アストロメリアへ 1
平和学習とホームルームが、終わり、帰ろうとしたところを僕と唯花、それと高橋くんが、茜姉さんに捕まった。
なんでも英語準備室の整理を手伝えとの事だ。
「 なんで 、僕達が 茜姉さんの手伝いしなきゃいけないの?」
そうボヤキながら、英語準備室の一角で、唯花や高橋くんと一緒に山のような書類を仕分けてるんだ。
家の手伝いは、いくらでもやるけどさ。
学校で、こき使うとかやめて欲しい。
姉という立場を利用した、職権乱用じゃない?公私混同も甚だしいんだけど。
「 いや 3人が 宿題を終わらせてるって話を聞いたもんで。 しかも 部活無いっていうし こりゃ 丁度いいかな って思ったのよ」
茜姉さんは、 悪びれることなくそう言ってくれる。
イヤイヤ。計画的犯行のニオイが、プンプンなんだけど!
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「 そりゃ そうでしょ!3人共 手芸部なんだから!しかも昨日何気に、高橋くんの道場へ行く日とか知らないかとか訊いてきたでしょ! それわかってて、僕達捕まえたんでしょ!」
「そうよん 実は」
茜姉さんは、 さらっと言ってくれた。
―――やっぱり。まったく、妹として恥ずかしいんだけど。妹だけじゃなく、妹の友達まで使うんだから。
「俺は、別にいいけどな。どうせ 家に帰っても暇だしな」
「あたしも 面倒みなくちゃいけない 弟共は、じいちゃん家に泊まりに行っていないしね 」
2人共いい人過ぎるぞ。今後も そんなだと、茜姉さんに使われちゃうぞ。
「 帰りウチに寄って行ったら?お礼に 夕食 ご馳走するよ。家の人には、そう言えば 大丈夫でしょ?」
「 じゃ お言葉に甘えて 」
2人は、 二つ返事で OKした。
作業が 終わり帰る支度をして 校舎から出ようとしたとき 異変が、起きた。
突然 光が 僕ら4人を包みこんだと思ったら 下へ向かって落ちていく 感覚が 伝わってくる。
「 うわわ」
「何々?」
「落ちる落ちる」
「 きゃあ なによ」
4人それぞれ 悲鳴をあげること 数秒後 校舎からいきなり 教会らしき建物の裏へ着いた。
僕達は、あたりを見渡していると 鋭い女性の声がした。
「そこにいるのは誰?ここは、聖アストロメリア教の教会よ 早く立ち去りなさい!」
と聖アストロメリア教のシスターの証である黒いワンピースを纏った女性が出てくる。女性は、慎ましくあるべきとされるこの国では、珍しく勝ち気な雰囲気を醸し出した、黒髪の女性。僕の幼馴染であり、大事な家族だ。
「アスカ」
声やパッと見た感じは、わからないかも知れないけれど、彼女ならすぐ分かってくれるはず。
女性は、鳩が豆鉄砲を食ったような目をして、僕を見つめ
「まさか ミズキ?」
「そうだよ ミズキ ハートウェル 」
「 えぇ〜。一体全体どういう事? 死んだんじゃあ。それとも化けて出てきたとか?」
とベタベタと、僕を触ってブツブツ言ってるし。幽霊じゃないわねとか。
いや、一時的に実体化してるのかもとか、色んな事言ってるし。
「アスカ。落ち着いてくれない?あのさ、今までの事、ゆっくり話したいから、 教会の中入っていいかな?」
「 いいわよ あんたが そんな可愛い姿の理由とお友達?の話も聞きたいしね」
アスカは、そう言って教会へ僕ら4人を 招き入れ、小さな部屋へ僕らを通した。
「 適当に 座って お茶いれるから」
アスカは、部屋の隅のコンロに火をつけて、湯を 沸かす。さっきまで、動揺してたのに。切り替えが、早くて助かる。
お茶を5人分用意すると 自分も席に着く。
「まだ、私の名前教えてなかったわね。
私は、アスカ エイベル。ここでシスターやってるわ」
アスカの自己紹介のあと、茜姉さんが自己紹介する。
「 私は、 佐藤 茜 学校の教師 この子達は、皆 教え子よ。ミズキとは、家族として 一緒に暮らしてる」
茜姉さんに促されて 高橋くんと唯花も自己紹介する。
「高橋 健人といいます」
「緒方 唯花 です」
2人の自己紹介が、済むと 茜姉さんが口を開いた。
「 まずは、アスカさんの疑問に答えなくちゃいけない わね ミズキ あんたから説明しなさい それと 高橋くん 緒方さん 2人にとって 驚く話になるけど 大丈夫?」
「 大丈夫です 多分 ミズキが、 実は、男でした。って言われても 」
唯花の一言に僕は、顔がひきつった。
「 えぇっと そのまさか なのその顔は、ミズキ。私 適当に言っただけ なのに 」
「 お前は、黙ってろ緒方 」
唯花がしゃべると 収拾がつかなくなると思ったのか 高橋くんが 唯花を黙らせた。
僕は、洗いざらいすべてを話した。
「 それで、その姿なんだ 理由は、わかった けど あっちの 2人は、どうなのかな? ミズキの事 変に 思ってるんじゃ」
と アスカ は、言うけど 唯花 の反応は、
「 すげー 私 ミズキの秘密知っちゃったよ
ねぇ 高橋」
「 うん まぁ 大変だったな 」
高橋くんは、驚いて 何を言っていいのかわからない感じだけど 唯花は、僕の秘密を知って喜んでる。
「 軽蔑とかしないんだ?」
「 軽蔑?なんでー ? ミズキはミズキじゃん すげー体験してるだけ他と違うんだろうけど、普通の人と変わらないでしょ? 」
「 うん まぁ 」
唯花の言葉に僕は、頷くしか出来ない。
「 それは、そうと 今度はあたしの 疑問に答えてもらえるかしら アスカさんとミズキとの関係とか」
「 幼なじみで この教会の運営する孤児院で 育った 家族でもあるの」
アスカは、ゆっくり話す。僕が、この近くの炭鉱の町で生まれた事。 僕の父親が 炭鉱の事故で亡くなった事。その後、後を追うように母が亡くなり、この教会の孤児院で、アスカやアレックスと出会い、一緒に育った事。
「 ミズキは、15歳になると空軍の士官学校へ入った この国は、15歳で士官学校へ入れるから よその国は、違うけどね。」
「 隣国 と戦争に なるって話になって 僕は 戦場へ赴く事になったけど 正直行きたくは、なかったよ。軍人が こんな事言っては、いけないけど 士官学校だって パイロットになる方法がそれしかないから 入っただけ まぁ 戦争に行きたくないとかいうのは、表に出さないようにしてたよ。知られたら 即 軍法会議だから。」
僕は、そう言った。
「おめえ らしいけど 」
いきなり 聞こえてきた 声に反応して 皆が振り向くと モスグリーンの軍服に身を包んだ、彫りの深い顔立ちをした男性。僕のもう一人の幼馴染であり、家族だ。
「アレックス いつの間に 」
アスカの問いかけに アレックスは、悪びれもせず
「 そこのお姉さんが 自己紹介してたところから。俺 アレックス ホンダ よろしく」
と 茜姉さんに ウィンクする。
相変わらず女好きだ。美人を見ると、すぐナンパするんだから。
まぁただ、茜姉さんは、アレックスの行動を華麗にスルーし、事務的に自己紹介してた。
「 ナンパは、いいから こっち来て 座りなさい」
アレックスを交え 話を続けた。
「 こいつ 子供の頃 まわりからは、変わったやつって 言われて 友達は、俺とアスカしかいなかったんだ。」
「 別に 変わってる って思った事ないけど?アレックスさん ミズキのどこが変わってるんですか?」
唯花の顔は、ほんの僅かに赤い。
多分、怒鳴り散らしたいのを我慢してるんだ。猪突猛進な処がある唯花にしては、珍しい。
アレックスは、唯花のたぎる怒りに気付いたんだろう。自身の発言を訂正した。
「 言葉が 足りなかったな。ミズキの考え方が 変わってるんだ まわりからみたら 俺やアスカはそう思った事は、ねぇけど」
「 えっ?」
唯花は、きょとんとする。
アレックスは、少し考え口を開いた。
「なあ 茜さんだったけ?あんたらの国じゃさ男は、こうじゃなくちゃダメ、女は、こうあるべきみたいな考えがあるか?」
「どういう意味?」
「上手く言えねぇけど男は、強くてたくましく女子供を守るべきとか女は、おしとやかでみたいな」
アレックスの言いたい事がようやく理解出来た茜姉さんは、あぁそうゆことと呟き。
「ないとは、言わないけど 今あなたが言ってたみたいな事は、古い考えだって 批判されることがあるわ」
「そうか 、いや この国じゃその考え方が普通なんだ というか 世間の常識みたいになってる」
「けれど ミズキは、それが 間違いじゃないかそう言ったから 変わってるって 言われた そういう事でしょ?」
茜姉さんの指摘に アレックスは、頷く。
「 ミズキの考え方は、日本じゃ普通になってきてる。まぁ たまに そういうさっきあなたが言ってみたいな事言う人は、いるけどね」
茜姉さんは、一度言葉を区切って
「 まぁ あたしもさ偉そうな事 言えるほど人間できてない。でも これだけは、言える まわりと考えが違うから変わってるって言われると悲しいわね。あたしの意見だけどね」
「 そうかも 小さな時から そういう風に教わるから 誰もその事に疑問に思わないのよね あるいは、疑問に思っても ミズキみたいに口にしないのよ まわりから 批判されるの何となくわかってるから」
アスカや茜姉さんの言葉を聞いて 僕は、この国にいたときの疑問が とけて 嬉しかった。
そんな事 考えてたら 高橋くんが ぼそりと一言。
「 スゴい勉強になる話のあと で、申し訳ないんですけど 俺たちどうやって 日本に帰れるんですか?」
「 そういや そうね」
重大な問題だったよ。どうやって帰るのさ、僕ら。
補足説明です。エピローグでは、戦争前ですが、アストロメリアでは、戦争は終わって、1年以上経過しております。




