サライヨ
深い悲しみの涙、その涙のたまった湖に溺れそうな私。
誰かが私に手を差し伸べる。それは誰?
いや、人じゃない。それは言葉を話すが人じゃない。
ハト、それはハト。そんなハトさん、私にこう言うの。
「やあ、お嬢さん。君は涙を流し俯いている、だからたまった涙で溺れるんだよ」
そんなのハトさんに言われたくない、空を飛べるのに地を這うハトさんには。
「ハトさんあなたはいいですよね、空が飛べるから。だけれど、今日も下を向くとあなた達が私の足元でパンクズを突付いてた。そんなあなたが言える立場なの?」
ハトさんは胸を膨らませ、白くて小さな羽根を広げて言いました。
「ボクは悪魔なんだ。お嬢さんたちがボクを見下したところで、ボクの思う壺なのさ」
平和の象徴とさえ言われたハトさんが、空を見上げて言います。
「お嬢さんが下を向いてる間、ボクは魂を突付いてる。お嬢さんが後ろを振り返ってる間、ボクは大空を羽ばたいているんだよ。」
ハトさんはとてもイジワルだ。
「それならハトさん、私も空を飛んでみたい」
「悪魔のボクにお願いするの? 見下ろせばパンクズを突付くボクにお願いするの?」
「はい、私は溺れて死にたくない」
「それならおいでお嬢さん」
ハトさんは私を涙の湖から助けてくれた、そして空へと連れてった――
そこは想像と違う世界、とても苦しくて寒くて痛い世界。
「息ができないよハトさん」
ハトさん呼んでも返事が無いの。
そしたら違う声で返事が聞こえた。
「汝、空気を欲するか」
「……空気が欲しい」
周りの空気が変わった、とてもやわらかい空気に。
私に返事をくれたのは、カラスだった。
「カラスが私に空気をくれたの?」
黒く大きな翼を羽ばたかせカラスは言います。
「我は、天使。汝の願いを叶えよう」
カラスが天使?
「カラスが天使なんて聞いたこと無い、人に迷惑かけるし」
「汝は、天使を見た事があるのか。汝は人に迷惑をかけたことがないのか」
天使は見た事はない、人に迷惑もかけた。
「それならカラス、私の願いを叶えてみてよ」
「汝、願いを言え」
「とりあえず寒いから、暖かい服装とストーブを頂戴」
私は暖かい服装とストーブを手に入れた。ストーブの電源はどこから来ているのだろうか。
「これが空なのね、思っていたのとだいぶ違う。それに飛ぶと言うより落ちているだけ」
今更ながら、私がものすごく高い場所にいるという事に気づいた。遠くに小さく見える街からして、かなりの高度に私はいる。
「汝は翼を持っていないから。いや、翼を捨てたからと言うべきか」
私に翼なんて元から無い。
「それならカラス、私に翼を頂戴」
「それは出来ない、一度捨てたものは与えられない」
ケチな天使だ。所詮はカラスか。
「後どれくらいで地上に着くの?」
「それは教えられない、一度捨てたものは教えられない」
やはり天使とは嘘か。こんな事なら自称悪魔のハトさんの方がいい。
そうだ、ハトさんはどこへ。
「カラス、ハトさんはどこへ行った?」
「悪魔は仕事を終えて、地に降りた」
まあ、どうせ夢さ。これは夢さ、いつか覚める夢さ。
「それならカラス、眠いので布団をよこせ」
「汝が望むなら」
ふかふかの布団と大きな枕が私の元に現れた。
「お腹も空いた、ハンバーガーをよこせ」
「汝が望むなら」
夢とはいえ、とても心地のよい夢だ。これならしばらく覚めなくてもいい。
「次は喉が渇いた、紅茶が飲みたい」
「汝が望むなら……」
それからも私はいろいろな物を要求し続けた。
カラスは見事に私の要求通りの物をくれる、少しは見直した。
そんな夢も気付けばかなりの時間がたったのであろう、どうやら地面が近くなってきている。
「カラス、地面が近くなっているがどういう事だ」
「空を落ちていたのだ、いつかは地面に辿り着く」
夢とは言え、それは気分がよくない。
「それでは、次はパラシュートを出してもらおうか」
「そんな物は存在しない」
いままで何でも出したカラスが、パラシュートを知らないとはなんたること。
所詮はカラス、やはり黒い悪魔か。
「それでは落ちて死んでしまうではないか」
「いかにも」
とんだ天使がいたものだ。人が落ちるのになんの救いの手も差し伸べない。夢とはいえがっかりだ。
「願いを叶えると言ったのは嘘か?」
「一度捨てた物と存在しない物は与えられない」
「それなら、こうだ。カラス、私を助けろ」
「それは出来ない、一度捨てたものは与えられない」
なんと使えないカラスだ。こんなカラスとはもう話したくも無い。
「使えぬカラスだ、私の前から消えなさい」
「汝の願いを叶えよう」
そう言ってカラスは飛び去った。
夢とはいえ地面に落ちるのは怖いから、私は眠る。カラスがくれた布団で眠る。
睡魔はすぐにやってくる、目をつぶればすぐにやってくる。
夢の中の夢。それは存在した。
暗闇の
中でちらつく
灯籠
影絵回れば
生きる喜び
「カラス! 親に会いたい!」
さきほど自分で消えろと言ったカラスを呼んでいた。
我侭だと分かっている、しかしカラスよ私の願いを叶えてくれ。
「それは出来ない、一度捨てたものは叶えられない」
「カラス! 痛みが欲しい!」
「それは出来ない、一度捨てた物は与えられない」
「カラス!」
今更遅いよね……
なんてバカだったんだろ私って。
「生きたい!」
カラスが最後に優しさを見せたのかもしれない。
カラスは私に教えたかったのかもしれない。
カラスは本当に天使だったのかもしれない。
カラスが最後に見せてくれたのは、一面に広がる青空だった。
意味不明すぎたらごめんなさい。
でも、分かってくれる人いたら嬉しいかも。