仲直り
ボロボロ泣きながら歩いて帰った僕は、道子叔母さんの顔を見るなり、叔母さんにしがみついて、わあわあ泣いてしまった。その後の事は覚えてない。
気がついたら自分の部屋のベッドの上だった。振り袖も脱がされて、いつも着てるルームウェアに着替えさせられていた。
どうやら泣き疲れて寝ちゃったみたいだ。
おかげで大分冷静になった。ついでに言うと
とある事を思いだした頃の事だ。
あれはいつだったかな?確か同じ孤児院で育ったお姉さんが結婚式を挙げるんだったかで、アスカが今日の僕じゃないけど いつも着てる服は、暗い色の服ばかり着てるアスカが、明るい色のドレスで びっくりして、なおかつ照れ隠しもあったんだろうな本音とは違う事を言ってしまった。
そう似合わないと 。本当は、似合ってるとか、可愛いと言いたかったのに。
アスカは、泣かなかったけど そのかわりめちゃくちゃ怒って 絶交すると言われた。
なんだ、僕も昔今日の健人くんと同じ事をしてるじゃん。
よくよく考えたら、今日の健人くんも照れ隠しだったのかも。
―――服を着替えて健人くんの家に行こう。
そう思った途端、コンコンと部屋のドアがノックされた。
「ミズキ起きてる?」
「うん。起きてる」
いつもならズカズカと部屋に入ってくる茜姉さんなのに、部屋に入らずにドア越しに話しかけてくるなんて、僕の気持ちを考えてくれてるんだろう。
「そう、高橋くん、来てるよ」
「わかった、すぐ行く」
乱れてた髪を手ぐしで直して、部屋を飛び出した。ルームウェアだけど、そんなのかまってらんない。
茜姉さんが、「こら、ミズキ!着替えてから行きなさい!」って怒鳴ってるけど、そんなん知ったこっちゃない。
玄関まで駆け下りると、いつもなら僕を
見ると、仏頂面から笑顔になるのに、今日はものすごく気落ちした顔だ。
なんか大きいわんこが、飼い主さんに叱られて『きゅ〜ん』って鳴いてしょんぼりしてるみたいに見えるな。
「ミズキ、本当にゴメン!あんな事言うつもりなかったんだ!本当にごめんなさい」
と健人くんは、頭を下げてきた。それも最敬礼と呼ばれるお辞儀付だ。
もう怒ってないとはいえ、ここまでされちゃうと、許さないと悪いような気がしてくるよ。
「もう 怒ってないから、 それに、さっき思い出してさ。異世界いた頃今日の健人くんと同じような事アスカに言って めちゃくちゃ怒られた事を思い出したんだ。 だから もういいよ」
「 そっか。いや、あの後、緒方にめちゃくちゃ怒られんだよ。『女子の気持ち分からない、あんたなんかサイテーよ!』って言われてさ、慌てて携帯にかけても出ないしメールも、返信ないからさ来たんだ」
と健人くんは、痛そうに左頬を擦る。よく見たら絆創膏貼ってる。恐らくキレた唯花に引っ掻かれたかなんかしたんだろう。
「僕もごめんなさい」
「あっいや。悪いのは、俺の方だし。
ミズキ。目が赤くなって腫れてるぞ」
「えっウソ!」
慌て、靴箱の上に掛けてある鏡を見ると確かに目が真っ赤だ。おまけに瞼が腫れぼったい。うぅ。別な意味で泣きたいよ。
「ほら目薬いいか分からんが、さしとけ。
使ってないヤツだから大丈夫だ」
「ありがとう」
と受け取った目薬を見て、苦笑いしてしまった。
使ってないヤツって、ピンクのケースの目薬なんか健人くん使わないじゃん。
言い方は、いつも通りだけどやっぱり、今回のは、相当参ったんだね。
よし。
「健人くん。今度からあんな事言わないって約束して?」
僕は、小指を健人くんの目の前に差し出した。
―――僕って意地悪かな?でもいいもん。
こうした方が約束破りにくくなると思うし。
「 ああ もう 言いません 約束します。というか絶対 ミズキを泣かせません」
健人くんは、僕の小指を絡ませるだけじゃなくガッチリと僕の手を握った。
ちょっと恥ずかしかったけど、嬉しかった僕だった。
書いててなんですが、砂吐きそうでした。
次回で本編はとりあえず終了です。番外編を3話やって終了です。しばらくお付き合い下さい。




