表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/95

#16 味噌までの道程は遠いのか

前のお話からもうちょこっとだけ続いてしまいましたが、ちゃんと時間は進みます。

どうぞよろしくお願いします!(* ̄▽ ̄)ノ

少しでもお楽しみいただけたら嬉しいです!

「なるほど、それがこの村の前身な訳か」


「そうカピ。それから我と3人で助け合って、森の恵みを頂いたり海の恵みを頂いたりしたカピ。そして、半年も経たぬうちに他の人間が現れたたカピ。不思議とまた、罪を犯して、罪は償ったカピが、その場所にいられなくなった者だったりしたカピ。我が見たところ、みんな魔法の素養がある者ばかりたっだカピ。科学的にその関連性は証明されていないカピが、元々持っている性質以外に、内に(こも)った魔法が罪に走らせるのかも知れないカピ。そこを自制できるかどうかは個人差があるだろうカピが。少なくとも逃げて来た女性は前科も何も無かったカピ。気性も穏やかだったカピ」


「そっか。それはそれで大変だよな」


 壱が相槌(あいづち)を打つと、サユリは頷き、また口を開く。


「だから、この村では全員が、男も女も子どもも働かせるカピよ。勿論我の加護にはまた罪を犯させない様にする効果もあるカピ。けど、それを全て抑え込んでしまっては、個性を殺してしまう事になるカピ。なので、働かせる事で発散させ、罪の事などを考えさせない様にしているのだカピ。過去には男は仕事、女は家事と男の世話、そう考える男もいたカピが、そういう人間は結局村から出て行くカピよ。合わないし、誰にも世話して貰えないカピからな。家事も立派な仕事だカピが、時間的に家事だけだと足りないカピ。毎日家中隅々(すみずみ)まで磨くのならともかくカピが」


「でも、中にはいたんじゃないか? 働くの嫌って人」


 壱が聞くと、サユリは眉の代わりに眼を(ひそ)めた。


「男にも女にもいたカピよ。農業や酪農(らくのう)、いろんな仕事を紹介したカピが、どれも嫌だと言う者がカピ。「何で自分がそんな仕事をしなければならないんだ」と言ったカピ。女でも「結婚して専業主婦になって旦那さんのお世話したい、尽くしたい」と言う者がいたカピが、甘やかしては駄目なのだカピ。結婚したとしても、どちらかに寄り掛かっては駄目なのだカピ。依存性でも生まれたら、またそれが罪の元になるカピ。尽くしたいというのは特に危ないカピ。昨日、シェムスとボニーの一件があったカピ?」


「ああ、うん、シェムスさんの浮気がどうこうって」


「あれも、このシステムを取っているから、あの程度で済んだカピ。シェムスは女癖(おんなぐせ)の悪さが元でトラブルに巻き込まれた結果罪を犯し、ボニーは激昂しやすい性格で暴力沙汰を起こして、それぞれ実刑を食らったカピ。我の加護が無ければ、仕事をしていなければ、もっと酷い事になっていたと思われるカピ。ミェムスの浮気も、ボニーの制裁もカピ」


「そして、サユリとじいちゃんが話を聞いてやると」


「そうカピ。それもガス抜きの一環カピ。基本は大丈夫カピよ。罪を犯したけども、反省して償って、本気でやり直したと思っている人間しかこの村にはいないカピ。あ、人間だけでは無かったカピね。メリアンはエルフだったカピ。他にドワーフとかもいるカピ」


「ドワーフ、聞いた事がある。背が低くて、力仕事とかが得意だって確か」


(おおむ)ね間違ってはいないカピ。勿論前科の無い人間もいるカピよ。この村で生まれた者もいるカピ。マユリがこの村生まれカピ」


 シンプルな様でややこしい。壱はそんな印象を受けた。下手にこちらが構えるのは良く無い事だと解っている。だが、どこが逆鱗(げきりん)なのかが判らない。それは勿論人それぞれなのだから、今考えても仕方の無い事なのだろうが。


「村人には、普通に接して欲しいカピ。我の見たところ、壱は人の(かん)(さわ)る様なタイプでは無い様だから、大丈夫カピ。さて、そろそろ寝るカピか。我も少し酔ってしまって、喋りすぎたカピ」


 確かに饒舌(じょうぜつ)だった。普段から口数が少ない訳では無いが、余計な事は喋らないイメージだったから。いや、話に要らない内容はほとんど無かった訳だが。


 壱がベッドに入ると、サユリも壱の横に落ち着く。


「では、お休みカピ」


「お休み」


 飲んだ白ワインは寝酒にちょうど良い量だった様で、壱は(すみ)やかに眠りに()ちて行った。





 朝8時。起床、洗顔、朝食。壱は茂造とサユリとともにそれらを済ませ、食堂の昼営業の仕込みに入る。


 カリルとサントも時間通りに出勤して来た。


「おはようございまーっす!」


「おはようございます」


「はい、おはようさん。早速下拵(したごしら)えに掛かってくれるかの」


「はーい!」


 カリルは元気に返事をし、サントは小さく頷く。


 昼営業は、夜とメニューが違う。まずポトフが無い。だが昨日から仕掛けておいて出来たブイヨンを、コンソメにする作業がある。それが今夜のポトフになる。


 パスタはあるが、味付けが違う。昼はペペロンチーノとパジルソース、カルボナーラの3種類。カルボナーラ以外にはその日によって様々な食材が入る。今日はペペロンチーノにはベーコンとマッシュルーム、バジルにはじゃがいもとサーモンが。


 他には玉ねぎにじゃがいもとにんじん、ブロッコリ、カリフラワ、豆類、ベーコンなどが入った具沢山のミネストローネを出す。


 スープはクラムチャウダーと1日ごとの日替わりである。


 サントは早速パンを()ね始め、昼のパスタ作りはカリルが。壱はすでに(さば)かれている肉や魚類を、茂造は野菜を切る。これはブイヨンからコンソメを作る分の材料も含む。


 仕込みの途中でホール係の女の子たちが出勤して来て、ホールの掃除を始める。


「さぁて、そろそろ開店かの」


 時計を見ると11時少し前だった。


「壱よ、昼のピークは1時ごろまでじゃ。儂らはそれから交代で昼飯を食べるでの。それまでは腹が減っても我慢してくれの」


「うん。大丈夫」


「よしよし」


 茂造は満足げに頷く。茂造の中では、まだ壱は子どものイメージが少し残っている様だ。仕方が無い。過度に過保護などにされなければそれで良い。


 そうしている内に、客が訪れた。


「あー腹減った! メリアンちゃん、今日のペペロンチーノの具は何? ベーコンとマッシュルーム? じゃあそれとパン。エールも飲みてぇけど、まだ仕事があるからなぁ!」


 元気な客である。メリアンから正式なオーダーが入ると、壱はパスタを大鍋に入れる。フライパンにオリーブオイルとにんにくの薄切り、唐辛子を丸々入れて、火を点ける。


 にんにくの良い香りが漂い、程よく色付いて来たら、ベーコンとマッシュルームを入れて、更に炒める。パスタの()で汁を加え、煮詰めて行く。


 塩胡椒(こしょう)で味を整えたら、茹で上がったパスタを入れて和える。


 出来上がり。皿に盛り、パンと一緒に調理台に置くと、ホールに向かって声を張り上げた。


「ペペロンチーノ上がったよー!」


「は、はい!」


 マユリが取りに来てくれる。手には開かれているオーダー帳。


「あ、あの、バジルのパスタ、ふたつと、カルボナーラ、ひとつ、パン3人分、注文、入りま、した」


「あ、バジル俺がやるよ。イチ、カルボナーラ頼むな!」


「おう」


 マユリがオーダー帳をエプロンドレスのポケットに入れ、ペペロンチーノとパンを運んで行く。


 壱はコンロに戻ると、大鍋にパスタを入れる。中にはカリルが入れたと思われる2人分が既に入れられていた。引き上げる時に間違えない様にしなくては。


 次に調理台からボウルを取ると、卵を割り入れる。良く(ほぐ)し、()り下ろしたハードタイプのチーズを入れて混ぜる。そこに(すで)に火を通してあるベーコン、胡椒(こしょう)をたっぷり加える。


 昼営業の時には、具材にはあらかじめ火を通しておく。昼はスピード勝負だからだ。比較的ゆっくり出来る夜とは違い、みんな急いで掻っ込んで仕事に戻って行く。


 バジルのパスタに使うじゃがいとサーモンも、既に火が通っている。カリルはフライパンにバジルソースと具材を入れて、しっかり温まったところに茹でたパスタを入れた。


 壱もカルボナーラの仕上げに移る。ソースが仕上がったボウルに茹で上がったパスタを入れ、良く和える。卵がダマにならない様に手早く。


 皿に盛り、更に胡椒を降る。横ではパジルのパスタも完成していた。壱は3人分のパンを用意する。


「パスタとパン上がったぜー!」


「はーい!」


 カリルが声を上げると、メリアンが元気な返事とともに姿を現した。


「あ、マーガレット手伝ってー ボクひとりじゃ全部は無理だー」


 メリアンに続いて厨房に来たマーガレットに声を掛ける。


「はぁい。あ、オーダーよぉ。ミネストローネとぉ、バジルとぉ、パン2人前ねぇ」


「はいよっと!」


 カリルがまたコンロに向かう。


「壱、ミネストローネとパン頼むな!」


「おう」


 メリアンとマーガレットが料理を運んで行き、カリルが大鍋にパスタを入れる。茂造はボトフに掛かりきりで、サントは洗い物に精を出す。


 壱は先にパンの用意をしながら、小さく息を吐いた。


 俺、いつになったら味噌の試作が出来るんだろ。


 そろそろ禁断症状が出そうだった。

ありがとうございました!

続きは少々お待ちくださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いい奈さんの「カピバラ×グルメ」
異世界転移料理人は、錬金術師カピバラとスローライフを送りたい。
カピバラさんと異世界のんびり料理旅(スローライフ風味)
どうぞよろしくお願いします!(* ̄▽ ̄)ノ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ