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世界を救う歌を探して  作者: でこっぱ
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モフモフの天使


………………ィーーーン……



朝、僕は耳に違和感を感じて目を覚ます。



……………ィーン……



「なんだ?耳鳴りかな?」


町を出て初めての野営だ。眠り方が悪かったのだろうか?


耳に集中すると、鳥の声が聞こえる。それに極わずかに、ノイズのようなものが混じる気がする。



「ゼスタ。起きたの?おはよう。」

振り向くと、ルーが起き出していた。



「おはよう。ルー。」

「どうかしたの?」

ルーの声には、ノイズが混じっていない。改めて、鳥の声に耳を向けても、既にノイズは消えていた。気のせいだったか。


「いや、初めての野営で体が固まったのかな。それよりごめん。起こしちゃったかな。」

「ううん。ちょっと前に目を覚ましてたの。それで、横になりながら鳥の声を聞いてたの。」

「そっか。それにしても、町の外はこんなに静かなんだね。」

「そうね。私達の町はこのぐらいの時間には、朝市の準備に向かう人達の荷台の音とかが溢れているものね。」



僕達の町、ツェグは大型モンスターの襲来等にもみまわれずに済んでおり、そこそこ発展している。

そこで生まれた僕やルーにとって、朝は市場の音で目を覚ますのが当たり前だった。


「町の喧騒から離れると、今まで意識したことのない、鳥のさえずりとかも聞こえるんだね。」

「ね。市場の音もワクワクして好きだけど。この静けさも落ち着くね。」



「………ぅああう。」

ラドも起き出したようだ。



「おはよう。ラド。」

「おはよう。兄さん。」

「…………ぅう。………うん、はよう。」

ラドは朝が弱い。




朝食を食べていると、ラドもだんだんと目が覚めてきたようだ。

「ぐっすり眠れたか?」

「ベッドと違うから、時々目が覚めちゃった。でも、思ったより眠れたわ。」

「モンスターを気にしないで寝れるのは助かるね。」



野営した場所には、魔方陣が描かれている。

切り開かれた町と町の間には、こうした魔方陣が点々と散らばっている。

町を移動する冒険者や行商が、安全のために設置する。使用後も、他者が使えるように残しておいてくれることも多い。



この魔方陣が見つからなかった日は、交代で見張りをして休みをとるしかない。しかも、好戦的なモンスターは火があるところに人間がいることを知っているため、焚き火もできない。

体の休まり方が違うから、魔方陣のあるところを探しつつ移動するのが、長旅のセオリーらしい。



ちなみに、この魔方陣は消されないように隠されていたのだが、ラドが魔方陣を隠す時につける目印を教えてくれたので、発見できた。


「急ぎの旅だったり、腕に自信があったりすれば、魔方陣を気にせず最短で進む方法もある。だが、基本的には魔方陣を探すようにしろ。」




朝食を終え、魔方陣を元通り隠し出発する。




しばらく進むと、遠くに鹿のようなモンスターが見える。

角のあたりが帯電してるのがわかる。


「ラド。あれは?」

「見たまんま。デンキジカだ。雷を使うから中級以上の土魔法で身を守りながら戦うのがセオリーだな。剣や魔法は普通に効く。」

「初級の土魔法じゃ無理ってこと?」

「そうだ、近づく前に雷を落とされる。倒すのはもう少し強くなってからだ。迂回するぞ。」



それから次に出くわした猪型のモンスターとの戦闘も避けた後、ラドの戦闘許可が出た狼型のモンスターはので倒した。



「山2つ向こうだからそんなに遠くないと思ったけど、こうやってなるべく戦闘を避けて進んだらけっこう時間がかかるのね。」

「ある程度進んだら、野営できる場所も探さないといけないしね。」

「普通は町の近くで修行したり、先輩のパーティーに入って、ある程度強くなってから移動するからな。もう少し早いペースでも、問題ないんだが。職業に就いてすぐに町を移動すること自体無茶をしてるんだ。まぁ、焦るなよ。」



確かに、町を出てから出くわしたモンスターですんなりと倒したのは狼だけだ。ルーと2人なら既に全滅してたかもしれない。

思えば、ラドはモンスター討伐が専門のパーティーに入っているのだが、3年間で1度も大きな怪我をしたことがない。普段の軽い言動とは裏腹に、慎重な人間なんだ。




「あ、兄さん。ウサギさんよ、見て見て!」


ルーが嬉しそうに、モフモフとしたウサギに駆け寄る。

ルーが小さい頃飼っていたウサギを更にふわふわにしたやつだ。


ラドが笑ってルーの方を見ると、そのまま顔を強ばらせた。






「ルーーーっっ!そいつを離せ!!!」



ルーはラドの声に驚き、抱き上げたウサギを落とした。



「くっ。ゼスタ、走るぞ!」



地響きのようなものが聞こえる。


ラドがルーの手を引っ張り走り、僕はその後を追った。

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