表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/95

#93 久々の家族との遣り取りと、焼うどんの朝ご飯

SNSに家族からお返事が。

そしてまた朝ご飯ですよ。

どうぞよろしくお願いします!(* ̄▽ ̄)ノ

少しでもお楽しみいただけたら嬉しいです!

 夜営業の仕込み、そして営業が始まってしまえば、壱はスマートフォンを気にする余裕も無くなってしまう。


 なので、家族にメッセージを送ってから、次にスマートフォンのチェックが出来たのは、寝支度を終えてからだった。


 SNSアプリのアイコンの右上には、新たに数字が表示されていた。壱はアイコンをタップする。


 家族グループに母親、そして妹からのメッセージが届いていた。妹からのものが多いのは、文字入力速度の違いだろう。


「本当に壱なの? 無事なの?」

「お兄ちゃん元気なの?」

「パパも心配してるよ!」

「どこにいるの? 異世界ってなに?」

「おじいちゃん? 本当?」

「お父さんがいたの!? どこ!?」

「帰れないってどういうことなの?」


 (ほとん)どが質問ばかりで、壱はつい苦笑する。しかしそれも仕方の無い事なのかも知れない。


 1ヶ月も行方不明だった息子からの、兄からのメッセージ。しかも異世界にいると言う。混乱もするだろう。


 壱は返信を打つ。



  異世界って言われても意味わかんないよね。

  でも本当のこと。

  俺もじいちゃんも無事だし元気。

  大丈夫だから。安心してね。


  帰れないのは、異世界にいるから。

  でも本当に大丈夫だから。

  平和な村なんだよ。


  これまでメッセ送れなかったのは、

  送っていいものなのかどうかわからなかったから。

  でもこっちの偉い人にOKもらえたから。

  これからたまに送るね。


  じゃあまた!



 送信ボタンをタップ。


 そして、壱が気に入って良く使っていたカピバラのシリーズのスタンプを追加した。身分証明のつもりである。


 「こっちの偉い人」とは勿論サユリと茂造の事である。茂造はともかく、「こちらには喋るカピバラがいる」なんて伝えたら、家族の混乱はますます大きくなるだろうから、これは黙っていよう。


「家族から返事があったのだカピか?」


 壱と一緒に部屋に戻って来て、とっととベッドに横たわっていたサユリに()かれる。


「うん。やっぱり異世界とか意味判んないって。そりゃあそうだよね。混乱してるみたい」


「ま、仕方が無いカピ」


「まぁね」


 だが、それも徐々(じょじょ)に落ち着いて行くだろう。


 とりあえず無事だと言う事は伝わっていると思うのだが。


 さて、アプリを落として寝ようか、としたところ、新たに家族グループにメッセージが入った。妹からだった。



  よくわかんないけど、お兄ちゃんもおじいちゃんも無事ならよかった。

  こっちもみんな元気だよ!

  またメッセ送ってね!

  こっちからも送るね!



 壱は返事として、「OK」と書かれているカピバラのスタンプを送信した。


 さて、今度こそ寝るぞ。壱はスマートフォンを机の引き出しに仕舞う。


「おやすみ、サユリ」


「おやすみカピ」


 そうして、ベッドに潜り込んだ。




 一夜明け、壱はまた朝食を作る為にキッチンに立つ。


 今朝は米を仕掛けていない。代わりに使うのは小麦粉である。


 ボウルに小麦粉、塩少々、水を入れて、力を込めて練って行く。


 しっかりと(まと)まったら、綺麗に丸めて寝かせておく。


 その間に他の食材を取りに厨房へ。冷蔵庫から豚肉、棚からきゃべつ、玉ねぎ、人参を取り出す。裏庭からは玉ねぎの苗を。


 上に戻り、早速下拵(したごしら)え開始。まずは大きな鍋に水を張り、火に掛ける。


 次に、玉ねぎは櫛切り、きゃべつはざく切り、人参は短冊切り、玉ねぎの苗は小口切り、豚肉は薄切りにして一口大にし、塩と白ワインを揉み込んで下味を付けておく。


 さて、寝かせておいた小麦粉の(かたまり)を再度練る。力を込めて、(てのひら)で押し付ける様にして伸ばし、纏めては伸ばしを繰り返す。


 鍋を見ると、そろそろ湯が沸いて来た。


 台と小麦粉の塊に打ち粉をして、綿棒で四角く伸ばして行く。厚さが5ミリほどになったら蛇腹(じゃばら)に折り畳み、端から8ミリ程の幅に切って行く。


 (めん)状になったそれを、湯が沸いた鍋に入れて()でる。麺同士がくっつかない様に菜箸(さいばし)で解してから、麺が湯の中で踊る様に、だが吹き(こぼ)れない様に火加減を調節して。


 さて、合わせ調味料を作る。味噌を水でクリーム状になる様に解き、砂糖を加える。


 続けて鰹節(かつおぶし)を引き削りにしておく。


 さて、調理開始。フライパンを火に掛け、温まったらオリーブオイルを引き、まずは豚肉を炒める。


 しっかりと火が通って色が変わったら人参、玉ねぎを入れる。玉ねぎがしんなりして来たらきゃべつを加え、塩を振り、更に炒めて行く。


 さて、そろそろ麺が茹で上がる時間だ。フライパンの火を止めておき、麺をざるに開け、しっかりと水洗い。麺同士を(こす)り合わせる様にして(ぬめ)りをしっかりと取る。


 後は仕上げなので、サユリたちが起きて来てからするとしよう。その間に洗い物を済ませておく。


 すると茂造がキッチンに顔を出した。足元には眠たそうなサユリ。


「おはようの。今朝もありがとうの」


「おはようカピ」


「おはよう。すぐ出来るよ」


「ほいほい。じゃあ儂は支度をして来るからの」


 茂造は洗面所に。サユリはテーブルの上へ。


 フライパンを再び火に掛けて炒め直す。温まったら水をしっかりと切った麺を入れる。


 具と麺がしっかりと絡む様に混ぜながら炒め、合わせ調味料を入れ、更に炒めて行く。


 (こう)ばしい香りが立って来たら鰹節を入れ、ざっと混ぜる。


 皿に盛って、玉ねぎの小口切りをぱらりと振る。


 焼うどんの完成である。


 今日は汁物は無しで勘弁(かんべん)して貰おう。


「ほう、味噌の芳ばしい匂いがするのう。焼うどんじゃの?」


 茂造が嬉しそうに鼻を寄せる。サユリも鼻をひくつかせた。


「うどんと言うものは焼く事も出来るのだカピか」


「そうそう。焼いても美味しいよ。味付けもね、これは普通の味噌使ったけど、赤味噌にしたらまた変わるし」


「それもまた作ると良いカピよ」


「うん。今度ね」


 フンと鼻を鳴らすサユリに、壱は微笑んだ。


「ではいただくかの」


「いただくカピ」


「いただきます」


 (はし)でうどんと具を合わせて持ち上げ、口に運ぶ。うどんのコシはなかなか。手で捏ねるしかしていない事を思えば、充分及第点だろう。


 問題は味である。うん、砂糖が入っている事もあって、合わせ調味料を入れた後は焦げやすかったのだが、それが良い味わいを出している。


 鰹節も良い仕事をしている。我ながら素晴らしい味付けである。


「うんうん、旨いのう。やはり味噌が芳ばしくて良いのう」


 茂造が嬉しそうに頷くと、サユリもふんふんと鼻を鳴らす。


「ふむ、焼いたうどんもなかなか良いカピ」


「気に入ってくれた? なら嬉しいな」


 壱は嬉しくなって、ふんわりと微笑んだ。


 さて、食べ終わったら、また慌ただしい1日が始まる。


 この世界に来てからの1番の懸念(けねん)が晴れたので、心は晴れやかだ。


 と言いつつ、実際は普段の忙しさや楽しさに埋もれて、スマートフォンを眼にしなければ思い出す事が少なかったのではあるのだが。


 これからは家族を安心させる為にも、出来る限りまめにメッセージを送る事にしよう。


 まずは米の苗の水遣りからだ。みんなで世話をしているお陰で、かなり伸びて来た。もうそろそろ田んぼに植えられるだろうか。


 そうなると田んぼに水を張らなければ。


「ごちそうさま!」


 壱は空の皿を前に、手を合わせた。

ありがとうございました!

続きは少々お待ちくださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いい奈さんの「カピバラ×グルメ」
異世界転移料理人は、錬金術師カピバラとスローライフを送りたい。
カピバラさんと異世界のんびり料理旅(スローライフ風味)
どうぞよろしくお願いします!(* ̄▽ ̄)ノ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ