~白い悪魔~
白い悪魔の演じる月光の下での愉快な血祭り。
主演:白い悪魔、脇役:ファング。
ハクの独壇場でお送りします。
路地裏を支配する冷たい空気、おぞましい気の様なものが漂っているようにも見える。
「血を飲むことで自身の身体機能を強化、魔力の活性化を促す”ブラット”」
ブラットとは何なのか、簡単にいえば血を飲めば飲むほど強くなる種族。
今回の事件の犯人は血を飲む機会が多かったとも言えるだろう、つまり強いのだ。
悪魔通しの戦闘は初めて見る、魔力等と言っていた、アニメみたいな物だろうか?
そんなことを考えている結衣はいつの間にか場の結構端に居る。避難していた。
バチッと電気の音がし発生源を辿るとハクの手が黒い電流で覆われていた、魔法だろうか。
「私は結構吸ってますよ♪人の血も良いですね♪飲みます?」グチャ
そう言って徐にローブに手を突っ込み、切断された綺麗な肌が血で染められた女性の腕を出してきた。
断面は切られたものでなく、それこそ引きちぎられた様にぐちゃぐちゃになっていた。
見るに耐えない、吐き気を催す。ハクは眼光鋭くファングを貫いていた。
「要らん、あまり暴れたくないんだが...」
「自信が有って結構ですけど、それをへし折って絶望に満ちた顔を潰すのもいいですねぇ♪」
そう言ってお互い睨め合う、周りの温度が五度ほど下がったとも錯覚させる程の冷たい目線。
「どうなっても知らんぞ」
「やってみろ、シラガさn」
言い終わる前の刹那、何が起こったのかすら分からないまま壁に穴が空いていた。
遅れてやって来る轟音と微かに骨の鳴る音、飛び散る壁の破片と血。
空いた壁の奥で吐血したのか血がべちゃべちゃと音を発し、咳き込む声が聞こえる。
ファングの立っていた位置にはハクの姿、槍を手にただ単に立っていた。
「遅いぞ、しかも体が脆すぎる、蹴った心地がしない」
そう言いため息をする、槍を地面に突き刺し纏われた電気も消えた。相手にすらならないようだ。
ファングが壁の破片を掻き分け出てきた。
頭、口からは血が滴り落ち、腹を押さえていた。やはり折れているのだろう。
すると腹から蜘蛛の脚のようなものが出てきて、煙が出てきた。
「再生位は出来るんだね」
「ガフ!....ッ速す...ぎだろッハァハァ」
「これでも準備体操にもならないんだけどね」
ハクを睨み付けるファングに対し、嘲笑うかのような目のハク。格差は圧倒的。結衣にも分かった。
地面に突き刺さった槍を引き抜き、ファングに投げ渡す。何をするのだろう。
「それを使っても良いからそっちから来て」
「な、なめやがってえぇぇ!!!」
槍を手に尋常じゃない速さでハクに襲いかかる、高感度スローカメラで撮っても残像しか映らない速さ。
切っ先が月光で光る、ファングの目には怒りが絡まっていた。しかししっかりと殺人者の眼だ。
しかしハクはその何十枚も上手だ。槍を難なく避けて拳を握り締め、ファングの頬を掠めるように殴る。
先ほどの蹴りより力が篭っており、後方の壁に大きなクレーターが出来た。加わった力は風圧だけだ。
ファングの頬は切れており血が滴る。しかし懲りずに槍を振るう、これも凄い速度だ。
ハクは全て素手で弾く、弾かれる度に火花が散り金属音が鳴り響く。傷一つ付かない。
焦っているのか槍に力が入っておらず、手筋がデタラメに見える。
「.......ハァ」
小さくため息をしたと思ったときには居らず、いつの間にか懐に入り、足払いをしていた。
同時に骨の折れる音もした。足払い一つで折れるのだ、相当な威力だろう。
その場に倒れるファング。ハクは徐にしゃがみこみ、何故か笑顔を作り
「降参?」
目が笑っていない笑顔でそう言い放った。ファングはぐったりと倒れこみ
「参りました....」
月明かりの夜、狼は吠えることなく白旗を上げた。
制し、勝したのは血祭りの主催者、主演は白い悪魔。 __これが”白い悪魔”.....
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「ところでルナ、いつまでそこに居るの?」
「あ、バレてた!」
なすすべもないファング、圧倒的に蹂躙する白い悪魔ことハク。
事件解決、閉幕した。
初めて見た悪魔の踊り、それを見て結衣は何を思うか?