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「んっ、いっつ……」
目が覚めると同時に頭に痛みが襲う。
(たしかダンとシェリーとで隣の羊亭から移動したのは覚えてるが……だめだ、全然思い出せねぇ…)
周りを確認してみると例の部屋のベッドの上のようで記憶はなくなっているが無事に帰ること自体はできているみたいだ。
それでも帰ってきてそのままベッドに倒れこんだのか服装なども昨日外に出たときのまま。とりあえず頭の疼きを我慢しながら水を沢山飲み、体を拭いたりと身だしなみを整える。その間に鐘の音が聞こえたがまだ鐘5つとそこまで遅く寝ていたわけではないようだ。
とりあえず、昨日ダンと話した際に今日までは予定がないと言っていた為、ダンたちが泊まっている宿に向かうことにする。道中、屋台が出ている通りを通った際は普段なら美味しそうに思うにおいも今の体調には堪える。気持ち悪くなりながらも道を逸れるなど少し遠回りしながら宿に向かう。
昨日と同様に宿の受付でダンたちを呼んでもらうように声を掛けると今日は特に訝しむことなくすぐに確認しに行ってもらえた。
少ししてダンではなくシェリーが一人で出てくる。
「イーライ君おはよー!」
「…悪い、あんまり大きな声出されると頭に響く……」
「あぁ、ごめ〜ん。ダンと二人でかなり飲んでたみたいね〜」
そういわれても途中からの記憶がない。
「たしか隣の羊亭である程度飲み食いした後、ダンのオススメの酒場に行った気がするが…その後のことは覚えてねぇ。俺らどれだけ飲んでたんだ?」
「さぁ~?私はそこまでお酒に強くないから途中で先に帰ってきたけどもなんか飲み比べを始めるとか何とか言ってたような?まぁダンが帰ってきたのもかなり遅かったしあのままのペースで飲んでたらすごい飲んでたんじゃない?」
…やっぱり全然記憶にない。
「じゃあダンは今も寝込んでる状態か?」
「そうねぇ、水を飲ませたり介抱はしてるけどもまだ起き上がれなさそうかな?」
となると今日はダンとの手合わせは出来なさそうだな。
「今日もダンと手合わせしに来たんだろうけどもごめんね」
「いや、大丈夫だ。ダンにはお大事にとまた今度顔を出すって伝えといてくれ」
「はーい、昨日の最後の方見てたけども形にはなってきてたしあとは数をこなして慣れてくればダンにだって一発かませるようになると思うし頑張れ!」
「あぁ、ありがとな。じゃあ今日のところはお暇するよ」
シェリーと別れを告げてから外に出て通りを歩きながらこの後のことを考える。
魔力操作の練習も大切だが建国祭の武術大会の受付まで余裕を持ったとしてあと5日の猶予しかない。ならばレベルも上げるためにダンジョンに潜りつつ、実戦形式で練習するほうが効率がよさそうだ。
幸い、昨日ダンの元へ行く前にある程度の準備は済ませているし、ダンジョンの近くの街まで出ている馬車もまだ最後の便が出るまで余裕がある。二日酔いで体はだるいが馬車での移動も半日もかかる。それだけの時間があれば体調もある程度楽になるだろう。
そうと決めれば善は急げ。残りの軽い準備を済ませて駅馬車に向かう前に隣の羊亭に顔だけ出しておく。営業時間は終わっており、店内は女将さんやシーナが掃除をしている。扉をくぐったことでこちらの存在に気づいたのかシーナが駆け寄ってきてくれる。
「イーライ君、おはようございます!どうされました?」
「うん、おはよう。またダンジョンに潜ることにしたからそれを伝えるためにちょっと顔を出させてもらったんだ」
「そうなんですね。でも…建国祭までには帰ってきてくださいね?」
そういいながらこちらを上目遣いで見上げてくる。
「俺も一緒に観光するの楽しみにしてるからそれまでには絶対帰ってくるよ。約束だ」
「約束ですからね!」
そういって笑顔で笑いかけてきてくれる顔を見ているとまた記憶にない映像が脳裏によぎる。
シーナに似た顔、同じような黒髪をした女の子と小指と小指を絡ませている光景だ。
しかし、それも一瞬のことでズキッとした痛みで現実に引き戻されると目の前でシーナがこちらを心配している。
「…大丈夫ですか?」
「ちょっと二日酔いのせいか頭が痛くてな…もう大丈夫だから。じゃあまた帰ってきたらご飯を食べに来るよ」
「はい!待ってますからね!」
シーナと別れた足でそのまま北門へ向かい駅馬車の受付をしてから馬車に乗り込み、出発するまで待機しておく。その間、さっきまた映像を考えるも一瞬だったためあまり手がかりになりそうなことが思い浮かばない。そうこうしていると時間になったのか目的の街へ向けて馬車が発進する。




