⑨
4/4改稿
初めてのダンジョン探索を終え、無事王都に戻ることが出来た。
早速モンスターの素材を売るために商業ギルドを目指す。
商業ギルドは中央広場を挟んで冒険者ギルドの反対側にある。多少リスクがあるが売却しなければ現状お金を稼ぐ手立てはない。こんなことなら昨日のおっさんを吸収しておいてストックしておけばよかったと後悔する。
まぁ済んだことを悔やんでも仕方ない。なるべく目立たないようにローブを目深にかぶり、少し緊張しながら商業ギルドへ足を踏み入れる。
商業ギルドは冒険者ギルドとは違い、中に酒場を併設しておらず、広いエントランスの先に複数の窓口が存在する。また床もきれいに磨かれておりここまで違うのかとびっくりする。
少し面食らってしまったが手早く済ませるため素材の買取を行う窓口を探す。
やはり素材の買取は冒険者ギルドの方に持ち込むことが多いのか他の受付に比べ空いており、すぐに順番が来た。
「ようこそいらっしゃいました。本日は素材の買取でよろしいでしょうか?」
「はい、お願いしたいんですがどこに出せばいいですか?」
「量があるようでしたら専用の部屋がありますのでそちらで一度担当の者に確認してもらってもよろしいでしょうか?」
そういって受付の人に隣の部屋に向かうよう案内をされる。
隣は解体部屋になっているようでそこのおっさんに出すようにと言われる。
収納スキルは珍しく、バレると何かと騒がれるリスクもあるため如何にも腰に下げている袋がアイテムボックスかのように偽装しながら素材をスキルから取り出す。
兎10匹分くらいのサイズのアイテムボックスなら多少値は張るもののそこまで珍しいというわけでもない。特に怪しまれることなく討伐した9匹分の兎の素材と肉を出す。
「雪景の洞窟の氷角兎じゃねえか。ちゃんと解体されてるしこれなら1匹当り銀貨15枚ってところだな」
「じゃあ9匹とも売却でお願いします」
すこし安い気もするが仕方ない。
解体部屋のおっさんから文字の書いてある札を受付に持っていくように言われ、再度受付に向かい札を渡す。
「はい。氷雪兎の買取で銀貨135枚分ですね。すべて銀貨でお支払いいたしましょうか?金貨も混ぜますか?」
「金貨も含めて頼む」
「かしこまりました」
そして受付から金貨1枚と銀貨35枚を受け取り、何も問題が起こらなかったことに安堵しながら商業ギルドを後にし、晩飯を取るべく隣の羊亭へ向かう。
中に入ると今日も繁盛しているようでシーナも女将さんも忙しなく動いているが入店に気づいて声をかけてくれる。
「いらっしゃいませ!てイーライくんだ!好きな席に座って待ってて!」
言われるがまま昨日と同じカウンターへ座り待っているとシーナが来てくれる。
「朝ぶりだね!今日は何食べる?」
「昨日もオススメで当たりだったし今日もオススメで頼むよ」
「はーい、じゃあ少し待っててね!」
オーダーをして手持ち無沙汰であるため、店内の様子を見てみることにする。
どうやらシーナは持ち前の元気さと明るさのおかげか看板娘としてお客さんみんなから孫のように可愛がられている。そんな環境で働いているためかシーナ自身も楽しそうでいきいきと接客をしている。
そんなことを考えながらボーっとしているとシーナが料理を持ってきてくれる。
「はい、お待ちどうさま!今日は子兎のパイ包み焼きがメインです!」
「ありがとう。いただきます」
そういってパイの包み焼きとスープと付け合わせを目の前においてくれる。
すこしタイムリーな食材に笑ってしまいそうになりながら一口食べてみると鶏肉のようでいてパサつきもなく柔らかい。それでいて淡泊なのにプリッとしていてソースとも合いとても美味い。
気づけはあっという間になくなってしまっていた。その後シーナと二言三言話して今回こそお代をしっかりと払いお店を後にし、部屋へと戻る。
部屋に着いたら装備を外し、明日のことを考える。
(今日が推奨レベル100のダンジョンだったが簡単だったな。明日は推奨レベル150前後のダンジョンに潜るか)
そう考えダンジョンが書かれている地図へと目を向け探す。150前後で一番近いダンジョンは王都の周辺にはなく、馬車で片道1時間弱の場所にある隣町の付近の推奨レベル170のダンジョンかそこからさらに馬車で4時間かかる場所にある推奨レベル140のダンジョンしかないようだ。
(推奨レベル170と140か…安全を考慮するなら140のダンジョンの方がいい気もするが……)
いくら泊りで潜るにしても流石に片道5時間かけるのはすこし時間のロスが大きい気がする。
今日は結局レベルも1しか上げることが出来中たため、ペースを上げる必要がある。
(少し危険かもしれないが推奨レベル170のダンジョンに潜るか……朝一で準備に取り掛かるか)
自分のレベルよりも上のダンジョンの為、念を入れてしっかりと準備して向かうと決め、今日は体を休めるべく、体を拭いて布団に入ることにした。