人は、見た目だけじゃない。
「 もう、きみから誘ったのに。うん わかった」
唯花との通話を終えて携帯電話を切り、僕は、ため息一つ落とす。
「 はあー あと1時間も どうすりゃいいんだよ」
よく晴れた 5月の初め。 昨日から始まった連休。 唯花に誘われてこの街一番大きなスーパーで買い物しようって事で来たのはいいけど、唯花が 寝坊したとかで、待ち合わせの時間には、遅れるみたいだ。今から準備するから、来るのは1時間後らしい。
その間スーパーの中で、適当に時間潰すしかないない。
スーパーは、広くゆったりとした作りになっていて、1階は食品売り場。2階には、服屋さんや女の子に人気の雑貨屋さん、ゲーセンやフードコートなんかも入ってる。
さすがに隣町のショッピングモールには負けるけど 、 少し田舎なこの街の中心にあるせいか、地元の中学生 高校生や家族連れで、 それなりに混んでいた。
僕は、その中をブラブラと歩く。
1人で来たのであれば、このまま服屋か雑貨屋さんに入ってしまうのだけど、唯花と一緒に まわる約束をしてるから、避けた方が良さそうだ。
僕は、2階のフロアの一角にある本屋さんに入っていく。
この街じゃ唯一といっていい大手書店のチェーン店。品揃え豊富で、カフェスペースもあるから、本を買ってゆっくり読む事も出来る。唯花が来るまで、カフェで時間を潰そうかな。
僕は、好きな作家の小説をいくつか手に取り中身をパラパラと読む。本当はじっくり立ち読みしてから、買いたいんだけど、マナー違反だし、店員さんから怒られるのも嫌だから、本当にパラっと見るだけだ。
いくつか気に入ったんだけど、このあと、唯花と買い物する事考えたら、一冊か二冊にしとかなきゃ。
泣く泣く本を戻し、本当に気に入った物だけ購入した。
今日諦めただけで、戻した本は、後日買う予定。早く読みたいからと、前をよく見ずにレジへ向かっていたら、人とぶつかってしまう。
「 ごめんなさい 」
そんなに強くぶつかった訳じゃないけど、相手が悪かった。髪を金髪に染め耳やら鼻にピアスを付けた、いかにも恐そうなお兄さんだ。
「 嬢ちゃん謝ればいいってもんじゃねーよ」
.
お決まりなセリフだけど、すんごい目つきで僕を睨んでる。
格好も相まって、竦んじゃって動けないし。異世界にいた頃、こんな事しょっちゅうだったから、慣れてるハズなんだけどな。
でも恐いんだ。体が大きいし。
「 俺のツレが どうかしましたか?」
高橋くんだ。いつの間にいたんだろう?
だけど、僕を睨んでいたお兄さんの反応は、違う。さっきまでは、僕を睨みつけてたのに、今はガマの如く汗をダラダラ流してるし。
「イヤ、別に。なんでもありません」
と言って、お兄さんはスタコラサッサと退却して行っちゃった。
高橋くんを見て逃げたかな。子供の頃から柔道とか色々武術を習ってるから、身体が大きいし、無愛想だから、他人から誤解されやすいんだよね。
レジで支払いを済ませてから 高橋くんに お礼を言った。
「 さっきは、ありがと 助かったよ」
最近は、目をそらす事は少なくなったけど、今日は、照れ隠しなんだろうな。
僕から顔を背けたままだ。
さっきのお兄さんは、いきがってただけみたいだし。高橋くん、見た目は、恐そうでも優しいしね。人は見かけによらないよね。
「別に 大したことしてない。あっちが 勝手に逃げただけだ」
「それでも 助かったよ」
2人で 話しながら歩いてると 後ろから
「 私がいない間に 何、ラブラブしてるのかな?高橋とミズキは」
「 唯花!誤解だから たまたま 会っただけ ね 高橋くん」
「そうだ!緒方 勘違いするな」
僕達が必死に弁解してると 唯花は、意地悪な笑みを浮かべて
「そうゆう事にしといてあげる」
と言った。
その後 そのまま3人で遊ぶ事になり、服屋や雑貨屋で買い物したり ゲーセンで騒いだりした。
たくさん買った物を持たされた高橋くんは、少し 迷惑そうだったけど。