男子生徒達に虐められている男子生徒を、助けた男子生徒と体育教師が虐めた事情
イジメ。
「お前、ふざけんじゃねぇよ!」
「なにしてくれてんだよ!」
その一つに、虐められている側に理由があるという説がある。可能性として、それはある。ここでは理由がハッキリとしているからこそ。その理由が通る。
「いだぁっ!だ、だって……」
「だってもクソもあるか!」
1人の男子生徒は今、4人の男子生徒に囲まれて虐められていた。
「お前のせいだ!」
「よくもやってくれたな!」
「や、止めて。殴られないで……」
完全なイジメの現場。紛れもなかった。
「うわぁっ」
「ちょっと……」
現場を見て見ぬ振り。それはごく当たり前だろう。関わりたくないのだ。一般生徒達は足早に去っていく。しかし、そこに。不良でもないし、正義の味方でもない。
「おい!なにやってんだ、お前等!」
1人の馬鹿がいた。
「なんだテメェ」
「!こいつは確か4組の、相場か」
「今、お取り込み中なんだよ」
「知るか!イジメなんだろ!俺はそーいうの、見過ごせねぇんだよ!怯えた奴を囲んでねぇと、脅せねぇし、殴れないクズ共が!」
「あ、あ……」
相場竜彦。学校の裏側で〆られている男子生徒、おそらく同級生を助けようとしていた。
「このヤロッ!」
「まー、待て!相場の言う事にも一理ある」
「だがよ、」
「俺達は卑怯者か?そう見えたのは仕方ないが、自分で名乗るとあればその通りなんだぜ」
「……ちっ」
「なー、相場。少し耳くらいは傾けてくれ」
「そのつもりだ!だが、くだらない金貸しだったら許さんぞ」
4人組を纏めている男子生徒から、このイジメの理由が明かされる。
「お前、プールの女子更衣室を知ってるか?あの噂だ」
「あの噂……」
「そう。もう卒業してしまった先輩が、己の欲に耐え切れず、女子更衣室の壁に穴を空けたんだ。それは女子更衣室側からでは死角となっていて、まず見破られない。そして、外からは壁に模した特別な紙でカモフラージュしている」
な、なんだと……。
「その穴の位置をこいつにも教えたのだが、この野郎。塞ぎやがったんだ。おかげでこれから楽しみな水泳の授業が楽しめねぇから、こうして制裁をしていたんだ」
とんでもない理由ではあったが、相場もまた。その噂は聞いた事があった。1人で女子更衣室を使っていると、誰かに見られるという噂もあったほどだ。
「い、いや!だって!風紀として良くないじゃないですか!よろしくないです!」
「でも、見たじゃん」
「一回だけです!それにまだ使ってない時期でしょう!」
虐められた男子生徒は、自分の気持ちを正直に正しいと訴えていたが。相場は、そんなどーでも良い風紀なんかよりも
「お前、ふざけんなーー!俺の、俺の!この学校生活の楽しみ!伝説の女子更衣室、覗き穴探しを潰しやがって!!」
暴力という制裁を与えた。
この時は、虐められる側に非があると感じた。
「これから体が成長する時だぞ!生着替えだぞ!男の水着見ても、クソつまんねぇの分かるだろ!今の内なんだよ!実りのある女子の裸って!夏の日課として目撃しないのは!1人の男子生徒としてあるまじき行為だろ!」
「ぶへらあぁっ」
「俺達以上に殴ってるんだが……」
「なんて奴だ。こんな馬鹿がウチの学校にいたとはな……」
不良達4人も驚くほど、相場。激昂。虐められた生徒が倒れる始末。そこへやってきたのは、
「何をしている!?さてはイジメか!」
「げっ!生活指導兼体育教師の……」
「あ!全部、相場がやりましたー!」
不良というクズ特有の人のせい、発動!相場、確かに自分も制裁をくわえているが、最初に手を出してはいない。しかし、もう殴っているところを見られてしまっている。
「嘘嘘嘘!俺じゃねぇ!イジメてねぇ」
「こいつがやれっていうから。なぁ、お前等」
「そっすー。相場がやれっていうしー」
「見本を見せてもらったところですー」
「この卑怯者が!これだから不良なんかより、馬鹿の方が楽しいんだよ!先生!違うからね!こいつ等も同列だからね!」
絶対にテメェ等、道連れにしてやるわぁ……
「違う!違う!俺は反対してたんすよ」
ふざけんなっ、こちとら女子更衣室覗けなくなる上に、生活指導の奴に説教なんざたまんねぇ。……!
「先生ー!こいつ等今、女子更衣室の覗き穴があるって騒いでたんすよ!俺はそれを阻止しようと!」
「なっ!そ、それを言うかお前!」
「俺はお前等を道連れにしたいんだよ。手段は選ばないぜ」
「の、覗き穴だと……」
プルプルと震える生活指導兼体育教師。
怒り、我が校から犯罪者予備軍が出てきてしまうという。指導不徹底。自爆覚悟の言葉であったが……。
「馬鹿もん共がーー!女子高生好きなら、体育教員をやれぇ!!教師目指せぇっ!」
「ふあぁっ!?」
「娘はな、高校生ぐらいまでは可愛いさ!それ以降は妻と似る鬼と化すのだ!純粋無垢な女子高生と触れ合いたいのなら、良い教員を務めるのだ!」
「何言ってんだあんたーー!」
さらに馬鹿がいた模様。
「つまりかー!この虐められた者は、その覗き穴を作ったか塞いだかの。軟弱軽輩者かーー!虐められて当然だ!」
パチッ
生活指導という立場からか、倒れている生徒にもビンタ。ちょっと弱め
「そして、お前等!ふざけてないで、女子高生好きなら勉強せい!」
「は、はい!」
「イェッサー」
「ちなみに覗き穴はそこに倒れている奴が塞ぎました」
バヂイィッンッ
体罰&お説教。
不良4人 + 相場。結局誰も避けられず。
「まったく。しかし、けしからん!覗きなど!正々堂々いかんかい!」
「いでぇっ……」
「これに懲りたら、イジメなんかしないで……」
「え」
よーやく場が収まりかけていたところであったが、別の殺気や怒気を。周囲から感じる6人。
「女子更衣室に覗き穴……?」
「生活指導の人間が、女子高生好きって宣言」
「変態ですよね。ここの6人」
「いけませんよ、生活指導担当であるあなたが!そのような言葉を出すとは」
いつの間にやら目をギラつかせ。このイジメは正義だとした、女子生徒と女性教師が囲んでいた。
「は、話せば分かる!」
「お、落ち着いてくれ!」
「これイジメと変わらないから!」
「女子のイジメは陰湿で大正義過ぎるだろうがーー!」
「ある意味、卑怯だぞーーー!」
「ぎゃーーーーーー」
その日。すぐに6人は怖い思いと、手痛い処分を喰らうのであった。